今の自分を髪型で表現

田丸麻紀(モデル、タレント)×松浦美穂(へアサロン「ツイギー」オーナースタイリスト)

2019

09.27

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「田丸ショート」ができるまで


トップモデルとして数多くの雑誌やCMで活躍。現在、2児の母親として、そのライフスタイルにも注目が集まる田丸さん。そして、宮沢りえさん、木村カエラさんなど数多くの著名人からも絶大な信頼を寄せるへアサロン「ツイギー」を率いる松浦さん。最近では、黒木華さんが、ドラマ「凪のお暇」の中で披露したショートカーリーヘアも松浦さんが手がけました。おふたりの出会いは6年前に遡ります。

ショートにするなら松浦さん



田丸
私がショートカットにする時には絶対に松浦さんに切っていただきたいというのがすごく強くあって、直接、松浦さんとは、知り合いではなかったので、いろんなモデルさんやヘアメイクさんに松浦さんを紹介してほしいと言って、繋いでもらって会えたのが初対面だったので、”この方が松浦さんだ”と緊張しながらお会いした記憶があります。

松浦
そうだったんですね。見つけていただいてありがとうございます。

田丸
感動しながら次の扉をドキドキしながら開いたのが昨日のように思い出しますね。

松浦
私も同じようにこれが田丸麻紀か!

田丸
本当ですか?

松浦
正統派美人のイメージがすごい強かったんで、どうやって私はこの人を崩していけるかなというのは第一印象でしたね。

田丸
そうなんですね。そして、松浦さんにショートにしていただいたその日からまわりの友達にいろんな声を頂いてて、それが、自分の背中を押してくれたというか自信になって、仕事もそうですけど、視野も広がって、ずっとショートのまま心地よく生きてきて早6年という感じです。

松浦
麻紀ちゃんは、ポプジティブというか、本当に幸せの種を持ってる人だなと思うんですよ。幸せを見つけに行く人ではなくて、幸せをつかむ人。髪は気が宿るってよく言うので、やっぱり長い髪を切った瞬間に一つ掴むわけで、その次の掴みはどこなのか上手にサーフィンしてるというか、乗ってる感じは見て受けてます。

田丸
だいたいヘアサロンに行ったら、スタイリストさんと、髪の毛はこんな風にしたいんですとか、前髪は、こんな感じとか、やりとりするのが、普通だと思うんですけど、松浦さんとそんな話したことないと思って、今の自分の気持ちや、最近起こったこと、自分が今後こうしたいみたいな、そういうのを全部上手にピックアップしてくれて、私が行きたい所に進ませてくれるようなエネルギーを髪で表現して作ってくれる。

松浦
鏡の中の世界なんですよね。美容師にとっては顔を見た世界が、平面で、それはある意味の偽りなんですよ。肉眼で見えている360度で自分は捉えるので、それはライフスタイルと一緒で、その人の裏と表みたいなことを知っていかないと鏡の180度の面の世界に落とせないって言うか。正面の顔と鏡越しに見る顔は全然違うの。だからどこで捉えるかによって全然見え方が違うんですよ。美容師的には仕事としては正面ではなくて、斜めちょっと外したところから360度のうちの330度くらいが自分の仕事で、正面以外の仕事が私たちの責任かなとは思うから。横顔とか後ろ姿からも、今のライフスタイルが読み取れるようにしたいな。


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意思のある女性たちから支持を受ける理由



田丸
松浦さんは、どんな風にして今この人には、これが必要と気づくのですか?

松浦
やっぱり共鳴しあうとか、何か話しするのは大事な要素ですよね。

田丸
そう思いました。私は、自分の気持ちとか、こういうことが今心地いい、すごく難しく感じてる、ちょっと気持ち悪いみたいな感覚的なことを音に出して伝えているのかもしれない。

松浦
麻紀ちゃんは、すごいストイックですよ、いい意味で。

田丸
そうですか!

松浦
結婚生活も子育てもちょこちょこって喋ってくれるじゃないですが、前に向いたら前しか見てない人だと思う。

田丸
まずくないですか(笑)。

松浦
だからいいんですよ。前に向いた時にいちいち両方を見るタイプの人が割と多いと思うんですよね。でも、人の空気なんて関係ないっていうストイックさみたいなものは今の世の中に一番大事なことだと思うので、まず空気を読まない人から出世していくんじゃない。

田丸
空気を読む力は、どこで学べるんだろう。学べるなら学びたいと思っていたんですけど、今の松浦さんのお話聞いて、このままでいいかなって(笑)。

松浦
ひとつの意味でちゃんと空気を読んでるんですけど、こういう子育てがいいと思うんだとか、こういう風にしたいんだっていう時の後まっすぐな目、それは本当にいつも感じるので、その度に何かちょっと変えなきゃなとこっちは思うんですよ。前髪だけでも変えるかなとか、ちょっと襟足を伸ばすかなとか、もっとアシンメトリーにしようかなとかその宿題をもらえる。その会話が必要なんですよね。だから私もいただく、私も与えるという win-win の関係でいたい、いなくちゃいけないかなと思いますけどね。

田丸
今まで過去6年近くのヘアスタイルを見てさかのぼっても、なんとなくトレンドを追いかけてヘアスタイルを作っていると、数年前のは、古くなるじゃないですか。

松浦
洋服もそうね。

田丸
松浦さんの髪は、トレンドではなくその時の私を表現してくださっているので、古臭くならないんですよ。

松浦
今の言葉は最高に嬉しいです。そういう美容師になりたかったんですよ。80年代からそこを目指してた気がする。例えば、洋服だったらエルメスだったりとか、マルジェラだったりとか普遍なんだけど、ひとつ退屈しない要素がある。それはアバンギャルドという言葉だったり、その時々の言葉があると思うんですけど、でもやっぱりそのたった一つ退屈しない要素っていうのが今年にあるって言うことをトレンドと呼ぶならば、最終的な落とし込みはトレンドだけど、その原型はトレンドに流されない物を作れる人になれたらいいなっていうのは20代の時からのずっと思い続けたことなんですよ。髪型でそれが表現できるような人にいつかなれたらいいなってずっと思っていたんで。

田丸
「ツイギー」にいらっしゃるお客さんは、みんなかっこいい方が多いじゃないですか、自分を生きてるみたいな、人からの評価より自分の生き方。それは、松浦さん、そして働いてるスタッフの皆さんもそうなんですけど、みんな同じ感じ。「この方の髪を切った松浦さんの気がする」とかちょっと松浦さんがどっかでいて、その存在が感じられるから、それは、すごい松浦さんブランドだと思うんです。

松浦
ありがとうございます。

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