オンエアレポート

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15
Mon

2022-08-15 小川 哲 さん

小説家の小川哲さんをお迎えしました。

美雨さんとは「村上RADIO」の特番で
ご一緒している小川さん!

2015年『ユートロニカのこちら側』でデビュー。
2017年『ゲームの王国』で日本SF大賞と山本周五郎賞を受賞。
2019年には『嘘と正典』が直木賞の候補になりました。

そんな小川哲さんの話題の新刊
『地図と拳』が集英社から発売されています。


日露戦争から第二次世界大戦終戦までの
半世紀を題材に様々な人間模様を描いた作品で
もともとは「小説すばる」に連載されたものが
約4年の年月をかけて完成。

ページ数は600ページ超え!
重さ800gという大作!

美雨さん
「戦争をテーマにされたとのは、どうしてですか?」

小川哲さん
「僕は小説を書くときに素朴な疑問を
重要視することが多くて、子どもの頃に
第二次世界大戦について習ったとき
小学生の僕は、勝てるわけがないのに
なんで日本はアメリカと戦争したんだろう?
という疑問がありました。
大人になっても、すぐに答えが出なくて
その答えを一行で言おうと思えば
言えるんだろうけど、なかなか一言では言えない
色んなものが積み重なった結果としてあって
それを、書く過程で知りたいと思いました。」

美雨さん
「(第二次世界大戦より)もっと前の時代
日露戦争から書こうと思ったのはどうしてですか?」


小川哲さん
「戦争は急に始まるものではなくて、戦争が
起こる前には原因があって、そのきっかけに
なるようなことには、また別の原因があって。
歴史はずっと続いていくものなので
日露戦争に日本が勝ってしまったことが
第二次世界大戦の一つのきっかけになることも
あるし、戦争が実際に起こる、相当手前から
描くために、こういう構成になりました。」

美雨さん
「(歴史的な背景を)調べていく中で
意外だったことはどんなことですか?」

小川哲さん
「日露戦争の当時、日本は弱小な国で
ロシアは世界で一番か二番ぐらいに強い国。
普通に戦ったら絶対に勝てない相手だったんですけど
いろんな偶然や奇跡、日本の軍人の活躍があって
勝敗としては勝ってしまった。
その勝ってしまったことが
第二次世界大戦で、不可能な相手と戦うときに
日露戦争のときに勝てたという共通認識があったり
あるいは、日露戦争で亡くなった人たちの命を
無駄にしないためにも、もう引き下がれないんだ
という考え方になっていったり。
だから戦争に勝つことが
別の戦争を呼び込んでしまうことは
重要な事実なのかもしれません。」

美雨さん
「戦争という題材を扱うにあたって
小川さんも人間だから、戦争が嫌だとか
素直な感情が出てきてしまうと思うんですけど
メッセージ性というのは、どう取り扱っていますか?」

小川哲さん
「これは僕の考え方なんですけど、反戦活動を
するために小説ができることは
物語の力によって考え方が変わったり
今まで自分が当たり前だと思っていたことが
当たり前じゃなくなったり。そういう体験が
できると思っています。
特に小説は、他のメディアと比べても作家と
読者が長い時間を一緒に共に歩く、読者を
独占できる時間が長いので、いろんな人に
読んでもらいたいですね。
戦争について、色んな考え方があって
(読者に)考える材料を増やしたい。
小説は僕の書いた文章なので僕の主観を完全に
取り除くことはできないんですけど
小説を書くときは、色んな人に読んでもらうことを
念頭において書くようにしています。」



■■集英社より発売【地図と拳/小川哲】■■


♪小川哲さんリクエスト♪

M. Blowin’ In The Wind / Bob Dylan