今月ご乗船いただいているのは、小説家の平野啓一郎さんです。

取材旅行や、ブックフェアなどで、海外に行かれる機会も多い平野さんにお話を伺っていきます。

第5回目の旅先は「ポーランド・ワルシャワ」です。


ー 自分を解きほぐしてくれる何かですよね ー



干場「ポーランド、ワルシャワへ行かれたきっかけは?」

平野「ワルシャワ大学というところから、講演に招かれて行ったんです。
もともとショパンという音楽家が好きで、『葬送』という、ショパンを主役にした小説も書いていまして。ポーランド自体には関心があって、喜んで行きました。
ショパンの生まれた、ジェラゾヴァ・ヴォラというワルシャワ郊外にも行ったんです」

干場「ショパンの生まれた場所は、どんなところですか?」

平野「本当に田舎の小さな街で、彼の出生届が出された教会も現存してますけど。ポーランドは、戦争で建物がかなり破壊されてしまったんですね。
いま残っているものは、ジェラゾヴァ・ヴォラの教会もそうですけど、ワルシャワの旧市街なんかも、ほとんど復元されたものなんです。
その復元の仕方が立派で、ユネスコの世界遺産に登録されているはずですね」

干場「平野さんは、『ショパンを嗜む』という本も書かれているのですが」

平野「『葬送』を書くときに取材ノートを作って、その中には小説に生かさなかった内容もあるんですけど。
せっかくなので、ショパン生誕200年のときに、取材ノートをもとにして、入門書みたいなものを書こうと思い書いた本です。
自分がワルシャワに訪ねた時のことも含めて、”これを読むとショパンが分かる”という内容になっています」

干場「ショパンは、どんな人生観だったんですか?」

平野「政治的なことに翻弄された人生でしたけど、音楽自体はノーブルで何とも言えない美しい世界を作っていて…。
芸術と政治の複雑さが、彼の人生の中で両方見えるんですよね。登場人物としては、魅力的な人物ですね」

干場「ショパンの音って、深みがありますよね」

平野「メロディメーカーでしたから、一度聴くと誰でも忘れないようなメロディを作れるんですけど。そこに、人生のなんとも言えない陰影と深みがあって、美しいメロディなんだけど表面的じゃないというか…、そういう人は、なかなかいないんですよね」

干場「平野さんは、ピアノは弾かれるんですか?」

平野「昔やっていて、今も、たまに簡単な曲を弾きますけどね(笑)」

干場「平野啓一郎さんの人生において、旅とは、どんなインスピレーションを与えてくれるものでしょうか?」

平野「自分を解きほぐしてくれる何かですよね。
日常生活、毎日の繰り返しの中で生きてると、自分の思考パターンとか、物の見方が凝り固まっていってしまいますけど。
違う文化圏に住む人と話したり、そこの習慣の中でしばらく生きてみると、物の見方も変わっていきますし。違いを受け入れるということに対して、オープンになれる気がします。
もちろん、いい人ばかりじゃなくて、嫌な人もいますけど、それも含めて視野が広がるっていうことじゃないですかね」


「船旅の祭典『CRUISE FESTA 2016』開催」

保木「みなさまに、広くクルーズの旅を知っていただきたいと思いまして。この番組も始まって4年じゃないですか。
質問も多くいただいたり、なかなか、まだ知られていない部分もあるので、船の種類や基本的なことも含めて、自分に合ったクルーズを選んでいただきたいし、そういうこともあって『CRUISE FESTA』をお手伝いさせていただいてます。

初日は、ファッションショーがあって、船旅に持っていくのは、どんな服がいいのかなとか、ジローラモさんが来てくれますね。
会場では、いろんな船の映像や写真、ミニセミナーがあります。
どんな船を選んだらいいのか、どこへ行ったらいいのかとか、そういうブースを設けています。

移動式のプラネタリウムを設置していますので、そこで、出航の時間に合わせた星空を楽しんでいただけるようなものを用意しています。
2日目はこの番組の公開収録があります、素敵なゲストをお招きする予定なので楽しみにしていていただきたいですね」

今月ご乗船いただいているのは、小説家の平野啓一郎さんです。

取材旅行や、ブックフェアなどで、海外に行かれる機会も多い平野さんにお話を伺っていきます。

第4回目の旅先は「イースター島」です。


ー 実際に自分で行くとは思っていなかったんです ー



干場「イースター島は僕も行ってみたい島ではあるんですが、どういったきっかけだったんですか?」

平野「もともとは、新婚旅行でタヒチのボラボラ島へ行ったんですよね。”ずっとタヒチにいてもな”と思って、タヒチからイースター島に行ける飛行機があったんですよ。じゃあ行ってみようかと、行ってみました。意外に遠くて6、7時間くらい飛行機に乗りました(笑)」

干場「大きい飛行機じゃないですよね?」

平野「けっこう大きいのに乗りましたよ。イースター島っていうのはチリ領で、本当に絶海の孤島なんですよ。島の周囲どこから見ても、本当に海しか見えないんですよね。ずっといると、ちょっと心細くなりますね」

干場「モアイ像もあって?」

平野「”もういい”というくらい、モアイ像がいっぱいありますね。日本では、モアイ像の首から上だけが知られてますけど、実は胴体がけっこう長いんですよ」

干場「地面から出てるのって、上半身の、みぞおちのあたりから上の部分ですよね?」

平野「出てないように見えますけど、本当は全身像なんですよ。
もっと全身が出てるものもあれば、運んでる途中で放置されて、顔が下向いたままうつ伏せになっているようなものとか、いっぱいあるんですよ」

干場「すごい不思議ですよね」

平野「イースター島に行くと、モアイ像よりも馬の方が印象的で。島民よりも馬の数が多いってくらい、野良馬みたいなのがいっぱいいるんですよ。
島の至るところに馬がいて、飼われてる感じでもなくて。それが、すごく印象的でしたね。
観光地に向いてる場所なんですけど、欧米資本の観光開発が一切進んでないんですよね」

干場「じゃあ、ホテルとかもないんですね。滞在されたんですか?」

平野「本当に民宿みたいなところで。3日くらい滞在しましたね、島の大きさは1日で見れるので、隅から隅まで見ましたね」

干場「じゃあ、本当にあのままなんですね」

平野「そうですね。1回は行く価値があると思います、2回行くべきかは分からないですけど…でも、すごい場所ですけど」

干場「僻地じゃないですか?そういうところに行くと、小説の題材も浮かんだりするんですか?」

平野「イースター島で、特に何か思い付いたということはないんですけど、本当に周りが海だけなので。”こういうところにずっといたら、どういう心境になるのかな?”とか思ったり、昔の人は、船でどうにかこうにか渡って来てるわけなんですよね。
誰かが行ったという事がわかっていれば、そこに島があると思って目指していきますけど、最初の人は、”どうしてここに来たんだろう?”とか、そういうことを考えますよね」
ただ、そういう島ならではの神話がいっぱいあるんですよね。宗教的な儀式として、断崖絶壁から飛び降りる、飛び降りないとか、そういう話はイマジネーションを刺激されます。
いつか、そういう記憶が何かに生かされることは、あるかもしれないですね」

干場「なるほど」

平野「イースター島のモアイ像は知っているから、僕も昔から行きたいなと思っていたけど、実際に自分で行くとは思っていなかったんです。
たまたま、その話を画家の横尾忠則さんとしていた時に、プリンセス天功さんもいらして…」

干場「すごいメンバーですね(笑)」

平野「お2人に話したら、当然のように『イースター島行ったことあるよ』と言ってて(笑)。
誰に話しても、イースター島なんか行ったことなかったのに、”こういう人たちは、行くところは行ってるんだな”と感動して、僕も行かないとなと思ったんですよ」


干場「いつも、リスナーの方にいろんなご質問をいただいてるんですけど、たまには久美子さんのお話を聞きたいと思います。
久美子さんは、いつもどうやって船に乗られているんですか?」

保木「最近、あまり乗る時間がなくて残念なんですけどね」

干場「年に何回くらいですか?」

保木「上手くすると、年に3回乗れますね。船旅される方は3種類あるんですよ。
寄港地で選ぶ場合、船で選ぶ場合、世界中に日本から予約できる船は200隻くらいありますけど、順番に乗っていく方ですね」

干場「1隻ずつですか、それもまた面白いですね」

保木「私はどちらかというと、同じ船に乗って、自分のうちに帰ったみたいなのが好きですね。
みんな、『ウェルカムホーム』って言いますからね。
干場さんも何度も乗ってらっしゃるじゃないですか?今度乗られると、『このあいだも乗ってたよね』と、名前もすぐ覚えてくれたりね」

干場「スタッフに言われますよね『こないだ乗ってたでしょ?』って」

保木「干場さん濃いから、覚えられてますよね(笑)」

干場「そういうのって、嬉しいですよね」

保木「名前を呼ばれたり、好きなものを覚えてくれたりしてると、”また戻ってこようかな”と思いますよね。
みなさん、言葉が心配と仰るじゃないですか。まず笑顔、それと『ハーイ!』って言うだけで、大丈夫です(笑)。
それができると、クルーズは100倍楽しい!」

干場「なるほどね、ものすごい簡単な方法ですね」

保木「あと、自分の好きなものって決まってるじゃないですか。
『何が食べたいの?』と言われたら、『ハンバーガー』と言っても、伝わるんですよ。
笑顔を忘れず、簡単な英語でいいから、恥ずかしがらずに喋ることですね」

干場「久美子さんが船を楽しむ秘訣として、挨拶と同じ船に乗ること。それは良いということですね」

保木「そうですね。もっとリラックスできると思いますね」

今月ご乗船いただいているのは、小説家の平野啓一郎さんです。

取材旅行や、ブックフェアなどで、海外に行かれる機会も多い平野さんにお話を伺っていきます。

第3回目の旅先は「東ヨーロッパのセルビア・クロアチア」です。


ー 今、いろいろな問題を考える上で、興味深い場所だと思っていたんです ー



干場「今日は、東ヨーロッパのお話をうかがっていきたいと思います」

平野「去年、セルビア共和国の首都・ベオグラードでブックフェアがありまして、そちらに招待されたんです。
ベオグラードと、クロアチアのザグレブに滞在していました」

干場「自分では、なかなか行こうとは思わないところですよね?」

平野「今度出る本『マチネの終わりに』という小説は、ヒロインのお父さんがクロアチア人という設定なんですよ」

干場「また、すごいところですね(笑)」

平野「旧ユーゴスラビアの、あのあたりに興味があったんですよ。
歴史的に複雑だし、複数の民族が共存するという目的でユーゴスラビアは作られたんです。80年代末〜90年代にかけては、凄惨な民族紛争なんかも起こりましたし。今、いろいろな問題を考える上で、興味深い場所だと思っていたんです」

干場「クロアチアのザグレブも行かれてるんですよね?」

平野「ザグレブは美しい、という噂を聞いていたので。僕の小説に出てくる、洋子という女性の父親がクロアチア人という設定なので、ぜひ見たいと思って。
ザグレブ自体は小さな町で、1日で観光できちゃうような町なんですよ。
そこから2〜3時間行ったところに、滝がいっぱいある国立公園みたいなのがあって、そこは見応えがありました」

干場「なるほど」

平野「ちょっと滝を見るようなつもりで、街中を、普通に歩く格好で行ったんですよね。
そしたら、そこが4時間くらいかけて見て回るハイキングコースで(笑)。みんな、ドイツから来てる人達は本格的なんですよ。僕だけモードなコートみたいなのを着てたので、すごく浮いてて、目印にされていたんです(笑)」

干場「ザグレブで一番記憶に残っている景色はありますか?」

平野「失恋博物館というのがあって、世界中の人から”失恋にまつわるもの”を集めて、展示しているんですよ。そこに、ちょっとしたストーリーが書いてあるんですよ」

干場「ものすごく変な博物館ですね(笑)」

平野「でも、ヨーロッパの面白い博物館の賞みたいなのをもらっていましたね(笑)」

干場「そんなのを博物館にしちゃっていいんですね(笑)」

平野「思いついた人が、ユニークだったんでしょうね」

「一番長期間のクルーズはどれくらいの期間?」

保木「お答えするのが難しいんですけど、お金さえ払えば、乗っていようと思えば、ずっと乗っていられますからね(笑)。
お仕事をやめてリタイアされた方で、船に暮らしてる方はけっこういらっしゃるんですね。

一般的には、だいたい1週間〜2週間の旅がポピュラーかな。100日のワールドクルーズって、お金や時間の都合で、なかなか行けないですよね。
4月25日から、プリンセス・クルーズ日本発着の外国船が、9月まで日本の周りをぐるぐる回るんですよね。これは、6日間〜2週間くらいまで、長くは行けないけど、船旅に興味ある方にはオススメなんですよね」

今月ご乗船いただいているのは、小説家の平野啓一郎さんです。

取材旅行や、ブックフェアなどで、海外に行かれる機会も多い平野さんにお話を伺っていきます。

第2回目の旅先は「ハンガリー」です。


ー 僕の中で”夢のような、悪夢のような光景”になっていって、『透明な迷宮』という小説を思いつきました ー



干場「今日は、ハンガリーの話をうかがいたいと思います。ハンガリーはどこに行かれたんですか?」

平野「ハンガリーは、ブタペストに何回か行きました。そこから車で行くペーチという古い街があって、初期キリスト教の立派な遺跡がのこっていて、世界遺産にも登録されているんです。去年、そこに2週間滞在しました」

干場「それは、2014年に出版された、小説『透明な迷宮』の舞台となった場所ですかよね」

平野「何回か前にブタペストに行った印象が強烈で、それを元に描いた小説ですね」

干場「ブタペストはどんな印象でしたか?」

平野「ヨーロッパの古い街はいろいろ見たけど、ブタペストは本当に綺麗で。19世紀後半から、20世紀初頭にかけての建物が充実していて、ネオゴシックの建物から、アールヌーボーの独特の様式の建物があって、すごく綺麗なんです。ドナウ川を挟んで『王宮の丘』というのがあって、そこが見どころですね。
社会主義時代がありましたから、街中に社会主義時代の秘密警察の建物が博物館になったりしてるんですよ」

干場「そうなんですね!」

平野「ファシズム時代に、ここにナチスの本部が置かれて、そのあと秘密警察の建物になって…みたいな場所なんですけど」

干場「ちょっと暗さが残っているんですか?」

平野「悲惨な歴史を見て、街並みの美しさを見て、僕の中で”夢のような、悪夢のような光景”になっていって、『透明な迷宮』という小説を思いつきました」

干場「ライター・イン・レジデンスのご招待で行かれたということですが、どういう制度なんですか?」

平野「ペーチ市が作家を招いて、2週間滞在してもらいながら、創作活動をしてもらうっていうプログラムですね。
ヨーロッパ各国の作家が、僕の前にもずっと滞在していて。提供してくれるアパートに住んで、文章を書いたりしてました」

干場「ハンガリーのペーチに来たから、『ペーチのことを書いてね』ということなんですか?」

平野「基本的にはそうですね。そんなに大作を求められませんでしたけど、街の印象とか、いろいろ書きましたね。
すごくコンパクトな街で、本当に美しくて、ちょっと丘になっているので立体的なんです。
風景が変化に富んでいて、街の真ん中には大きなショッピングモールがあるので、古い街並みと便利さ、両方があるんですよ。
あと、いまハンガリーの医学部に日本の学生が留学するのが、ちょっとしたブームなんですね」

干場「なぜですか?」

平野「ハンガリーは大学の医学部の水準が高くて、授業は英語だし、そこで勉強すると、ヨーロッパでどこでもお医者さんになれるライセンスを取る資格があるんです。学費が安かったり、いろいろな理由で日本からも留学生が来ていて、ペーチも、その中での重要な大学のひとつが存在していて、日本人の留学生も来てました」

干場「ヨーロッパ然とした、古い街並みという感じなんですか?」

平野「そうですね。キリスト教の初期の建物があると同時に、オスマントルコの影響もあったので。
モスクの古い建物が、時にはキリスト教徒に利用されたり、ひとつの建物でも歴史があったりしますね。でも、みんな親切で食べ物も美味しいですし、いい滞在でしたね」


「クルーズ船で働く人たちの様子を見学できるツアーはありますか?」

保木「船内見学はできますけど、クルーの暮らしだとか生活の場を見るっていうのは、セキュリティの問題もありますので、実施している船はないですね。
船によっては、綺麗に整えられてるバックやードを見ることは、たまにあります」

だいたい、従業員の方は制服を5着も、6着も持っていて。
いろんなことを受け持ちながら、世界を回っているのは楽しい空間だと思います。
一度船に乗られて、バックヤードとか、キッチンのツアーがあれば、ぜひ参加していただきたいと思います」

今月ご乗船いただくのは、小説家の平野啓一郎さんです。

取材旅行や、ブックフェアなどで、海外に行かれる機会も多い平野さん。

第1回目の旅先は「フランスのパリ」です。


ー ぼく自身も少年期特有の暗いものを自分も抱えていたので ー



干場「今日は、平野さんが1年間暮らしたことのあるというフランス・パリのお話をうかがっていきたいと思います。
デビュー作で、芥川賞も受賞された『日蝕』はフランスの中世を舞台にした作品だったと思うんですけど、フランス文化や生活に興味があったんですか?」

平野「もともとはフランス文学が好きで、中学、高校と読んでいたんですよ。
その頃からの憧れと、住むとなると食べ物が美味しいとか、街が綺麗とか、そういうことを考えて1年間滞在する場所に選びました」

干場「10年くらい前に、パリに住んでいたんですね」

平野「すごくいい経験になりました。観光で行くのと、住むっていうのは違いますし、3年、5年、10年と住むと違う世界が見えると思うけど。
短いながらも住んでみたことは大きな経験でした」

干場「1日のスケジュールはどんな感じでしたか?」

平野「当時は文化庁から、文化庁文化交流使という資格で派遣されていて。基本的にはパリの大学で日本文学科があって、そこで授業したり、あとはヨーロッパ各地で講演活動をしたり、その合間に執筆をしたり…という生活ですね」

干場「授業はどんな授業ですか?」

平野「日本文学についてですね。ぼく自身、三島由紀夫という作家に関心があって、フランス人も興味のある作家なので三島について話したりしました」

干場「平野さんが三島と出会ったのはいつですか?」

平野「ぼくは中学生の時に、『金閣寺』という小説を読んで出会って、衝撃的でしたね」

干場「読んだ時にどう感じられましたか?」

平野「異様な感じはしましたね、今まで読んでる本と違っていて。過度にきらびやかで、耽美的な文体と暗い主人公とのコントラストがあって。どっちも胸に響きました、ぼく自身も少年期特有の暗いものを自分も抱えていたので」

干場「そうだったんですか?」

平野「そうですよ、文学を好きになる人間は基本的に根暗ですから(笑)」

干場「パリに暮らしていた頃、こよなく愛していたものは何ですか?」

平野「やっぱりカフェとか…。日本では、1年間同じカフェに通っても、店員と個人的な話をするって、ほとんどないと思うんですよね。
喫茶店とかだと、店主と親しくなるというのはあるかもしれないけど」

干場「距離感がちょっと違いますよね」

平野「向こうは、最初の3回くらいは観光客かと思われていたんですけど、3回目くらいから『近所に住んでるの?』みたいな話になったりして…そういうのに慣れると、”これもいいな”と思いますね」

干場「なるほど」

平野「感情が、ある意味ストレートですし。良い・悪いをはっきり言うんですよ。一回親しくなると、受け入れてくれるというか…。
パーティーに招かれた時も『誰でも友達を連れてきていいから。あなたの連れてくる人だったら、誰でもいいから』という招待の仕方をしてくれるんですよね。
そういうのは違うところかなと思います」

干場「パリの好きな風景は?」

平野「最初に行ったとき、ルーヴル美術館に行って腰を抜かしましたね。外観も中身も、本当にすごいと思ったし、美しいと思いました。
明治時代に、初めてパリに来た日本人も、大きな挫折感を感じたんじゃないかなっていうか…」

干場「フランス人の美意識を前にして、ということですか?」

平野「本当に、建物が立派に見えますからね。
こういう国に、これから日本が追いついていかないといけない、ということを、当時の人はショックがあったんじゃないかと思います」

干場「それは、日本人との差ということですか?」

平野「日本人との差というよりも、日本にも美しい建物はいっぱいありますから。街並みの美しさとか、何か圧倒されましたね」

「東京オリンピックを控えて、現在のクルーズ業界の状況と今後の見通しについて」

保木「オリンピックを控えて、実はクルーズがすっごく予定されているんですよ。
先日も、ロイヤル・カリビアンが横浜に入っていますね。

ホテルを建てるにも場所がいるし、建てたあと、オリンピックが終わったあとに、どういう風にするかみたいなことを考えると、ホテルの代わりに客船を使うなど、考えられていますね。

欧米の方たちで、オリンピック前後に日本を観てみたいという方、これから増えると思うんですよ。
でも、日本の旅館、列車、車で巡るというのは、なかなか大変なことなので、客船が注目を浴びるんじゃないかと思っています。

食べ物も、言葉の問題に関しても安心ですし、オリンピックを控えて大型客船がやってくるのは間違いないですね」