47の“チカラ”−私が感じたニッポンのチカラ!−



今週は、最終回。これまでを振り返りつつ、明日の日本へのヒントを探ろうと思います。ゲストには、この番組のオブザーバーとしてもお世話になりました、ソーシャル・デザイナーの渡邊賢一さんをお招きいたします。

−伝統や歴史を守り続けるチカラ−

住吉さん「今日は全国各地を取材して感じてきた“チカラ”を、3つのテーマに分けてお話ししていきます。1つ目のテーマは、『伝統や歴史を守り続けるチカラ』。印象的だったものを挙げると、渡邊さんのふるさと栃木編で、天然氷の取材をしたんです。四代目氷屋徳次郎さん。真の氷をつくってらして、外で凍らせて、自分たちで切って、おがくずの中で溶けないように保存するという。あれは大変さ含めて、続けていることがすごいなと感じました」

渡邊さん「そうですよね。地下水をそのまま飲める国って、世界に13ヶ国くらいしかないらしくて、アジアで日本だけなんですよ。日本の伝統のかき氷ですけど、ものすごいビジネスチャンスだと思いましたね」

住吉さん「あとですね、伝統という意味で、個人的にも感慨深かったのが、岩手県奥州市水沢区の南部鉄器。これは、たまたま私が東京で一目ぼれして買った南部鉄器の鉄瓶の職人に取材をOKしていただいて、自分の持っている南部鉄器のお父さんに会いに行った感じですけど(笑)」

渡邊さん「どうでした?」

住吉さん「話をうかがうと、南部鉄器をつくるには、体で鉄にぶつかっていくエネルギーが必要だということがわかり、それを続けていること。でも、ただただ同じものをつくるんじゃないんです。デザインの勉強なども未だにされていて、新しい、独自のデザインをつくらないと、一番にならないとやっている意味がない!とおっしゃるんです」

渡邊さん「よく伝統と革新って言われますけど、まさにそれがひとつに組み合わさった方なんですね。クリエイティブって戦うことだって言いますけど、伝統の世界もそうなのかもしれないですね」

住吉さん「あと、どうしてそんなに頑張れるんですか?ってうかがったんですよ。そうしたら、『仕事だから頑張るんだけど、何か?』っていう感じだったんです(笑)。ごちゃごちゃ悩まず、鉄に戦う気持ちで向かい続けている。そのこと自体が、ものすごいチカラだなと」

渡邊さん「逆に元気をもらって帰ってくるようですね」

住吉さん「あと、伝統と歴史といえば…奈良ホテル! 100年以上の歴史があるホテルで、働いている方々も自分たちの働く場に誇りを持っていることが印象的でした。ひとつ面白いと思ったのが、そのホテルは日露戦争で日本が勝利したときに、これからはインバウンドがくる、だから西にも迎賓館をとつくられたんです。なんか今と似ている!とびっくりしました」

渡邊さん「意外と知られていないんですけど、日本ブームやインバウンドブームって150年くらい前に1回あったんです。『ジャポニズム』って言葉があるじゃないですか。例えば、ゴッホが浮世絵を西洋画に取り入れたりだとか。あの頃実は、日本のものを買うだけじゃなくて、日本に行きたいっていうのがあったんです。そのときの歴史や遺構が全国にあって、まさに奈良ホテルもそうだと思いますね」

住吉さん「今もインバウンドが流行語になるくらい増えていますが、比較して思うことはありますか?」

渡邊さん「私も結構物好きで、その頃の手記って結構残っているんですね。その手記に書いてあることを分析したことがあるんです。日本に来て非常に感動したこと。86%くらいが、『多種多様な価値観の共存がある国だ』っていうんですよ。日本にしかない言葉ってありますよね。例えば、『しょうがないよね』とか、『そっちの価値観もこっちの価値観も両方ともOK』」

住吉さん「今でいうと『ファジー』」

渡邊さん「緩やかな連携社会というか。そこに感動を覚えるらしいんです」

住吉さん「今はもっと情報が入ってくるから、そういうファジーな日本がダメなんじゃないかっていう風潮もありますけど。でも、もしかしたらそれをひとつのアイデンティティとして生かした方がいいんでしょか?」

渡邊さん「そう思いますね。この間、伊勢志摩サミットがありましたが、全部を細かく分けすぎちゃったがために、起きている社会問題も多いと思います。日本の出番だなって思いますね。曖昧力と言いますか、曖昧に解決していく」

−食が支えるチカラ−

住吉さん「2つ目のテーマは、『食が支えるチカラ』です」

渡邊さん「日本の宝ですね」

住吉さん「全国の食材について色々と取材したんですけど、まだまだ豊富ですね。例えば、富山県氷見市の氷見ブリ。これね〜、美味しかったな〜」

渡邊さん「私行けなかったんですよ」

住吉さん「もう舌の上でとろける! ここは富山県の中でも最も大陸棚が発達していると言われる海で、陸からほんとにすぐのところに漁場があります。さらに半島が出ていて、そこにブリがぶつかって留まるから漁場として最高なんです」

渡邊さん「よく天然のいけすって言われますもんね」

住吉さん「漁法が、定置網。番組には定置網エバンジェリストの川向正明さんにお話をうかがいました。定置網はとり過ぎない。網自体も山からとった素材でつくられているので、腐敗してもそのまま自然に戻る。色々な意味でエコでサステイナブルです」

渡邊さん「日本の知恵そのものですよね。自然に負担をかけない」

住吉さん「漁場でいうと、和歌山県の勝浦漁港も取材に行きました。こちらは天然のマグロ! お話をうかがっていたら、脇口水産の脇口さんがおろしショーをやってくれたりとか。考えてみたら天然のあれだけ大きな生き物は、海の生き物しかない」

渡邊さん「そうですね。私たちが食べるもので天然の豚や牛はいないですもんね。那智勝浦の辺りはすごく魚食を大切にしていて」

住吉さん「脇口さんの言葉で『マグロは水を飲みにくる』っていうのがあるんです。港の方の水が美味しくなければ来てくれないとおっしゃっていて」

渡邊さん「そう思いますね。紀伊半島は日本で一番降水量が多くて、たくさん振った水が山の養分を吸いこみながら流れていって。きっとそれを飲みに来ているんだと思いますよ」

住吉さん「でも同時に、紙一重と言いますか。人間が水を汚して美味しくなくなったら、天然マグロがこなくなってしまいますよね」

渡邊さん「本当に大切な視点だと思いますね。環境を守っていかなくちゃいけない」

−地域を愛するチカラ−

住吉さん「3つ目のテーマ、『地域を愛するチカラ』。取材をしている中で、本当に地域を愛して暮らしてらっしゃるんだなという方にたくさん出会って。」

渡邊さん「単純にうれしいですよね」

住吉さん「例えばですね、兵庫県神戸市で取材をした『Kobe INK物語』。ナガサワ文具センターの竹内さんが、社内で提案した神戸インクが口コミで評判になって。『Kobe INK物語』は、神戸の景色をテーマにしたいろんな色を開発しています。『六甲グリーン』とか『波止場ブルー』とか。例えば、海の色でも『これは沖合100mくらい出たときの、時間は4時くらいの海です』とかおっしゃるんです」

渡邊さん「愛してますね(笑)」

住吉さん「地域ラブが伝わってきて。聞いてうれしくなっちゃって、スタッフみんなでインクを買ってきたんです。私が今使っているこれが、『六甲グリーン』そこまで地域を愛せることが素晴らしいと思うんですが、どう思われます?」

渡邊さん「例えば、都会か田舎かみたいな分け方をして地域に移住するとかハードルが高かったと思うんですけど、もうそういう時代じゃないですよね。自分が何をやりたいかということに素直に向き合って。ドーンとその地域に住み込んで、やれる時代になったと思います」

住吉さん「この番組ではそういう方にもたくさんお会いしてきました。Iターン、Uターン。若い方たちが地方に移住して、やりたいことをやる。岩手県奥州市でも、岩谷堂箪笥をつくりに移住したとか。」

渡邊さん「もっともっと盛んになったらいいなと思いますね。まだまだ東京とかに集中し過ぎているような気がしています。どんどん地方に住んじゃおうと」

住吉さん「渡邊さんがこれからもっと探っていきたいとか、応援していきたい日本のチカラはなんですか?」

渡邊さん「僕はすごく『食』が大好きなんですけど。日本の食って料理だけじゃないじゃないですか。文化や行事、祭りとつながっていて、いろんな面白い側面があると思うんですよね。それをどんどん可視化していきたいなと思っています」

住吉さん「まだまだ出来ることもいっぱいあるし、希望もいっぱいありそうですね」

渡邊さん「ワクワクしてますね」

−住吉さん、ニッポンのチカラを振り返って−

住吉さん「日本のチカラ、3つのテーマで振り返ってきましたけれども、改めて私は、最後のお話にあった『地域を愛するチカラ』ってすごいし、それって育つものだなということを感じましたね。というのも私自身がいろんな場所に出向いて、いろんな方にお会いして。見たり、食べたり、聞いたりしているうちに、より各地域もそうですし、日本を好きになったんですよね。会ってお話をしているだけで、うれしくなったり。知るチカラってすごいと思うんです。知ったことで、必ず何かが変わるというか。特に場所の場合は、知れば知るほど好きになる、愛着が湧くっていうことじゃないかって思うんですね。まだまだ私自身も取材できていないなと思う日本のチカラが、いっぱいありました。それはもうこの番組で取材して、各地に行ってひしひしと感じました。またね、いつか一緒にどこかで、お聴きのみなさんと探っていける機会があったらいいなと思います。そのときには、またぜひ一緒に探ってください。よろしくお願いします」
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