人間の心と繋がるお花の世界

野村萬斎さん(狂言師)×森下佳子さん(脚本家)

2017

05.28

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伝統芸能の本流を背負いながら、次々と新しいことにも挑戦している萬斎さん。狂言以外にも古典の技法を駆使した現代作品に関わったり、俳優として映画やドラマにも数多く出演していらっしゃいます。一方、森下さんは、「世界の中心で、愛をさけぶ」、「白夜行」、「天皇の料理番」など、数々の話題作を手がけ、NHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」では、向田邦子賞を受賞。現在放送中の大河ドラマ「おんな城主 直虎」の脚本も担当されています。ともに「掟破り」な作風で、新しい価値を生み出してきたおふたりにこの度、タッグを組んだ、いままでにない時代劇エンターテインメン映画『花戦さ』についてお話を伺いました。

何を考えているのか分からない演技


戦国時代に実在した花の名手、初代・池坊専好が、時の権力者、豊臣秀吉に刃ではなく、華道で戦いを挑む“花戦さ”のゆくえが描かれている映画『花戦さ』。その中で池坊専好を演じたのが、野村萬斎さん。花と町衆を愛する風変わりな僧侶で、人の顔と名前が覚えられない上に口下手。出世にも名誉にも興味がない専好さんを丸刈り姿でコミカルに演じています。

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萬斎さん
ご無沙汰しておりますね。

森下さん
ご無沙汰ですよね。

萬斎さん
言いにくいかもしれませんが試写をご覧になっての感想は?

森下さん
萬斎さんが次に何をするのか、何を考えているんだろうと思いながら見ると、とても面白かったですね。萬斎さん変わった顔をしているんですよ。

萬斎さん
変わった顔?

森下さん
なんでそこで笑っているの?そんなに嬉しいの?とかすごく、いっぱいあって。

萬斎さん
脚本家の意図するものとは違う演技をしていたということですか?

森下さん
違う!そういうことではないです(笑)。単純に萬斎さんの醸し出すムード、得体の知れなさみたいなものが面白かったです。

萬斎さん
そうですか。映画の撮影に入る前に、ふと見せる静かな表情、演技の行間を掴めというようなお手紙をちょうだいした覚えがあって、それは、多少意識しました。何を考えているのかわからないほうが天才に見えるかなって。

森下さん
すでに萬斎さん天才なんですけどね。

萬斎さん
それは置いておいて、池坊専好が天才かどうか、そういう意味で人の名前が覚えられないという設定は、なかなか考えさせられたというか、ひとつの契機になりますよね。


花で人々の心を和らげる


生け花で織田信長や千利休をうならせ、豊臣秀吉をギャフンと言わせたほどの人物でありながら、弟子や町衆から愛され、慕われていた専好さん。萬斎さんは、そんな池坊専好のキャラクターをどんな風に捉えたのでしょうか。

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萬斎さん
池坊専好は、町衆に愛されている人物でありながらも、みんなが嫌がる信長の前で巨大な花を生けることにも物怖じせずに出来てしまう・・・

森下さん
萬斎さんもそんなところあるんですか?

萬斎さん
一種の少年心というか、少年が大きくなったようなイメージは持ちたいなと。これはオトコの夢じゃないですかね。

森下さん
いつまでも冒険したいとか。

萬斎さん
かっこよく言えば求道者になるかもしれませんけど、あまり道に縛られるよりも、やりたい気持ちが重要というのが少年心ですかね。狂言だと「このあたりのものでござる」という言葉が最初にくるんですが、つまり、時代、場所や文化が変わっても「このあたりのものでござる」と言ってのけてしまう、つまりone of themというか、森羅万象のうちのひとつであるという発想でもあるんですよね。だから、僕がキツネからサル、蚊の精まで演じるのですが、おしならべて、人間存在や森羅万象の存在というのは、優劣はないんだという発想でもあるし、今回の専好さんの目線も町衆と秀吉と差があるように見てないですよね。

森下さん
そうですよね。何をした人かもいまひとつわかっていないかもしれないですよね。

萬斎さん
お花と同じ様に見ているのかもしれませんよね。

森下さん
そうですよね。

萬斎さん
今回、人間の心と花はリンクしているような気がしていて、専好さんは花を生ける達人であるわけで、花を開かせて、それをみんなに見せる。その花にとって一番美しい姿を見せるのであるならば、専好さんは人の心を和らげて、開かせていく。僕は、そこがいいなと思っているんですよ。


■『花戦さ』
6月3日(土)全国公開
コピーライト:©2017「花戦さ」製作委員会
配給:東映
出演者:野村萬斎 市川猿之助 中井貴一 佐々木蔵之介 佐藤浩市
脚本:森下佳子 
音楽:久石 譲 
監督:篠原哲雄
原作:鬼塚 忠「花戦さ」(角川文庫刊)

「映画『花戦さ』オフィシャルサイト」

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