那智勝浦潮風と硫黄の匂いが交じり合う街
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那智勝浦潮風と硫黄の匂いが交じり合う街

ON AIR REPORT

那智勝浦潮風と硫黄の匂いが交じり合う街

紀州・湯のくに

後悔先に立たずとはこのことか。
熱い湯の中で俺は思う。

「男同士の温泉旅行は格好悪い」
と、一人バスに乗った二日前。
あいつ、わざわざ見送りに来たな。バカな奴。
そんなにつらそうだったのか、俺は。

二年付き合った彼女と別れたのは三日前。
旅行のチケットだけが置き去りになった。
なぜかあいつが泣きじゃくって、
「大丈夫っすか」と何度もしつこい。
「うるせえよ」と強がりで俺は、一人旅へ。

格好悪いのは俺のほうだよ。

夕食には見事なマグロ。
艶やかな赤身が食欲をそそる。
あいつがいたら喜んだだろうな。
きっと一緒に食いまくっただろう。
きっと、百倍楽しかった。

時計を見る。時刻は浅い。
土産物屋はまだ開いているだろうか。
何か買っていってやろう。
おせっかいで憎めない後輩に。

フラれ男の一人旅。
後悔と格好悪さをビールで飲み込み、たそがれ時の街へ出る。

今は海風に吹かれよう。

INFORMATION

和歌山県は、別名「紀州・湯のくに」と呼ばれる日本有数の温泉地です。中でも那智勝浦町には、県内一を誇る175本もの源泉が集まっています。
太平洋に面して広がる「勝浦温泉」は、南紀白浜温泉と並ぶ、和歌山を代表する温泉地。大正時代には紀州徳川家15代当主である徳川頼倫が訪れたとされており、洞窟の温泉に入浴した際に「帰るのを忘れるほどである」と賞賛したと言われています。その洞窟風呂は現在も遺されており、そんな頼倫のエピソードにちなみ、「忘れる」「帰る」「洞窟の洞」と書いて「忘帰洞」という名前がつけられています。
海沿いには、南紀の景勝地である「紀の松島」から勝浦港にかけて、大小のホテルや旅館が建ち並びます。また、公衆浴場などの施設も多く、多種多様な温泉を日帰りでも楽しむことができます。
もう一つの名物は、水揚げ量日本一を誇る生マグロ。潮の流れの関係で脂ののったマグロは絶品で、「紀州勝浦産」というブランドは県内外に広く知られています。
潮風と硫黄の匂いが交じり合うこの街も、西武バスのバスは走る。

日本一の大滝

今、なんて言った?
滝の音にかき消されて、
大事なことを聞き逃した、気がする。

もう一度言って、と言えるような言葉でもない。
本当は分かってる。
でも、もう一度聞きたい。

度の強い眼鏡を外してレンズを拭いてる彼。
水しぶきでもかかったのか。
もう一度言って、と、やっぱり言えない。

全長130メートルの巨大な滝は
真っ白な龍神のように、まっすぐにただ流れ落ちて、
悠久の時を超え、その姿を今この時にとどめ続ける。

眼鏡をかけなおした彼が、私の顔をちらりと見る。
私も見返し、どきんとした。
彼の顔、耳まで真っ赤。
なぜここで言うのかと、問いただすのは野暮な話だ。

滝が真っ白な水しぶきを上げる。
悠久の時を今に刻む。

もう一度。そっと袖口を引っ張ると、
彼は私の耳元に、顔を寄せて囁いた。
今度こそ、はっきり聞こえた。約束の言葉。

私はただ、「はい」と答えた。

INFORMATION

那智勝浦町の那智川中流にかかる「那智の滝」は、栃木県の「華厳の滝」、茨城県の「袋田の滝」と並ぶ、日本三大瀑布に数えられています。
落差133メートル、幅13メートル、滝壺の深さは10メートルで、高さ・水量ともに日本一。滝の上部の岩盤には3つの切れ目があり、3本の筋となって落下し始めるところから、別名「三筋の滝」とも呼ばれています。
この滝のある那智山は、古くから、滝に対する自然信仰の聖地でした。山中には渓流が流れ、およそ60もの滝が架かっています。「那智の滝」という名前は本来、この那智山に架かる多くの滝のうち、瀧篭修行の場とされた48の滝「那智四十八滝」の総称でした。
入口から滝壺までは昔のままの石畳が続き、滝の右手には、国の天然記念物に指定されている那智山原始林が広がっています。いつの時代も、変わらない姿を保ち続けるこの景色は、まるで時が止まったかのような不思議な感覚へと旅人を誘います。
日本一の大滝が流れ続けるこの街も、西武バスのバスは走る。

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