仕事観の変化

風間ゆみえさん(スタイリスト)×小田康平さん(植物店「叢」店主)

2019

02.08

null

タレントやモデルが絶大な信頼をよせ、大人かわいいブームの火付け役としても知られている人気スタイリスト、風間さん。ファッションはもちろんのこと、彼女のメイクやライフスタイルは、女性たちから圧倒的な支持を集めています。ファッションの世界で常にトップランナーとして、様々なトレンドを世に送り出してきた風間さんですが、結婚を機に、住まいを湘南に移し、自然に囲まれた中で生活をするようになったことで、仕事に対しても意識が変化してきたそうです。

null

暮らしに寄り添ったスタイリング



風間
25年くらいスタイリストをやってきて自分の中に定着してしまい、若い時は自分の中で勝手にシチュエーションとか、その着る人の女性像みたいのイメージしてドラマを作って、「こんなの着たら素敵」というコーディネイトを作っていたんです。例えば、背中がパックリ開いたワンピースをノーブラで着てもクールかっこいいでしょ、みたいな仕事も多かった。あとタレントの仕事もやっていたから、少し誇張してスタイリングしたり。でも今の仕事は、ファッションを楽しむことはあまり変わってないですけど、もうちょっとみんなの暮らしに寄り添ったスタイリングをする機会が多くて、すごく細いことをやっています。例えば、水色のコートを合わせるのに、ピンクをさしてみるとか、着る女の子を色々想像するわけですよ。OLさん世代でちょっと疲れてる時に洋服に癒されたい方だったらこんなのを着たら気持ちいいんじゃないかとか、その人がどういう気持ちでとか、心地よさで着られるのかを考えてコーディネートするようになって、同じ仕事なのにスタイリングの仕方が全然違います。

小田
風間さんの世界とクライアントさん、どっちを重視するかというと?

風間
クライアントさんです。いやでも自分って出てしまいますもん。小田さんもそうだと思いますけど、わたしも小田さんもエネルギーが濃い目じゃないですか、だからほっといても自分というものは多分出て、小田さんが育てている以上、サボテンは、小田さんになってしまう。結婚して結構変わったことがあって、いままで本当にみんなの10倍速ぐらいで生きてきて、いろんなことを人に伝えようとしてきたから、今は前よりも穏やかに耳を傾けるようになったんですよね。誰かと一緒にいることで時間を費やされるから必然的に仕事が少しセーブされるようになって、考える時間が増えてきて、周りの音が耳に入るようなってきましたね。


null

自分の仕事に素直になる




小田
昔は、大量生産の植物は好きじゃなかったんですよ。クローンで同じで、だけど今はちょっと違っていて、大量生産したのは、人だし、この植物は生きてるし、大切にしたいなと思うし、大量生産だから嫌だとかいいじゃなくて、結局それをどう見せるかが僕の仕事。今からもう2年ぐらい前に、エルメスのショーウインドウをさせてもらったことがあるんですよ、その時にどういう空間にするかいろいろ考えて、結局、大量生産のサボテンを使ったんです。

風間
えーー!

小田
大量生産のサボテンをどう見せるかで見え方が違って、最終的に一個ではなくて空間で僕らしさとか僕の表現したいものが出せるのであれば大量生産の植物だから嫌と言ってんじゃなくて、大量生産をあえて使ってみようと思って。でも最終的には僕らしい空間になったかなと思ってるんですけど、そういう使い方をすれば、大量生産の植物を否定して使わないではなくて、自分次第でどうにでもなるし、可能性はあるんじゃないかなと思って、最近よく使っていますね。

風間
サボテンとの関係性がきっちりも固まったというか、深まったんでしょうね。それまではまだ自分でも探っている最中だったから好き嫌いがあったけど、今はサボテンの博士みたいなことですよね。

小田
そうですかね。例えば、農家に行くと、植物が一個あります。かっこいいなと思うじゃないですか、当時は、これかっこいいと思った後に「どっかで大量生産されていた植物よ」って言われた時に「おっと危ない、やめておこう」と手を引いていたんですよ。でも、よく考えたら最初かっこいいと思って手に取ったわけじゃないですか、大量生産だから手を引くというのは自分に嘘をついてるなと、自分がいいなと思ったわけだから大量生産だろうが関係ないと思いそれも選ぶようにしたんですよ。そうすることで植物選びが楽になって、あの人がいいからとか、こういうトレンドだからで植物を選ぶのではなくて、僕が素直にこの植物がいいと思っただけで、すごい強い意志があるし、コンセプトも通るし、そういうところで植物を選び始めたのが今から3、4年前なんです。自分らしくできると言うか、自分の仕事に素直になれたっていう感じですかね。


null

これまでの記事

その他の記事