三宮日本初の花時計が時を刻む街
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三宮日本初の花時計が時を刻む街

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三宮日本初の花時計が時を刻む街

行く手には神戸港、振り向けば六甲山

バスを降りると珈琲の香りがした。
初夏の風に、懐かしい酸味とほろ苦さが混じっている。

少し寄っていくか。

僕は重いスーツケースを転がし歩き始めた。
香りに導かれるままに老舗珈琲店の茶色い扉に手をかける。
押し開けると、懐かしい香りは思い出も連れて、
僕の中に流れ込んできた。

「行く手には神戸港、振り向けば六甲山」。
あの頃彼は、この街のことをそう言っていた。
堅物のパティシエ。
彼が一代で築いたパティスリーに弟子入りしたのは何年前のことだったか。
デザイナーをあきらめた後に美容師を目指し、
それも諦めパティシエに転向した僕を、彼はメレンゲと呼んだ。

「お前の夢は食えば溶ける」というわけだ。なるほど、その通り。
だけど今、僕はやっと溶けない夢を手に入れてこの街に帰ってきた。
メレンゲと僕を呼んだ彼は、もういないけれど。

酸味と苦みが交互にやってくる懐かしい珈琲を口に含みながら窓の外の街を眺める。
海から山へ、一本の大通りでつながっている。
この通りを、クリスマスには幾千ものイルミネーションが彩り、
鎮魂と再生の祈りが街を包む。

僕は立ち上がり扉を押し開けた。
「行く手には海、振り向けば山」
僕はどちらへ行くのだろう。きっと、歩き出してみればわかる。
スーツケースを転がし、僕は一歩を踏み出した。

INFORMATION

神戸市・三宮のメインストリート、通称「フラワーロード」。JR三ノ宮駅を中心に南北に伸びる、神戸随一の目抜き通りです。現在は、両側にファッションビルや銀行が並ぶ大通りですが、かつてこの場所に道はなく、そこには一本の川が流れていました。
その川は、現在、フラワーロードの東側を流れる「生田川」。明治時代の生田川は、少しの大雨でたちまち氾濫し、その度に多量の土砂を流しては、付近に被害をもたらしていました。
事態を重く見た明治政府は、生田川の移設工事を決断。突貫工事の末、わずか3ヶ月間で現在の位置に移されました。川の完成で不要になった旧生田川の敷地には住宅地が生まれ、その中央に設けられた幅18mの道路が、現在の大通りの基礎になっています。
戦後に入ると、歩道や中央分離帯に花が植えられるように。さらにその中心に、現在、街のシンボルとなっている花時計が誕生したことから、現在の「フラワーロード」という名前が生まれ、やがて定着していきました。
六甲山から神戸港へ、六甲颪(ろっこうおろし)が吹きぬけるこの街も、高松エクスプレスのバスは走る。

市民の想いが詰まった花時計

あと3分、ぎりぎりだ。
神戸ファッションに煌めく地下街をくぐりぬけ、
国際会館のエレベーターに飛び乗る。

バスの中でずっと考えていた。
最初の言葉は
「変わってへんなぁ!」
そして、大声で笑いあう。
変わってないわけがない。
でも今夜だけは、あの頃の私たちに戻りたい。

だってあの日、21年前のあの日。
私たちはとても傷ついていたから。
あの日を境に、私たちは互いにこの街を離れた。
再会の約束を花時計に刻んで。

テラスのあるレストラン。
1分前の滑り込みセーフ。
懐かしい顔がテーブルに着席して手を振っている。

「変わってへんなぁ!」

彼女だった。ポニーテールがトレードマークだった彼女の髪。
今は耳元できれいに切りそろえられて、長いピアスと一緒に揺れている。

「いつもギリギリや。あんたらしい」

そして大声で笑いあう、高校生だったあの頃の私たちのように。
再会の祝杯は神戸ワイン。
甘くてまろやかな神戸牛のステーキ。

さあ、積もる話をしよう。
心の復興は、果たせただろうか。
花時計が8時を告げた。

INFORMATION

神戸市・三宮。この街のシンボルは、街の中心に設置された花時計です。
実はこれ、日本で初めて設置された花時計。花時計づくりの計画が持ち上がったのは、戦後間もなく。当時の神戸市長の提案でした。スイスの公園に設置されていた花時計をモデルに制作が進められると、この計画に賛同した多くの市民から、多額の寄付金が寄せられ、その結果、完成した花時計は、市民から神戸市への寄贈という形で設置されました。
1957年4月26日、大勢の市民が見守る中、始動式が行われ、以来50年以上に渡り、花時計は時を刻み続けています。
年に8回ほど行われる工事により、花は季節のものに植え替えられます。また、文字盤の図柄は、年に4回ほど行なわれる市民からの公募をもとに決定。花時計の花やデザインが変わる度に、季節の移ろいを感じられます。
市民の想いが詰まった花時計が時を刻むこの街も、高松エクスプレスのバスは走る。

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