奈良自然が織りなす美しき郷
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ON AIR REPORT

奈良自然が織りなす美しき郷

日本の原風景が残る村

長いトンネルを抜けると、あの頃と変わらない景色が、僕を待っていた。

バスはゆっくりと停留所に停まる。
降りていった男性のもとに、小学生くらいの男の子が、
満面の笑みを浮かべて駆け寄ってくる。
そんな二人の姿が、セピア色に変わっていく…。

夕暮れどき、テレビの「また明日」の声に手を振り、
夕飯の匂いの漂う台所を抜け、バス停に走った。
父の大きなカバンを持つのが大好きだった。
照れくさそうに笑う父の顔も大好きだった。

思い出を胸にしまいなおし、
気がつくと、バスは再び速度を落とし始め、停留所に立つ父の姿が目に入った。
体は少し小さくなったけれど、大好きだったあの笑顔が迎えてくれた。
どれだけ月日が流れても、ここには、あの頃と同じ優しい風が吹いていた。

INFORMATION

奈良県の最南端、和歌山県と三重県の県境に位置する十津川村は、村としては日本一の広さを誇り、その大きさは、東京23区の面積を超えるほど。一方で深い山間にあるため、村の96%を山が占めるという、自然あふれる地域です。
国立公園の一部となっている峡谷「瀞峡(どろきょう)」は、古からの自然がそのまま残されており、コバルトブルーに澄みわたる水と、荒々しい断崖が、なんとも言えない神秘的な雰囲気を醸し出しています。
歌人として知られる与謝野鉄幹と晶子も、二度に渡ってこの地を訪れ、詩を残しています。
「紀の峡に 青の瀞観る つと思ふ 君が髪より そよかぜぞふく」、鉄幹。
「わが小指 絹となれぶる それよりも かかる筏を 渡す水かな」、晶子。
豊かな自然に恵まれた「日本の原風景」が残るこの村も、バスは走る。

1000年以上愛されてきた古道

心地よい疲れを足に感じながら、バスに揺られる。
そっと窓に寄り掛かると、少し西に傾いた暖かい光が、体を包み込む。
次第に、さっきまで見ていた景色の中に、引き戻されていく…。

木漏れ日がまぶしい山道を、一人ゆっくりと歩いていく。
昔、祖父も歩いたと言ったこの道を。
だからだろうか。初めて来たのに、どこか懐かしさを覚える。
祖父に甘えるように、大きな木に手を回すと、優しい風が吹き抜けていった。

鳥のさえずりが聞こえ、思わず周りを見渡してみるけれど、姿は見えない。
自然の息吹を感じながら、再び歩きだす。
決して広くはないのに、通る人を見守るような安心感が、この道にはあった。

バスは再び、日常に向かって、走っていく。

INFORMATION

十津川村には、2004年にユネスコの世界文化遺産に認定された「熊野古道」の「小辺路(こへち)」が、南北をほぼ一直線に縦断する形で走っています。
高野山と、熊野三山の一つである熊野本宮大社。その二つを結ぶ全長約70キロにも及ぶ「小辺路」は平安時代には既に形成されていたとされ、時に庶民の参拝道として、時に住人の生活道路として、1000年以上にわたり愛されてきた、歴史ある古道です。
その中でも、果無(はてなし)集落付近では、周囲の山々を一望することができ、その美しさから「天空の郷」と呼ばれる人気のスポットとなっています。
集落には、急斜面に作られた田畑が広がり、自給自足で暮らす、昔ながらの「古き良き日本の生活」が残されています。
先人たちの足跡を感じられるこの村も、バスは走る。

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