Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.244 羽賀翔一さん

2017年12月02日

今週お迎えしたのは、マガジンハウスから出版されている「漫画 君たちはどう生きるか」を描かれた、漫画家・羽賀翔一さんです。

原作は、児童文学者の吉野源三郎さんが1937年に書かれた名著「君たちはどう生きるか」。
この作品が80年の時を経て、漫画になった作品が「漫画 君たちはどう生きるか」です。

わずか3ヵ月で70万部のベストセラーとなったこの作品。
時代を代表するような大ヒットがいかにして生まれたのか。羽賀さんは、これまでどのような漫画道を歩まれてきたのか。

羽賀翔一さんに、詳しくお話を伺いました。


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──キャラクターを生き生きと動かすためのウソ

茂木:この大ヒットって予想されていましたか?

羽賀:正直、こんなに広まってくれるとは…っていう気持ちがあります。もちろん、原作が80年続いてきた本で、ファンの方がたくさんいるっていうのは分かっていたんですけど、今の時代にも読む方がたくさんいたっていうのは驚いていますね。

茂木:どういう経緯でこの漫画をやろうと思われたんですか?

羽賀:マガジンハウスの編集者の方が「この作品を漫画にしたらどうだろうか」と提案した時に講談社の編集者・原田隆さんに相談したら、たまたま僕の前作を読んでくれていて、「羽賀翔一って人はどうか」と、僕を推薦してくれたんです。

茂木:それがいつくらいのことですか?

羽賀:2年くらい前ですね。

茂木:私も拝読させていただいたんですけれど、素晴らしいですね!
まず、このキャラクター達のビジュアルって当然原作には十分書かれていないじゃないですか。どうされたんですか?

羽賀:まずは、当時の中学生ってどんな感じだったんだろうっていうことを編集者を通じて資料を集めてもらって、写真を見たりしたんです。
最初は、坊主頭のコペル君を描いてたんですけど自分のキャラクターとして生き生き動いていきそうな感じがしないと言うか。
わりと感覚的な部分でメガネをつけて、当時ではないような髪型にして…っていう風に描いていきましたね。

茂木:やっぱり、キャラクター作りはかなり苦労されているんですね。

羽賀:より正確に史実を描かないといけない部分もあるんですけど、ある種、漫画としてはそこを度外視しても、こういうキャラクターにしたいと思って描いた部分はあります。

茂木:漫画化されたことで多くの方が読みやすくなっていると思うんですけど、感心したのが、原作の風格とか格調とかがそのまま受け継がれているところがすごいな、と思いました。
原作もそうですけれど、本格的な教養とか知識や知性が身につく漫画になっていますよね。

羽賀:本当ですか。嬉しいです!

茂木:ネームって言うんですか、コマ割りもすごく考えられていますよね。かなり苦労されましたか?

羽賀:そうですね。前半部分が一番直した回数でいうと多いです。そもそも、最初は設定を変えちゃったりしていて。
「叔父さん」というキャラクターも血縁関係のある叔父さんではなくて、たまたまデパートの屋上で出会ったおじさんとして話が始まったり、変えて描いていたんですけど、やっぱり原作が持っている磁力というか、ピタッと戻ってきちゃう部分があって。
ここは変えない方が良いなと思って戻したんですけど、原作通りの始まり方ではないので、どういう風に順番を入れ替えたりすると、次のページをめくりたくなるんだろう、っていうのは考えましたね。
叔父さんとコペル君の距離感を掴むまでに時間がかかりました。

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──コペル君と自分を重ねて

茂木:原作を読んでいる中で、どういう所が一番心動かされましたか?

羽賀:やっぱり、叔父さんの言葉には”そういう考え方をしたことがなかった!”って思う言葉もたくさんありましたし、
コペル君が苦しみを感じている時に「君は正しい方向に進もうとしているから苦しいんだ」っていう言葉が僕はすごく印象的だなあ、と思って。
一番良くないのは、間違った方向に進んでるのに痛みを感じていないっていう状況がきっと良くないんだろうな、と思うんです。
でも、コペル君が苦しんでるっていう事は何とか正しい道にもう1回進もうって思っているからこその苦しみなんだ、っていう考え方は、”なるほど!”と思いましたね。

茂木:お話を伺っていると、羽賀さん自身が色々考えたりするのがお好きな方なのかなって思うんですけど…。

羽賀:僕も、わりとコペル君に共感する部分が多いんです。
僕自身も母子家庭だったっていうこともありますし、”なんでこんなことしてしまったんだろう”っていう経験が小学生の時にあって、その重い記憶が鮮明に蘇ってくるような部分もありました。
吉野さんの考え方や思想の部分をなるべく理解しようとして作品を作ったっていうところあるんですけど、キャラクターに自分の気持ちがちゃんと寄り添えるかどうか、っていうところが漫画家としての仕事だなぁと思ったので、そういう意味ではコペル君と自分を重ねながら描いたところは強かったと思います。

茂木:お母様が途中でとても素敵なことを言われるじゃないですか。すごく素敵なお母さんなんですけど、羽賀さんのお母さんのイメージとかと重なっていますか?

羽賀:どうですかね…(笑)。どちらかと言うと、僕の母は叔父さん的な感じですね。

茂木:そうなんですか!?

羽賀:先ほど話した、”なんでこんなことしてしまったんだろう”っていう経験の一つとして、小学生の時に消しゴムをいじめられていた子に貸したんです。
そしたら、いじめっ子が駆け寄ってきて「この消しゴムにはバイキンがついたから、今すぐ捨てろ」って言い寄ってきて、僕はそれに反論できずに消しゴムを捨ててしまったんです。
それが僕の中で抱えきれなくなって、母親に言った時にすごくガッカリされたと言うか、厳しく言われたんです。
自分の意見をしっかりと言えるようにならないといけない、ってことを母から言われた記憶がすごく蘇って。
僕の人生の中では、色んな人がコペル君にとっての叔父さん的な存在として、その役割をしてくれたかな、っていうのはあります。

茂木:「後悔していても、悩みながら少しでも良い方向に行けばいいんだよ」って温かく背中押してくれるところがこの作品の魅力だな、と思うんですけど、羽賀さんご自身がそういう経験があったんですね。

羽賀:そういう経験って誰しもがあって、それを引っ張り出してくれるのが原作のすごさというか、魅力だな、と描きながら感じました。

茂木:今、原作が羽賀さんの手元にあるんですけど、相当読み込まれていますね!

羽賀:全部を漫画にしたら大変なページ数になってしまうので、どこをカットして、どういう細かい演出を足していくと原作の世界観やキャラクターの印象を変えずに成立できるだろうかっていうところで悩みました。

茂木:産みの苦しみは相当だったんですね。

羽賀:でも、進行としてはかなり遅れてしまったので、そこは申し訳なかったですね。
この作品を作るきっかけとなった原田さんが昨年の暮れに亡くなってしまって、この作品を渡せなかったっていうのも心残りではあります。

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「【マガジンハウス】漫画 君たちはどう生きるか」

「羽賀翔一・オフィシャルサイト」

「【公式Twitter】漫画 君たちはどう生きるか」

来週も引き続き、漫画家・羽賀翔一さんをお迎えしてお話をうかがっていきます。
どうぞお楽しみに。
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