盛岡絶景とわんこそばを堪能できる街
雄大で美しい自然
バスに乗り、辿りついた先は、雲ひとつない青天の下。
カップルや親子連れに混じって、
私は一人、ダムを見上げていた。
空の青、森の緑。
壮観な大自然の中にそびえ建つ、巨大なコンクリートの壁。
この何とも言えないコントラストに、心を揺さぶられる。
無骨で、雄大で、何事にも動じない。
昔から、こんな男になりたかった。
そんな「憧れの男」に見とれていると、後ろから声をかけられた。
「すみません、写真、撮ってもらえますか?」
振り返ると、そこにいたのは若い男女のグループ。
「あぁ…、いいですよ。」
もう少しだけ自分の世界に浸っていたかったのに…。
作り笑顔をしながら、渋々シャッターを切る。
近頃、テレビやラジオ、雑誌なんかの影響で、観光客が一気に増えた。
ブームになるずっと前から、私はその魅力を知っていたのに。
応援していた売れない歌手が、急に人気者になった時のような、
嬉しさと寂しさが入り混じる。
何事にも動じない理想の男になるには、もう少し時間がかかりそうだ。
東北・岩手県の内陸部に位置する、みちのくの都・盛岡市。およそ30万人が暮らす県庁所在地です。
その一方で、中心地から少し離れると、「富士山にも負けず劣らない」と言われる岩手山や、東北最大の流域面積を誇る北上川など、美しい自然が広がっています。
そんな「人」と「自然」とが共存する盛岡市。その象徴ともいえるのが「御所ダム」、そして、その貯水湖となっている「御所湖」です。
かつて「御所村」と呼ばれる村があったことから名付けられた、ダムと湖。人工物であるダムと、その周囲一帯を包み込むように広がる絶景のコントラストに、訪れた人は思わず足を止めて、カメラを構えてしまいます。
周囲には温泉やスキー場といったリゾート施設も多く点在し、人々の生活を支えると同時に、一大観光名所となっています。
雄大で美しい自然が感じられるこの街も、国際興業のバスは走る。
盛岡の代表的な郷土料理
昼下がりのお蕎麦屋さんで、周囲の注目を一点に集めた私は、
わんこそばに挑戦していた。
「どんどん」「じゃんじゃん」「どんどん」「じゃんじゃん」…。
気持ちのいい掛け声にのせられるように、箸が進んでいく。
私が戦っている相手は、お椀の中の蕎麦でも、それを入れる給仕さんでもない。
あの日の自分だ。
いまより、もう少し暑かった夏の日。
もともと引っ込み思案の私は、就職した会社の同僚となかなか打ち解けられずにいた。
そんな中、社員旅行で訪れた盛岡で挑戦したのが、わんこそばだった。
男性陣が次々とギブアップしていく中、最後まで残ったのは…、なんと私。
あの日、私は一躍ヒーローになった。
大げさではない。
わんこそばが、私を救ってくれたのだ。
あの日の自分を超えるため、「もう一杯」「もう一杯」と、ひたすら蕎麦をすする…。
「勝った!」
限界に達した私は、そう確信して蓋を閉じる。
「只今の記録…、103杯!」
どよめきと拍手が沸いたその数は…、あの日とまったく一緒だった。
全国にその名を知られる、盛岡の代表的な郷土料理「わんこそば」。小さなお椀に次々と入れられる蕎麦を、満腹になり、蓋を閉めるまで食べ続けるという、独特なスタイルです。
その起源は諸説ありますが、一説によると、お客さんをもてなす気遣いが始まりといわれています。
かつて岩手には、宴会の最後に蕎麦を振る舞う習慣がありました。その際、同時に多くの人に食べてもらうため、蕎麦を少しずつ分け、後からお代わりをしてもらうという工夫をするように。お椀が空になれば、次々とお代わりを入れていく…。それが現在の「わんこそば」になったとされています。
「わんこそば」は、100杯で1つの区切りとされており、記録を目指す人が多いのですが、元々はよく味わって食べるもの。急がず慌てず、ゆっくりとその味を堪能するのも、また一つの楽しみ方です。
かつてのおもてなしの心が、いまなお残るこの街も、JRバス東北と岩手県交通のバスは走る。