自分自身にこんな綺麗な涙が残っているとは思わなかった。観終わって試写会場が明るくなってからもさらさらといつまでも僕は泣いた。
映像制作会社で働く智也(市原隼人)は、ある日、大学時代の友人、 あおい(上野樹里)が留学先のアメリカで命を落としたことを知る――。
あおいと智也は、大学時代、同じ映画研究会に入っていた。智也の回想に沿って展開されるラブストーリーには誰もが経験したあの頃の日々が散りばめられている。不思議な虹を一緒に見たこと、公園のロケでキスした日のこと、ふざけて結婚しようと言ってあおいの何かを刺激して烈火のごとく怒られて、しまいには泣かれたこと。そんなたわいない日常が、今となってはかけがえのない宝物となり智也の胸に迫る。あおいは智也が好きだった。智也はそれに気づかなかった。気づかれなかった、気づかなかったことのお互いの悔恨。
僕も大学時代、映画研究会に入っていた。テニスやスキーの傍ら、成城とかで8ミリをまわしていた。夏休みに合宿までしてあれほど集中して作ったのに、いったいどんな作品を作ったのか、タイトルさえ忘れてしまった。(女優は覚えている。先輩の女子学生で小室みつ子という名前で卒業してから有名な作詞家になった)作品とか台詞とかではないのだ、記憶に残っているのは。ロケの天気とか人の表情だとか交わした言葉や喧嘩したこととか、そういうものだ。
この映画は人の心の一番柔らかいところを描いている。あの頃の未来は今で、それは必ずしも期待通りではないけれど、その代わり、これまで出会った人の笑顔とか言葉を思い出すたび、あの頃と今がきちんとつながっていると安心する。僕はこの映画をこれからなんども観ることになるだろう。心の柔らかいところにはきっとその人ならではの思い出があって、人はときどきその思い出に帰るのだ。
|