松本歴史と水の街
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松本歴史と水の街

水の街を行く

まどろみの中、あやうく落としかけた重たい紙袋を、慌てて抱え直した。
心地よいリズムで揺れるバスは、大人が入ることを許された、ゆりかごのよう。

窓の外では、小学生が力いっぱい自転車を漕いでいる。
この角を曲がったところ、
喉が渇くといつもここに来て、湧き水を飲んでいた。
あの頃の僕らに、自動販売機なんて必要なかった。

帰り際、玄関で無理やり紙袋を押し付けてきた母。
母の目に映る僕は、あの頃の無邪気な子どものままか。
それとも、少しは大人になっているのだろうか。

紙袋から顔をのぞかせた缶詰に苦笑いしながら、バスの空気を吸い込んだ。

INFORMATION

松本市内には、至るところに市民に愛される湧き水があります。
その豊富な水量や、市民によって守られ続けている高い品質から、「まつもと城下町湧水群」として、「平成の名水100選」にも選ばれました。

その中の一つが、大橋通り南にある「源智(げんち)の井戸」。
日本では珍しい硬水の湧き水で、天保14年に書かれた書物では「当国第一の名水」と称賛されている由緒ある清水です。
元々は、時の松本城城主であった小笠原家の家臣、河辺与三佐衛門源智(かわべよざえもんげんち)の持ち井戸で、その名をとって「源智の井戸」と名付けられました。

時は流れ、蛇口をひねれば水が出る現代もなお、多くの市民がわざわざこの湧き水を汲みに来ては持ち帰り、お茶やコーヒー、料理などに使われているそうです。

江戸時代から大切に守り続けられている、この湧き水の街も、バスは走る。

自然と文化の歴史を、時計が刻む

白く曇った窓ガラスにそっと指で穴を開けると、雨は本降りになっていた。
アナウンスの声で車内に目を戻すと、前方の空席にポツンと残された傘。
その光景が、遠い記憶の呼び鈴を鳴らした。
あの日も、今日と似たような空模様だった。
学校の帰り、突然の雨に降られ、逃げ込むようにバスに乗った。
終点に着く頃にはさらに雨脚が強まり、戸惑う私に、後ろから「これ使って」というぶっきらぼうな声。
学ラン姿の彼は、押し付けるように傘を預けると、土砂降りの中に飛び出していった。
それっきりの、遠い、遠い記憶…。
ふと顔をあげると、あの頃と変わらず時を刻む、大きな振り子時計が見えた。

INFORMATION 長野県西部に位置する松本市は、周りを、北アルプスや筑摩(ちくま)山地など 多くの山に囲まれ、市の80%以上が森林という、自然豊かな地域です。また、松本城の城下町としても長く栄えていたため、市街地には多くの文化的施設や歴史的建造物が見受けられます。
中でも、八つの市立博物館のうちの一つで、全国有数の古時計コレクションが収蔵されている「時計博物館」はその象徴的存在。 100点以上にも及ぶ所蔵品のうち、古いものは江戸時代から今もなお、時を刻み続けています。 建物の外壁にあるのは、日本一の大きさを誇る振り子型時計。街のランドマークとして、市民から観光客まで幅広い層の人たちに支持されています。 自然と文化の共存の歴史を、時計が刻むこの街も、バスは走る。

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