高松小麦薫る四国の玄関口
高松小麦薫る四国の玄関口
高松小麦薫る四国の玄関口
高松小麦薫る四国の玄関口

ON AIR REPORT

高松小麦薫る四国の玄関口

時代を超えて受け継がれる技

やはり、ちょっと食べすぎた…。
大きく膨れた腹が、狭い座席にジャストフィットしている。

同僚の旅の話を聞いた僕は、
いてもたってもいられなくなり、高速バスに乗り込んだ。
目的は、うどんの食べ歩き。

名店のうどんをすすると、常にお腹が空いていた学生時代を思い出した。
休み時間に食堂へ走っては、一番安いかけうどんに食らいついた。
昼に弁当を食べてもまた足りず、結局また食堂へ。
あの頃の僕の辞書には、満腹という文字はなかった。

バスのエンジンがかかり、ふと顔を上げると、見覚えのある女性が隣に座った。
その人は、最後に立ち寄った店でも、隣の席に座っていた。
うどんのように白く透き通った肌で、僕よりも早く平らげ、店を出ていった。

彼女はどうしてこの街に来たのだろうか。
いきなり話しかけられるのは嫌だろうか。
好奇心を取るか、常識を取るか。
揺れる僕を乗せて、バスはゆっくりと、走り始めた。

INFORMATION

香川県は、別名「うどん県」と呼ばれるほど、全国に広くその名を知られたうどんの名産地。その歴史は古く、讃岐が生んだ弘法大師・空海が、遠く中国から持ち帰ったのが始まりと伝えられています。
香川は昔から、上質の小麦や出汁に使ういりこ、塩が多くとれた土地。さらに、小豆島が江戸時代から有数の醤油生産地であったこともあり、偶然とは思えないほど、うどん作りに適した条件が重なっていました。うどん打ちの技術は代々受け継がれ、現在も街には、多くのうどん店が軒を連ねています。
「県庁通り」のバス停からほど近く、香川県庁の裏手に店を構える「さか枝」は、1963年創業の老舗うどん店。この店の最大の特徴は、セルフサービスでうどんを作るという点。自分で麺を温め、出汁をかけ、トッピングをするという完全セルフスタイルは、県外からのお客さんにも大人気となっています。
時代を超えて技が磨かれ受け継がれる、小麦が薫るこの街を、高松エクスプレスのバスは走る。

旅人を見送り、迎え続ける

髪にはまだほのかに、潮の匂いが残っていた。

クリスマスを前に恋に破れた私は、
思い出から逃がれるように、家を飛び出した。

高速バスに飛び乗り、やってきたのは、瀬戸内海。
縁もゆかりもない土地だったが、それでよかった。
2人の思い出に、出会いたくなかった。

この町に、私を知っている人は誰もいない。
そう思うと、自然と全身の力が抜けた。
島を渡るフェリーのデッキに上がり、ぼーっと海を眺めてみると、
顔に当たる潮風が、ちょっぴり目に染みた。
こらえきれず叫んだ言葉は、波の音にかき消された。

バスは再び私を乗せて、思い出が詰まったあの街へ帰る。

隣の席に座る男女は、楽しそうにうどん話に花を咲かせている。
それを聞いていたら、突然私のお腹が鳴った。
そういえばここのところ、ろくに食べていなかった。

せっかく香川まで来たのだから、1杯くらい食べればよかった。
でもきっと、私はまたやってくる。今度は、誰かと一緒に。
まだ名前を知らない、どこかの誰かとの未来を思い浮かべながら、
ネックレスを外してポケットにしまった。

INFORMATION

全国47都道府県の中で、最も面積が小さい香川県。
しかし、その県庁所在地である高松市は、全国規模の企業の四国支社や支店が立ち並ぶ中核都市です。電力会社やJRといった、地方全域を対象とした公共サービス企業の本社も置かれ、四国経済の中心を担っています。
街の北側、瀬戸内海に面した高松港は、中国地方や近畿地方にとっては重要な四国の玄関口。「高松駅高速バスターミナル」のバス停近くのフェリー乗り場からは、連日多くの便が発着し、高松市内外の島々や県外とを結んでいます。
そんな高松港の沖に、寄り添うようにして浮かぶ2つの島は、「男の木の島」と書く「男木島」そして、「女の木の島」と書く「女木島」。それぞれが「男」と「女」を象徴していて、2つ併せて「雌雄島」と呼ばれています。
実は高松市は、昔話でお馴染みの「桃太郎伝説」が残る土地の一つ。女木島は、桃太郎が鬼退治に向かう「鬼ヶ島」のモデルになった島として、今もなお、地元住人の間で語り継がれています。
旅人を見送り、迎え続けるこの港街を、高松エクスプレスのバスは走る。

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