那須塩原飛び交うホタルと七色の湯
那須塩原飛び交うホタルと七色の湯
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那須塩原飛び交うホタルと七色の湯

ON AIR REPORT

那須塩原飛び交うホタルと七色の湯

先人も愛した日本の宝

俺は虫が嫌いだ。

小学生のころ、よくこのネタで遊ばれた。
ある時、休み時間に教室の机で突っ伏して眠っていたら
手の平にセミの抜け殻が置かれていて
目覚めてそれに気づいた瞬間、俺は1メートルぐらいぶっとんだ。
人生最大のトラウマだ。

深緑の道を抜けるバスに揺られながら、そんなことを考えていた俺に
隣の連れはとんでもないことを言い出した。

「ホタルの里に行ってみようか」

ちょっと待て、ホタルってのはあれだろ。
黒くて尻光らせながら低空飛行するバッタみたいなもんだろ。
無理だよ、俺は!

とはいえ、可愛い連れに「虫が嫌い」とは言えない。
数時間後、俺たちは箒川支流の川べりを歩いていた。
ブーンという羽音がして、早くも降参宣言をしたくなったその瞬間、

「うわ〜…!」

連れが歓声をあげる。見ると眼前を小さな緑色の光がみっつ、よっつ。
瞬いて、飛んでいく。
草の上、呼吸するように光は大きく膨らみ、また小さくなって
気づくと十、二十と瞬きは増え、ゆっくりと点滅しながら滑るように、誘うように、
暗闇を旋回している。

星空が踊っているようだ。

「きれいだ…」

思わず出たその言葉は、強がりではなかった。

INFORMATION

那須塩原の温泉地を貫く箒川(ほうきがわ)。周囲の山々から注ぎ込む澄み切った水が流れるこの川のほとりを、毎年この時期、無数の光が飛び交います。その正体は、ホタルです。
かつてホタルは、日本のいたるところで見ることができました。しかし、高度経済成長期に入ると、各地で環境改変や水質汚染が相次いで発生。環境の変化に弱いホタルはみるみるうちに減っていき、姿を消してしまったところも少なくありません。
昔からホタルの名所として親しまれてきた那須塩原。大切に守られた豊かな緑と清らかな水のおかげで、今でも天然のホタルが生息しています。ホタルたちが飛び交うのは、毎年6月中旬から7月にかけて。特に多く見られるのが、日没から1時間ほど経った夜8時前後といわれています。
毎年春には幼虫の放流会が行なわれており、市民の愛を受けて立派に育ったホタルたちは、今年も元気に夜空を飛び回っています。
先人も愛した日本の宝を大切に守り続けるこの街も、ジェイアールバス関東のバスは走る。

文学の森

「やり直そう」

画面の中のその言葉を見たとたん、私はスマホの電源を切る。
流れる景色はどこまでも緑。
生まれ変わりの旅に、あの人はいらない。

目指す温泉郷は、名だたる文豪に愛された名湯。
温泉の宝石箱。
夏目漱石、与謝野晶子、谷崎潤一郎…。
彼らの残した抒情と共に湯につかり、
身体も心も生まれ変わりたい。

「やり直そう」

ふいに聞こえる彼の声。
すぐに風にかき消される。
聞こえて来るのは木々のざわめきと鳥の羽音。

私は、ひとり。

白濁した湯の中にゆっくりと身体を沈めると、
身体中から感情が溶けだしていく。
湯気の中で思い出が揺らめく。
シンプルな結末だった。意外なほど。
何も失ってなどいない、わたしは。
風が揺らす木々のざわめき。
七色の温泉は約束通り、私をすっかり新しくした。

「やり直そう」

ぽろりと、涙が湯に落ちた。

INFORMATION

那須塩原に点在する11の温泉。それらは総称して、「塩原温泉郷」と呼ばれています。
このように、複数の温泉をまとめて「温泉郷」と呼ぶようになったのは、いつの頃からか。この表現は、小説家・田山花袋が1918年に発表した作品「温泉めぐり」の中で、ここ塩原の温泉に対して使ったのが最初とされています。
渓谷に沿って、約150の源泉が湧き出る塩原温泉。全国的にも珍しいと言われているのが、「七色」と称されるその温泉の色です。乳白色、茶褐色、黒、黄金色、緑白色、薄墨色、そして、透明。色とりどりのお湯は、浸かる人の心と体を癒やしてくれるだけでなく、目も楽ませてくれると評判です。
明治時代以降には、夏目漱石や与謝野晶子、谷崎潤一郎など、名だたる文豪たちも足繁く通うように。尾崎紅葉が「金色夜叉」を執筆したのも、この地でした。街の中心に位置する妙雲寺には多くの文学碑が建ち並び、その一帯は「文学の森」と呼ばれています。
文豪も愛した七色の湯が湧き出るこの街も、ジェイアールバス関東のバスは走る。

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