むつ夜空に映えるねぶたと魂が集まる恐山
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むつ夜空に映えるねぶたと魂が集まる恐山

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むつ夜空に映えるねぶたと魂が集まる恐山

130年以上続く伝統のお祭り

大湊でバスを降りた。
降りる予定ではなかった。
だが車窓から見える灰色の樹木たちを見ていると、叔父を思い出すのだ。
海上自衛隊としてこの地を愛し、ここで死んだ叔父。
除隊して東京に戻るのかと思っていたのに、よほどこの地を離れたくなかったのだろう。
なかでも彼が好きだったのが、大湊ネブタ祭り。

4年前の祭りに参加した時の写真を叔父は僕に送ってくれていた。
子供の頃は厳格な叔父があまり好きではなく、たまに来る手紙も適当に読んでいた。
だがその写真だけは、僕の心をひきつけた。
平家物語からの場面。「宇治川の先陣争い」。
雄々しい武将たちが刀をふりかざし互いににらみ合うダイナミックな構図。
夜の闇に怪しく光り、いっそう迫力を増すねぶた。

『強くあろうと意地を張ってきたように思いますが、
この土地の自然と人は、そんなちっぽけな自尊心などとは比べ物にならないほど、
大きく深い』。
その時の叔父の手紙の一文。
結局それが僕への最後の手紙だった。

もっと話しておけばよかった。…何度思っただろう。

冬には雪で真っ白に染まる港の町を僕はゆっくりと歩く。
実際の祭りを見てみたい。
そして、叔父と語り合いたい。

潮風が吹いている。
厳しく、そして優しい叔父の生き方を少しだけ、
僕に教えてくれた気がした。

INFORMATION

東北地方の夏祭りといえば、青森市の「青森ねぶた祭」が有名ですが、実はねぶた祭りは、青森県の他の地域でも開催されています。その中でも、むつ市で開催される「大湊ネブタ」は、特に規模が大きいものとして知られています。
130年以上も続く伝統のお祭りで、毎年8月の最初の金曜日から日曜日まで、3日間かけて開催されます。青森ねぶたは、主に企業が運行の主体となるのに対し、大湊ネブタは、主に地域住民の手によって運行されます。参加するのは、大湊地区の10の町内会に加え、「海上自衛隊」と「むつ市職員互助会」を含めた計12団体。
先頭を歩くのは、町内や団体を表す「先立ち」と呼ばれるミニねぶた。その後ろに流し踊りの列が続き、曳き手、ねぶた本体、最後尾では、太鼓と篠笛の囃子方が楽しげなリズムとメロディを奏でます。
期間中は各ねぶたの採点が行われ、最終日には賞を取ったねぶたのお披露目を兼ねて、再び街を練り歩きます。
夏の夜空に明るく映える、ねぶたが行き交うこの街も、ジェイアールバス東北のバスは走る。

人々の魂が安らかに眠る街

三途川、と書かれた標識に足が止まった。
この橋を渡ればあの世ということ?

宿舎を出て朝一番のバスに飛び乗った。
空は快晴。そびえたつ入道雲。

八方塞がりとはよく言ったもので、この時の私に救いはなにもなかった。
社員契約を切られ、部屋を引き払い、転がり込んだ彼氏とも大喧嘩。
実家の両親は高齢で、むしろ私の助けを必要としている。
なんとかしなきゃ、でもどうしようもない。
目をそらしてその場から逃げたくて
旅に出た、その先は恐山だった。

目の前にそびえたつ山門。
積み上げられた石。色彩あざやかな風車が風にゆれる。
おどろおどろしい場所かと思っていたけど、歩いてみるとなんだか清々しくて身がしまる。
日本でいちばん、あの世に近いとされる場所。
硫黄のにおい。立ち上る湯気。本当に地獄とは、こんな所なんだろうか。

そのとき、突然、目の前に絶景が広がった。
地獄から一気に極楽へ来たような浜辺に出る。
美しいエメラルドグリーンの宇曽利山湖だった。美しすぎて目を疑った。でもこれは現実だ。
わたしはここにいる。
ため息が漏れた。湖はどこまでも澄んでいる。
私は、ここにいる。
何も失ってなどいないじゃないか。
生きてる限りは、やり直す。

まずは最初の第一歩から。
帰りのバスを待つ間、私は、彼に仲直りの電話をかけた。

INFORMATION

下北半島の中央部に位置する「恐山」は、高野山、比叡山と並ぶ、「日本三大霊山」の一つです。下北地方では「亡くなった人の魂は恐山に集まる」と言い伝えられていて、死者への供養の場として、古くから信仰の対象とされてきました。
恐山には、死者の魂を呼び寄せると言われる「イタコ」が集まり、「口寄せ」を行うことで知られています。時代の流れとともにイタコの数は少なくなりましたが、今でも祭りの時期には、「イタコマチ」と呼ばれるテントに多くの人が並び、イタコの口寄せが行われています。
山道は、まさに死の世界を連想させるような荒涼とした大地が続きます。しかし、岩場地帯を抜けると風景は一変。目の前に現れる「宇曽利山湖」は、別名「極楽浜」と呼ばれるほど美しい湖です。
恐山街道の途中にある湧き水「冷水」は、「1杯飲めば10年、2杯飲めば20年、3杯飲めば死ぬまで若返る」と言われる聖水で、恐山を訪れる旅人の喉を潤しています。
人々の魂が安らかに眠るこの街も、ジェイアールバス東北のバスは走る。

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