山形日本一ラーメンを愛する街
どこか懐かしいラーメン
それにしても…、腹が減った。
午前中の商談で、すべてのエネルギーを使い果たしてしまった。
次の約束まで、まだ時間がある。
こうなれば、やることは一つ…。
しばらく、ふらふらと歩いていると、
いかにも「昭和」の香り漂うラーメン屋の、赤暖簾に目がいく。
「吉野家食堂」。
どこにでもありそうな店構えなのに、なぜか私の本能が「入れ」と言っていた。
こじんまりとした店内は、懐かしい香りで満たされていた。
こういう店こそ、大当たりだったりするんだ。
目の前にスッと置かれた丼は、
透き通った醤油ベースのスープに中太麺の、まさに定番のラーメン。
シンプルな分、ちょっとしたことが味を大きく分ける、難しい一品だ。
まずは一口、ゆっくりと味わう…。
のど越しの良いモチっとした麺に絡みつく、ムダのない洗練されたスープ。
私は、わずか一口で虜になってしまった…。
これはもう、なりふり構っていられない。
堅く締めたネクタイに指をかけた。
ラーメン消費量、日本一。それは札幌や博多、新宿などではなく、実は山形県山形市。
山形のラーメンの歴史は古く、関東大震災で被災した中国人たちが、ラーメン屋台を始めたことがはじまりとされています。
市内では、煮干しベースのあっさり系から、お酒の締めに嬉しいこってり系まで、さまざまなタイプのラーメンを食べることができます。
その中でも、特に根強い人気を誇るのが、「ラーメン四天王」と称される4店。東の「八幡屋」、西の「大沼食堂」、南の「吉野家食堂」、北の「いさご食堂」として、いずれも数十年に渡り営業を続ける老舗店です。
どの店も昔ながらのシンプルな味わいが特徴で、おいしいのはもちろん、どこか懐かしい気持ちになれるラーメンを提供しています。
日本一ラーメンを愛するこの街も、JRバス東北のバスは走る。
心洗われる風景
石段を上るとそこには、幻想的な、でも、どこか懐かしい風景が広がっていた。
澄み渡った空気を、胸一杯に吸い込む。
「気持ちいい」
思わず、声が漏れてしまう。
喧嘩して、家を飛び出し訪れたのは、縁もゆかりもない場所だった。
理由は、タイミングよくバスがあったから。
ただ、それだけの理由で来てしまった。
こんなに遠くにいると知ったら…。
あの人の心配する顔が思い浮かぶ。
しらないっ。そっちが悪いんだから。
静寂の中、暖かい陽に包まれると、
なんだか小さなことにとらわれていた自分が、少し恥ずかしくなる。
今度は、一緒に見たいな…。
気がついたら、またあの人のことを考えている。
結局いつもそう。私の負けだ。
悔しいけれど、なんだかとても清々しかった。
東北を代表する都市の一つ、山形県の県庁所在地である山形市は、戦国時代より大名・最上家によって治められ、山形城の城下町として発展を遂げました。
町の発展のはるか前、860年に創建された天台宗・宝珠山立石寺。通称「山寺」と呼ばれるこの寺は、最澄や空海にならい、唐で修行を積んだ円仁が、源氏のルーツとなる清和天皇の命により建てたものといわれています。
そんな山寺の見どころの一つが、寺の頂上からの風景です。「のぼるごとに煩悩が消える」とされる、1000段以上にもおよぶ石段。それをのぼりきった先に広がる雄大な山々とのどかな集落の姿に、心を洗われることでしょう。
荒んだ心を優しくほぐしてくれるこの街も、JRバス東北のバスは走る。