支え合って生きることの大切さ

荻上直子さん(映画監督)×桐谷健太さん(俳優)

2017

03.05



荻上監督の最新作「彼らが本気で編むときは、」は、母親に育児放棄された少女が、自分の叔父、そして、その叔父のトランスジェンダーの恋人との3人で共同生活をするさまを描く人間ドラマです。今朝は、この作品のカギともなっている「トランスジェンダー」や「母親の存在」といった事柄について、おふたりは、どう感じているのか?さらに、今の社会において、それらと、どう向き合っていけばいいのか?おふたりにお聞きしました。


日本のLGBTに対する違和感


ここ数年、日本でもLGBT、性的マイノリティーという言葉も定着。渋谷区が「同性パートナーシップ条例」を導入したり、企業もダイバーシティーに対する動きが広まりつつあります。

荻上
20代の時、アメリカ・ロサンゼルスに6年間に住んでいて、まわりにゲイやレズビアンのお友だちがたくさんいて、でも、日本に帰ってきるとその割合が極端に減るんですよね 。

桐谷
そうですね。

荻上
すごく違和感があって、レストランにごはんを食べにいくと隣のテーブルにはパパが2人いて、肌の色の違う子どもたちが2人くらいいてみたいな家族が普通だったり、図書館に行ったらレズビアンカップルと仲良くなったりというようなことがアメリカではあるのに、日本では本当にないことにまだまだコンサバティブで、閉鎖的なところがあるんだなと思って。

桐谷
日本人がその割合が少ないってことではないですもんね。

荻上
そうそう。

桐谷
だから、見せられない。それを見せた時、どういうのがくるのかっていうのが怖いというのもあると思うし。日本人の特性として人の目を気にし過ぎてしまう。

荻上
あとね、年配のおばさまとかに、こういう映画が出来ましたとチラシを渡すと「最近、流行っているのよね」と言われたんですよ。流行り廃りではないんだけど、理解もまだまだ進んでいないと思って。

桐谷
そういう感覚で捉えられるんだ。そこに監督が違和感を感じたから、映画にもなりうるんですけど、それぞれの人が幸せになったり、自由になる権利はあるし、でも、もうちょっとゆるくてもいいかなとは思いますよね。みんなが違うことが当たり前で、それでいい。でも繋がっているという感じになれば、もっと楽しい世の中になるのになぁと。

荻上
そうですね。




母親の存在


さらに、この作品で監督が伝えたかったテーマが「母親の存在」。映画の中にも様々な「母親」が登場します。

荻上
トランスジェンダーの人がトランスジェンダーであることに悩んでいるという映画にはしたくなくて、さらにもう一歩進んで、女性だから母性みたい気持ちが生まれることもあると思って、こういう話にしたんですけど。母と娘とか、お母さんと子どもっていう関係性を描きたかったんですよね。

桐谷
トランスジェンダーが注目されがちだけど、例えば、血が繋がっていなくても母になれるのかであったり、なる気持ちが生まれるというのを感じてほしいですね。

荻上
私自身、双子を産んで、1日中ずっとひとりで双子をみていたりすると、ほんとに頭がどうにかなりそうな気持ちになる時もあって、だからシングルマザーはほんとうに大変なことはわかるし、投げ出してどっかに行ってしまいたいという気持ちが起こってしまうのも仕方ないと理解できるところはある。また、映画の中には、彼らの関係を理解できないコンサバティブな思考の持ち主の母親も登場します。その役みたいな人がいてもおかしくないし、誰も悪くないんです。

桐谷
そうなんですよね。いろんな人が出て来るし、その向こう側には、この人を支えてあげる人がいればといいなとも思うし、みんなひとりでは生きていけないし。子どもをほったらかして出て行ってしまうのは、悪いところもあるんだけど、完全にこの人が悪ということではなくて、人間は、そうなってしまうよねって。こういうのは、書きながら構築していくんですか?それとも、そういう人物が近くにいるのですか?

荻上
書きながらかな。

桐谷
本を見た時にすごいなと思って。全部が日常会話のようだし、そこがいいなと思ったんですよね。

荻上
ありがとうございます。


『彼らが本気で編むときは、』
【公式ホームページ】
生田斗真、柿原りんか、ミムラ、小池栄子、門脇麦、柏原収史、込江海翔、りりィ、田中美佐子、桐谷健太

脚本・監督:荻上直子
2017年2月25日(土)、新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー!
配給:スールキートス

© 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会

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