勝負の世界で生き抜く術

武井壮さん(百獣の王)×藤田晋さん(サイバーエージェント代表取締役社長)

2016

08.28


 
「百獣の王」のキャッチコピーで知られる武井壮さんとサイバーエージェントの代表取締役社長を務める藤田晋さん。タレントでありながらもマルチアスリートとして、勝負に挑む武井さんと、今まで数々の勝負をしかけ、会社を成長させてきた藤田さん。彼らは、どうやって、勝ち負けの世界で生き抜いてきたのでしょうか。

勝負どころを見極める





武井
30歳手前の頃、アメリカでゴルファーをやっていたんですけど、1年でプロゴルファーになれると思ってアメリカに行って、誰よりも練習を重ねて、最高記録を出そうと思ったのに、それが叶わなくて、上達するに4年もかかってしまったんです。4年でプロゴルファーになるのは普通のことで特別ではないし、元日本チャンピオンだったのは、その4年前だったので、その名前も薄れてきていて、自分に旬な感じがなかったんです。そのままゴルファーを続けても、上にいかないとスポンサーもつかないし、サポートもされなくて、抜け出すしかない。実力勝負以外はできない感じになると思って、これはゴルフを続けるのは得策ではないと思い、では、何をしようと思った時に、自分を見てもらえる環境を作ってから好きな作業をするほうが、世の中の価値としては需要があって、そこで、ニュースを巻く方が効率いいと思って芸能界に目を向けたんですよ。


藤田
勝負師の感覚で、リスクがどれだけあってリターンがどれだけあるのか勝負どころの見極めみたいなのが僕は重要だと思うんです。昔、新入社員の時に死ぬ程がんばっていたのは新入社員が成績をあげているという旬の自分がそれをしている、それによってみんなが注目したり、仕事が集まって来るというリターンが高い時期に勝負している。受験勉強も高校一年からがんばったら息切れしてしまうので、半年前から死ぬ気でやったほうが効率がいい。ちょっと俯瞰してみたらわかる話なんですよ。スマートフォン事業に注目した時期も、後から考えると、誰がみても世の中スマートフォンに切り替わるわけだから、投資したほうがいいんだけど、目の前をみるとまだ商売にならないから、こんなのお金にならないというほうが優勢に聞こえるんです。僕からみたら、リスクに対してリターンが大きいから勝負しないといけないと思っていたんですけど、世の中的な論調はまだまだ商売にならないみたいな。

武井
サイバーエージェントが始めた「AbemaTV」は、新しい形のインターネットテレビ局ですが、なぜ動画配信事業をしようと思ったのですか?

藤田
「AbemaTV」は、かつて「フジタテレビ」を作りたいと言っていたくらいなので、どこかでTV局を作りたいという気持ちはあったかもしれません。でも、TV局を作ったらものすごいリターンが大きい。「AbemaTV」は、失敗しても死なないくらいの投資なんですよ。半年で100億くらい使っていますけど。それでも今のうちの会社の状況なら死ぬことはない。だから勝負しているところもあるし、今が動画元年だとネット業界では思っているので。



スポーツはリスクの高いギャンブル





武井
勝ち負けではないけど価値の生み方にこだわっていて、スポーツは、すごく危険なギャンブルだと思うんですよ。例えば、中学から野球を始め、高校でも野球部入って、甲子園に出て、一流の大学の野球部に入った。でも、卒業の時にドラフトにかからなかった。中高大と10年間を使ったギャンブルみたいだと思っていて、それは野球に限らず、陸上はほとんどアタリのないギャンブル。日本チャンピオンになったとしても普通のサラリーマンと同じくらいの給料でなんとか陸上をさせてもらっている状況です。もっとマイナースポーツの人はさらにアタリのほとんどないルーレットに15年くらいベットしている状態なんですが、それを選手側も意識できていないことが多いんです。でも、1千万人の人がそれを100円でも払って見たいと思っていたらプロとして成立する。アスリートはこの考えが足りないと思っていて、見てもらう数にフォーカスするのが芸能にしてもスポーツにしてもひとつの勝ち方だと思います。だから、どうやったら、そのスポーツを見てくれるのという点に注意を払っているのですが、それを提供する企業としてはどう思いますか?

藤田
ひとりでも知っている選手がいるとおもしろいですよね。誰もわからないと見ていられない。

武井
そうなんですよね。見たい人がいるからなんですね。僕らがやっているスポーツの楽しさをみんなに知ってほしいと言うけど、楽しさは知っているんだけど、見たい人がいないのが一番の壁だと思っています。僕がタレントになったのも見たい人に先になってからスポーツをやっちゃえという発想なんです。

藤田
おっしゃる通りですね。武井さんひとり入っているだけでみんな見ますよね。

武井
今は、ちょっとずつそうなってきて、スポーツ全部お仕事になるようになってきたんです。これをアスリートのモデルケースみたいにみてくれて、うらやましいところまでもっと昇華できないかなと思っていて・・・。

藤田
スターを1人育てると簡単にそうなりますよね。錦織選手が出てきたことで、みんなテニス見始めるように。

武井
そうですね。今、テニス市場は、すごい盛り上がっていて、僕の友だちのお父さんたちも子どもにテニスを習わせていますからね。


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