松山漱石が惚れ込んだ名湯
松山漱石が惚れ込んだ名湯
松山漱石が惚れ込んだ名湯
松山漱石が惚れ込んだ名湯

ON AIR REPORT

松山漱石が惚れ込んだ名湯

「坂の上の雲」

僕のふるさとの街は、陽気で賑やかで明るい。
けれど
僕は静かで冷ややかな空間が好きだ。

人嫌いで出不精。
そんな僕の心に風を吹かせたのは、一冊の本。
激動の時代に小さな国を根こそぎ変えた
男たちの物語。
彼らの革命は、僕の人生にも革命を起こした。

僕の街から一本のバスでつながっている。
彼らが生きた、あの土地へ。

ふるさとを離れたことのない僕が
勇気を出して買った「坂の上の雲」への切符。
ページをめくるように旅をしてみよう。

こんなに長くバスに揺られたのは初めてだ。
そっと目を閉じると、
白くきらめく雲が風にのってたゆたう。
そのきらめきは、すぐ近くにあった。
僕の手の届くところに。

開いた目の先に、松山城の天守閣。
新しい風が、また吹き抜ける。

INFORMATION

小説家・司馬遼太郎の代表作の一つとして知られるのが、明治時代の日本を描いた歴史小説、「坂の上の雲」です。
2009年から2011年までの3年間、テレビドラマとして放送されたことも記憶に新しいこの作品。明治維新を経て、近代国家として歩み出した日本と、その時代を駆け抜けた男たちの人生が描かれています。
物語の3人の主人公たちは、いずれも、現在の愛媛県・松山市の出身です。陸軍で騎兵部隊を組織・育成した秋山好古(あきやまよしふる)。その弟で、東郷平八郎の参謀として海軍で活躍した秋山真之(あきやまさねゆき)。そして、真之の親友で、明治期を代表する俳人・正岡子規。
司馬は、明治維新から日露戦争までの30年あまりを、「これほど楽天的な時代はない」と語っています。近代国家が成立し、庶民に初めて「日本国民の1人」という意識が芽生えた時代。
作品のタイトルの「坂の上の雲」とは、坂の上の空に浮かぶ雲を目指すかのように迷いなく突き進む、当時の世の中の昂揚感を表したものでした。
そんな激動の時代に青春を過ごした主人公たちは、時代の波に翻弄されながらも、懸命に生き抜きました。
はるか遠い空に手を伸ばした男たちが生まれ育ったこの街も、伊予鉄道のバスは走る。

伝説の名湯 道後温泉

午前6時。
刻太鼓(ときだいこ)が一番風呂を告げる。

日本最古といわれる伝説の温泉。
老婆が一人、私の横をゆっくりと通り過ぎた。
90度に折れた腰。
その姿と太鼓の音が妙に溶け合い、私の好奇心を掻き立てる。
老婆についていくように唐破風の門をくぐった。

漱石の生んだ“坊っちゃん”が愛した上等、つまり三階の休憩室で
浴衣に袖を通し、階下の神の湯へと降りていく。
人のひしめく湯の中で、湯釜に手を合わせるあの老婆の姿を見つけた。

白く細く折れ曲がったその姿は、
古来、最初にこの温泉に入ったと言われる伝説のシラサギのようだ。

「3歩進んで、2歩、戻る。それが神の湯」
老婆が言った。
「遠い遠い昔からね」
そう言って、彼女はゆっくりと湯から上がり、湯けむりの中へ消えていった。

もしかしたら、彼女は本当に伝説のシラサギなのかもしれない。
神の湯で人の姿を得たこの温泉郷の守り神。

そんな気がした。

INFORMATION

愛媛県を代表する観光地と言えば、真っ先に連想するのは、名湯「道後温泉」ではないでしょうか。
日本三古湯の一つに数えられるその歴史は3000年とも言われており、「日本書紀」や「風土記」といった古い文献にもその名前が記されています。
もう一つ、この地と温泉の関わりの深さを裏付けるのが、その地名。愛媛県はかつて「伊予国」と呼ばれていましたが、一説によると、この名前は「湯国」が転じたものと言われています。
そんな温泉街のシンボルとなっているのが、街の中心部に建つ共同浴場「道後温泉本館」。明治27年に完成すると、斬新なデザインの近代和風建築として注目を集めました。
この浴場を度々訪れたのが、当時、英語教師として松山中学に赴任していた、文豪・夏目漱石。漱石はこの湯をたいそう気に入り、友人に宛てた手紙でも絶賛。後に彼の代表作となる、小説「坊っちゃん」の中にも登場します。
1994年には国の重要文化財に制定。2009年には、「ミシュランガイド日本編」で2つ星を獲得するなど、現在も国内外から高い評価を得ています。
漱石が惚れ込んだ名湯がこんこんと涌き出るこの街も、伊予鉄南予バスのバスは走る。

Podcastを聴く

ARCHIVE

もっと見る

podcast

  • PODCAST登録
  • iTunesをインストール済みの方はクリックすると
    iTunesが起動し、簡単に番組を登録出来ます
  • PODCAST RSS
  • iTunesなどのPodcastingアプリケーションに
    ドラッグ&ドロップしてください。

mail

みなさんからのメッセージ募集

番組への感想やメッセージをお待ちしています。

メッセージを送る