『君の名は。』の敏腕プロデューサー、川村元気さんの最新小説(2017/01/07 放送)
今週は、作家で映画プロデューサーの川村元気さんをお迎えしました。
1979年、横浜生まれの川村さんは、2001年に東宝に入社。26才の時、プロデューサーとして最初に手掛けたのが、2005年に大ヒットしたあの映画『電車男』でした。
昨年2016年は『君の名は。』『怒り』『何者』という3本のヒット映画をプロデュース。また、初めての小説だった『世界から猫が消えたなら』が映画化され、3作目となる小説『四月になれば彼女は』もヒットするなど、同時に5本のプロジェクトを抱えて倒れそうなほど忙しかったとか。
まずお話を伺ったのは、昨年11月に出た最新の小説『四月になれば彼女は』について。サイモン&ガーファンクルの同名曲から着想を得たというこの作品は、元々は週刊文春に連載されていたものです。主人公は翌年に結婚を控えている精神科医の藤代。妻となる獣医の弥生と共にタワーマンションで暮す彼の元に学生時代の恋人・ハルから、9年ぶりの手紙が届く…という恋愛小説です。
「単純に僕の周りに最近、恋愛してる人が減ったなという感覚から始まったんですよね」とこの小説を書いたきっかけについて話してくれた川村さん。ちょっと取材をしてみようということで、雑談のふりをして20代から50代ぐらいの約100人に話を聞いてみたところ、誰も熱烈な恋愛をしておらず、「これは面白い!」と思ったんだとか。
「10代の子たちを見てると半分くらいがやっぱりしてないんですよね。本当にそうなんですよ。で、これが面白いと思って。僕は“と言ってもしてるでしょ?”と思って取材を始めたんですけど、本当にしてないんだっていうのがシリアスな問題だなと。ただ、心の中にしたいって気持ちはあるし、いまだにやっぱり恋愛の話は最優先事項だったりもするんですけど、内容が全然変わっちゃったような気がして」
「取材をしていろんな人と話してみて、やっぱりみんな今はかなり(恋愛感情が)薄れてるなと。自分が知りたい、なんで僕たちは恋愛感情なくなっちゃったんだろう?なんで人間関係が最近こんなに複雑になっちゃったんだろう?SNSってどう向き合ったらいいんだろう?みたいなこととか。そういうのをいちいち恋愛ってフィルターを通して見ると、けっこうむき出しになってくるというか…」
「恋愛を通したりとか、お金を通したりとか、生死を通した時に人間の隠してる感情とか建前でやってることが一気に瓦解するんですね。で、僕はその3つを小説を書く時には必ずテーマにしていて。で、お金と死と、『四月になれば彼女は』でテーマにした恋愛感情と、この3つが人間がどんなに賢くなってもコントロールできないものだと思ってるんですね」
そして、恵さんが語った昔の大失恋の話、物凄く傷ついてそれ以降は“白線の内側”に立つようになったという話を聞いて、「今の話を聞いてて僕、楽しそうだなと思いました。痛い思い出って面白くなるんですよね」と川村さん。その真意についてこう話してくれました。
「恋愛の話も上手くいってる話って全然面白くなくて、こういう振られ方をしたとかこんだけ傷を負ったってことの方がその人の後々の人生にとっては面白いと言ったらそうだし、なんか価値のあるようなものになるような気がしています」
また、川村さん自身についてはこんなことをおっしゃっていました。「『四月になれば彼女は』の主人公が欲しいものがないっていう主人公なんですね。自分が何が欲しいのかわからないっていう。それがかなり自分の価値観に近くて。何かを強烈に欲しいって思えないんですよ。物にしても人にしても」
「物欲がないんですよ。なんか砂を掴んでる気分で、例えば『君の名は。』が大ヒットして200億円行きました!って言われても、なんかその瞬間に砂が手からこぼれ始めてるんですね。実態がないものを掴んでる感じなんですよ」
「その、手に入れた瞬間に失い始めてる感覚って僕だけじゃないと思ってるんですよ。今のこの世界を生きてる人がわりとみんなそういう感覚で生きてるんじゃないか。で、その感覚に向けて僕は小説を作ったり、映画を作ったりしてるから、わりと受け入れてもらってるのかなって気もしてるんです」
そんな川村さんは、ご自身が関わったここ何年かの映画と小説についてこんなふうに話してくれました。
「『告白』と『悪人』って映画を2010年に作ったんですけど、あの頃ってまだ31,2ぐらいで、若気の至りっていうか、全部自分の思い通りにしたい、みたいな時期になっちゃってたんですよ。で、このままだとつまんなくなるなと思って、小説にチャレンジして書いたのが『世界から猫が消えたなら』っていう小説で。映画にできないことをやってみようと。猫が消えた世界を映像にしてください、ってオーダーが来たとすると僕らは撮れないんですよね」
「で、書いてる途中に気づいたんですよね。ああ、小説って音鳴らないんだなって。当たり前なんですけど。じゃあ、これから作る映画は音を中心に持ってくる映画にしようと思って作ったのが『バクマン』っていう映画で。サカナクションってバンドに音楽をやってもらったりとか、まさに『君の名は。』でRADWIMPS、『怒り』って映画で坂本龍一さんだったり、なんか音楽が映画の中心にある、みたいなことをやるとちょっとユニークな映画ができるんじゃないかなっていうチャレンジが2016年だったような気がしますね」
そして、最新の小説『四月になれば彼女は』でチャレンジしたことは?と尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「インターネットの検索で出てこないことを書けるかっていうことでしたね。ネットを検索すると大体の答えが書いてあるんですよ。恋愛でもけっこう恋愛相談とかいっぱいあふれてるれてるんですよ。でも、全然ぼくらの問題を解決してくれないなって気がして。なんか僕は小説の役割って、インターネットで検索しても出てこないギリギリの人間の問題の解決策のヒントみたいなものをどう提案できるかだと思ってて、そこはかなりネットとの対決みたいなものを意識してましたね」
来週も引き続き、川村元気さんをお迎えします。お楽しみに!
1979年、横浜生まれの川村さんは、2001年に東宝に入社。26才の時、プロデューサーとして最初に手掛けたのが、2005年に大ヒットしたあの映画『電車男』でした。
昨年2016年は『君の名は。』『怒り』『何者』という3本のヒット映画をプロデュース。また、初めての小説だった『世界から猫が消えたなら』が映画化され、3作目となる小説『四月になれば彼女は』もヒットするなど、同時に5本のプロジェクトを抱えて倒れそうなほど忙しかったとか。
まずお話を伺ったのは、昨年11月に出た最新の小説『四月になれば彼女は』について。サイモン&ガーファンクルの同名曲から着想を得たというこの作品は、元々は週刊文春に連載されていたものです。主人公は翌年に結婚を控えている精神科医の藤代。妻となる獣医の弥生と共にタワーマンションで暮す彼の元に学生時代の恋人・ハルから、9年ぶりの手紙が届く…という恋愛小説です。
「単純に僕の周りに最近、恋愛してる人が減ったなという感覚から始まったんですよね」とこの小説を書いたきっかけについて話してくれた川村さん。ちょっと取材をしてみようということで、雑談のふりをして20代から50代ぐらいの約100人に話を聞いてみたところ、誰も熱烈な恋愛をしておらず、「これは面白い!」と思ったんだとか。
「10代の子たちを見てると半分くらいがやっぱりしてないんですよね。本当にそうなんですよ。で、これが面白いと思って。僕は“と言ってもしてるでしょ?”と思って取材を始めたんですけど、本当にしてないんだっていうのがシリアスな問題だなと。ただ、心の中にしたいって気持ちはあるし、いまだにやっぱり恋愛の話は最優先事項だったりもするんですけど、内容が全然変わっちゃったような気がして」
「取材をしていろんな人と話してみて、やっぱりみんな今はかなり(恋愛感情が)薄れてるなと。自分が知りたい、なんで僕たちは恋愛感情なくなっちゃったんだろう?なんで人間関係が最近こんなに複雑になっちゃったんだろう?SNSってどう向き合ったらいいんだろう?みたいなこととか。そういうのをいちいち恋愛ってフィルターを通して見ると、けっこうむき出しになってくるというか…」
「恋愛を通したりとか、お金を通したりとか、生死を通した時に人間の隠してる感情とか建前でやってることが一気に瓦解するんですね。で、僕はその3つを小説を書く時には必ずテーマにしていて。で、お金と死と、『四月になれば彼女は』でテーマにした恋愛感情と、この3つが人間がどんなに賢くなってもコントロールできないものだと思ってるんですね」
そして、恵さんが語った昔の大失恋の話、物凄く傷ついてそれ以降は“白線の内側”に立つようになったという話を聞いて、「今の話を聞いてて僕、楽しそうだなと思いました。痛い思い出って面白くなるんですよね」と川村さん。その真意についてこう話してくれました。
「恋愛の話も上手くいってる話って全然面白くなくて、こういう振られ方をしたとかこんだけ傷を負ったってことの方がその人の後々の人生にとっては面白いと言ったらそうだし、なんか価値のあるようなものになるような気がしています」
また、川村さん自身についてはこんなことをおっしゃっていました。「『四月になれば彼女は』の主人公が欲しいものがないっていう主人公なんですね。自分が何が欲しいのかわからないっていう。それがかなり自分の価値観に近くて。何かを強烈に欲しいって思えないんですよ。物にしても人にしても」
「物欲がないんですよ。なんか砂を掴んでる気分で、例えば『君の名は。』が大ヒットして200億円行きました!って言われても、なんかその瞬間に砂が手からこぼれ始めてるんですね。実態がないものを掴んでる感じなんですよ」
「その、手に入れた瞬間に失い始めてる感覚って僕だけじゃないと思ってるんですよ。今のこの世界を生きてる人がわりとみんなそういう感覚で生きてるんじゃないか。で、その感覚に向けて僕は小説を作ったり、映画を作ったりしてるから、わりと受け入れてもらってるのかなって気もしてるんです」
そんな川村さんは、ご自身が関わったここ何年かの映画と小説についてこんなふうに話してくれました。
「『告白』と『悪人』って映画を2010年に作ったんですけど、あの頃ってまだ31,2ぐらいで、若気の至りっていうか、全部自分の思い通りにしたい、みたいな時期になっちゃってたんですよ。で、このままだとつまんなくなるなと思って、小説にチャレンジして書いたのが『世界から猫が消えたなら』っていう小説で。映画にできないことをやってみようと。猫が消えた世界を映像にしてください、ってオーダーが来たとすると僕らは撮れないんですよね」
「で、書いてる途中に気づいたんですよね。ああ、小説って音鳴らないんだなって。当たり前なんですけど。じゃあ、これから作る映画は音を中心に持ってくる映画にしようと思って作ったのが『バクマン』っていう映画で。サカナクションってバンドに音楽をやってもらったりとか、まさに『君の名は。』でRADWIMPS、『怒り』って映画で坂本龍一さんだったり、なんか音楽が映画の中心にある、みたいなことをやるとちょっとユニークな映画ができるんじゃないかなっていうチャレンジが2016年だったような気がしますね」
そして、最新の小説『四月になれば彼女は』でチャレンジしたことは?と尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「インターネットの検索で出てこないことを書けるかっていうことでしたね。ネットを検索すると大体の答えが書いてあるんですよ。恋愛でもけっこう恋愛相談とかいっぱいあふれてるれてるんですよ。でも、全然ぼくらの問題を解決してくれないなって気がして。なんか僕は小説の役割って、インターネットで検索しても出てこないギリギリの人間の問題の解決策のヒントみたいなものをどう提案できるかだと思ってて、そこはかなりネットとの対決みたいなものを意識してましたね」
来週も引き続き、川村元気さんをお迎えします。お楽しみに!