豊川賑やかな声響く桜並木
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ON AIR REPORT

豊川賑やかな声響く桜並木

家族の思い出を見守る、秋の桜並木

息子に春は来なかった。
受験に失敗した息子と、ふたりで歩いた桜並木は、皮肉なほどに美しかった。
言葉も交わさず、静かに歩く。
息子の横顔に目をやると、落胆しながらも、何かを決意したかのように見えた。

それから1年後、長く険しい道を歩いた息子に、春が来た。
故郷を離れ、輝かしい学生生活を送る息子からの連絡はいつだって、とても嬉しく、誇らしい気持ちにさせてくれた。

そんな息子に、数年ぶりに会いに行こう。
突然、思い立って決めた旅。
目的地は息子が暮らす、大都会・東京。
連絡を済ませ、多すぎるほどの手土産を買いこんで、バス停へと急ぐ。

秋の桜並木は、来年の受験生を送り出す花を咲かせるために、静かに力を蓄えている。

息子は、どんな想いで、このバスに乗ったのだろうか。
夜の静寂の中、思いを馳せながら、迎えにきたバスへと乗りこんだ。

INFORMATION

「豊川市役所前」を下車し、徒歩3分の場所にあるのが、隠れた花見の名所「諏訪の桜トンネル」です。この桜並木は、観光名所としてはあまり知られておらず、春になると地元の客で埋め尽くされるお花見スポットです。
この場所の桜は、その昔、東洋一を誇った海軍工廠の開庁を記念して、1941年に植樹されたソメイヨシノです。その後、さらに補植した桜と合わせて約280本、全長1kmからなる桜のトンネルは、3月下旬から4月中旬に見頃を迎え、東海地方有数の規模を誇る、豊川の春の風物詩となっています。
秋になると、諏訪の桜トンネルの周辺では、子どもからお年寄りまで参加できる「トヨカワシティマラソン大会」や、商売繁盛の神を祀る「豊川稲荷秋季大祭」などが行われ、毎年多くの家族連れで賑わいます。
家族の思い出を見守り続ける、桜並木のこの町も、バスは走る。

伝統ある祭に情熱を赤く燃やす

忘れかけていた気持ちを大事に抱え、
そのまま都会へと持ち帰るかのように、私はバスに乗り込んだ。
久しぶりの故郷は、あの頃と比べて少しだけ変わっていたけれど、
家族は、少しも変わっていなかった。

幼い頃、母に連れられて参加した、町の伝統のお祭り。
顔を真っ赤に塗りつけられて、わけもわからず大泣きする私を見て、
笑いながら慰めてくれた母の顔を、今でも思い出す。

そんな、なんでもないような思い出話に花を咲かせるだけで、
都会の喧騒を離れて、のんびりと過ごすことができる。
時間に身を委ねることも大切だと、故郷が、家族が、ふたたび気づかせてくれた。

何が私を急かしていたのだろう。
また、明日から、自分のペースで頑張ろう。
都会へと私を乗せて、吸い込まれるように、夜の街にバスは消えてゆく。

INFORMATION

愛知県の南東部に位置する豊川市。豊川市御津町にある長松寺は、約220年前から伝わる豊川を象徴する奇祭「どんき」が、毎年12月に行われることで知られています。
平和や除災招福を祈る火防の祈祷後に、白狐、赤天狗、青天狗に扮して練り歩く男衆。白狐と青天狗は撞木、赤天狗は八つ手の団扇を持ちながら子どもたちを追いまわし、紅ガラを顔や身体に塗りつける祭です。
紅ガラを塗りつけられると、無病息災が得られると言い伝えられており、冬になると、顔を真っ赤にされた子どもの泣き叫ぶ声や笑い声で埋めつくされるこの祭は、市の無形民俗文化財にも指定されています。
伝統ある祭に情熱を赤く燃やすこの町も、バスは走る。

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