短歌の魅力

知花くらら(モデル)×神田京子(講談師)

2019

07.12

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与謝野晶子が切り開いたもの


女優としても活躍し、国際貢献活動も行う知花さん。この度、女性として新たな一面を開花させた処女歌集『はじまりは、恋』を発表されました。

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知花
57577の形にのせるから、ひとつの詩歌としての共通言語というか、その形にする前はただ個人的な経験だったり思い出しかないことがいろんな方に届くと思うと、すごいなと思って。

神田
届くのと、くららちゃんが発した時の主観とは違ったように届いている人もいっぱいいると思う。

知花
それがうれしいですよ。

知花
わたしは与謝野晶子が好きで、あの時は時代の寵児として、今までみんな乳房なんて歌ったことがない時代。だから凄いセンセーションを巻き起こしたんだけれどそういうふうに生きてる女性はすごいかっこいいなっていう憧れがあって。

神田
わかる。命ある限り燃やしたって感じだよね。

知花
ほんとにそう思います。よくぞあんなダメ男に生涯をかけて恋をした。

神田
あの鉄幹もそれだけあっちこっちからモテる魅力があったんですね。

知花
プロデューサーとしては才能あったと思う。

神田
晶子もダメ男と途中から気付いてもその人がいないと今度は歌が全然作れないっていう、そういうこともあるよね。


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短歌の難しい点


知花さんが発表された歌集、『はじまりは、恋』。この中では、「恋」にとどまらず、「家族」や「故郷・沖縄」、さらには、国連WFP日本大使としての活動など、彼女のこれまでの多彩な経験から生まれた歌を詠んでいます。

神田
「はじまりは、恋」という歌集はすごく視野が広いというか、恋というものが異性だけに留まってないっていうか世界に向いていて感受性フル稼働。

知花
そうかもしれないですね。

神田
「こめかみに刺さる視線 錆びたねぢをばらまいたやうな難民キャンプ」。これはそこに行ってなければわからない。

知花
最初は大変でしたね、どう受け止めていいか分からなくて、国連の活動で行った先のことを歌に詠みたいというのは歌を始めた最初からあったんですけど、やってみたらすごく難しくて、自分の声の歌とか自分のことを歌うのと全然違ったんですよね。最初はやっぱり大使としてこれも伝えたいあれも伝えたい、これも知って欲しいみたいな義務感、伝えなきゃというのが前に出ちゃって、短歌のお師匠さんからは、これでは歌にならないし、そういうのを詰め込むと31文字がもうただのスローガンになっちゃうんですよね。だからその肩書きとか大使の視点は捨てて今一人の女性として、知花くららとして詠むなきゃだめだよって最初からダメ出しを受けていて、結構苦労してきた。本当に難しくて歌を作る時は客観的な目もやっぱり必要で、本当に言いたいことは言っちゃいけないから、例えば、”かわいそう”とか言っちゃいけないじゃないですか、31文字の中に、かわいそうと思ってる自分は何でそう思うのかとか、そんな自分がその瞬間に見てる景色をドーナツみたいに周りから読み込んで行くんですよね。だからその塩梅が難しいと言うか、詩歌だからやっぱりこう読み手に想像していただいてなんぼだから、言い過ぎないようにできるだけ、そいでそいでそいで、でもそぎすぎると何もなくなってしまうから、そのいいラインを探りながらっていう感じですかね。



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