先日ハチドリ高柳は、編集長やスタッフたちと一緒に、
赤坂にある廃校になった小学校で開かれている、『ダイアローグ・イン・ザ・ダーク』という、
ワークショップ形式の展覧会に行ってきました。
一切の光を断ち切った空間を、聴覚や触覚のみを頼りに進んで行き、
そこで、日常生活の様々な環境を織り込んだ空間を体験していきます。
今日ゲストにお迎えしたのは、その『ダイアローグ・イン・ザ・ダーク』を日本に紹介された、
金井真介さんです。


(普段、視覚障害者の方と接していることが多いという金井さん、
ゆったりとした穏やかな語り口と優しい物腰が、そのことを感じさせてくれました。)

世界各国で200万人が体験している、というこのプロジェクト、
実はアテンドに、全盲の方がついてくださいます。
暗闇の中で出会うので、私たちはその方が全盲だということを全く知らずに、
その方の案内に従っていくのですが、おろおろぐずぐずしている私たちに比べて、
その方のシャキシャキしていること!
真っ暗闇をものともせずに、さっさと歩いて行ったり、私たちが迷うとすぐに見つけてくれたり。
「この人には実は見えているんじゃないか?」と思うほど、普段どおりの行動をとられます。
そのことにビックリすると同時に、普段自分が、どれほど視覚に頼って生活していたかを、
実感させられるのです。

「環境情報の約80%は資格情報だって言われますよね。
真っ暗闇の世界に入ることで、その80%が全くゼロになって、その分、
残りの20%の色々な感覚が、100%まで引き伸ばされるわけです。」と、金井さん。
確かに真の暗闇の世界では、音がとても良く聞こえたり、指先が敏感になったり、
不思議な感覚を味わいました。
そして、「見ることをあきらめた」瞬間に、360度全方向に向かって、
自分の意識が開けてくる感覚があったのです。
自分の前にあるものと同じように、後ろのものも「感じる」ことが出来る感覚。
これって、「目でものを見る」ことにこだわっていたときには、絶対になかった感覚です。

「この『ダイアローグ・イン・ザ・ダーク』は、やってみるとなんだか、あったかくなってくるんです。
明るいところだったら、知らない人に触られたりしたらイヤかもしれないけど、
暗闇だと、他人の手が助けに思えたりもする。
結局は、人と人とのふれあいなんだ、って感じることが出来たりするんですよね。」

金井さんのひと言は、本当に私自身が実感したことでした。
この不思議な空間での体験は、一人でも多くの人に感じて欲しい!
単に、「視覚障害の方の疑似体験」には絶対に終わらないんです。
視覚障害の方の気持ちもわかるようになるし、素直に、
見えないことで発揮される、様々な他の能力も、尊敬できるようになりました。
そして、日本の街が、少しでもこういった障害を持つ方にとって暮らしやすいものになるように、
私たちも何かしなくちゃいけないな、と感じた、ハチドリ高柳だったのでした。