福島県会津若松市の『別格』−会津の漆、美しさの秘密!−


福島県会津地方に受け継がれている伝統工芸、会津漆器。会津の漆の歴史は古く、1590年、豊臣秀吉の命を受けた、当時の会津領主、蒲生氏郷公が、産業として奨励したのが始まりとされています。さらにそれを江戸時代の会津藩主、保科正之公が、おしすすめました。今、その伝統を守り、さらに新しい試みで漆の素晴らしさを広めようとする動きがあります。今週は、会津の別格な漆を、ご紹介しました。

−漆の良さ−

福島県会津若松市。その街の目抜き通りの近くに、そのお店はあります。「坂本これくしょん」。蔵をリノベーションして作られた店内にはその名残りというべき、大きな重い見開きの扉や厚く白い壁がありました。漆というと、器や箸などを想像されると思いますが、このお店には、漆のアクセサリーやバッグが並んでいます。創業1900年の会津漆器の老舗「坂本乙造商店」が、なぜ、このようなお店を出したのでしょうか? 坂本乙造商店の専務、坂本理恵さんと、娘さんで店長の坂本円さんにお話をうかがいしました。

理恵さん「漆というのは樹木なので植林もできます。今、天然の限りある資源、サンゴなどに比べて、再生ができる、それが特徴かもしれませんね。岩手県の二戸郡が漆の木の北限とされています。南はベトナム。でも南の漆はゴム性が強くなります。寒いところの漆のほうが年輪もでき、質が高いです」

−身につけるアクセサリーの始まり−

伝統的な漆をアクセサリーやバッグに、という発想はどこからきたんでしょう?

理恵さん「私の小さい頃は、まだ漆器がみなさんのご家庭にいっぱいありました。それこそ、和食でお味噌汁があって、お正月にはお重におせちをつめて、そういうライフスタイルがあったんですね。でも、だんだんなくなってしまって、このまま食器だけでは漆の良さを伝えることができないなと思いました。もともとアクセサリーが大好きでした。年齢を重ねていくと、だんだん金属のアクセサリーが重いな、肩がこるなあと思い始めていました。そこで、『そうだ!木に漆を塗れば、軽く一生残るものが作れる』そう思いまして、最初は自分のために作ったんです(笑)。漆の色といえば、赤や黒ですが、アクセサリーにすると暗い印象。なので、赤の顔料を研究してもらい、アクセサリーに合う赤を作ってもらいました。色の開発に関しては、娘が日本画を勉強してましたので、たくさんの色ができています」

−色の可能性−

円さん「私はすごく色が大好きなので、身につけて楽しい色ってどんな色だろうって思いました。赤でもちょっとオレンジに近いだけで、母が考えた赤よりも、もっと現代の服に合うんじゃないかなと考えました。ちょっとの差が深みを増すんだなとか。これから面白いなと思うのは、白っぽいアクセサリー。白いアクセサリーに墨絵のように黒い蒔絵をすると、まるで絵画のようになり、アクセサリーがジュエリーに変化して、格が上がるんです。今まで見たことがないものをみなさんに喜んでもらえるんじゃないかって思います」

カラフルな指輪やネックレス。これが漆だとは、思えないほどのバリエーションです。そして鮮やかな色彩。しかも、確かに、軽い。母からむすめへ、そしてまたその娘へ。親子が代々受け継げる、匠の技がここに、生きていました。

−塗りへのこだわり−

円さん「やっぱり、重ねることによって、色の深みが出てくるんだなあって、つくづく思います。最初、下塗りをやったらすぐ上塗りをしたらいいんじゃないかって思った時期もあります。でも、すぐに塗ると、生地が痩せていくんです。生地のでこぼこ、年輪によるものですが、それが痩せていくんです。職人さんに、親子に受け継がれるていくようなアクセサリーにするには、下塗りが一番大切だと教わりました。手間はぜったい省いちゃいけないと痛感しました」

塗っては乾かし、乾いては、塗る。その繰り返しがあるからこそ、漆の風合いが、生まれてくるんですね。その行程をこなすためには、会津の風土、寒暖の差や、風、湿気なども、深く関係しているそうです。円さんのお母さん、専務の坂本理恵さんの漆への想いを聞きました。

−つかわれてこそ−

理恵さん「常に思っているのは、どんなにいいものでも、使われなければ、すたる。出番が多くないとダメだと思っています。漆の物がお蔵入りをしないために、とにかく現代の中で使われていく『これは本当にいいからあなたにあげたいわ』それが漆の一番の使われ方です」

円さん「使われるという意味では、メーカーだからこそ、お直しができます。10年前のものでも『はい直せますよ』と言えるように続けていきたいと思います」

伝統に甘えることなく、常に今との接点を探す。さらに、長く使えるものを、作る。そんな軸のぶれないお二人に、「会津」の地に対する思いを伺いました

−会津から発信すること−

理恵さん「生まれ育った会津の地は大好き。四季を感じて住みやすい。会津を大切にしたい」

円さん「雪が多くて大変なこともたくさんあるけれど、四季をしっかりと感じて作ることができるます。会津の自然はものづくりにも影響しています」

過去を大切に今に生かす。そんな坂本理恵さんと円さん。親子の明るい笑顔が印象的でした。
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