『Orico presents FIELD OF DREAMS』では、夢を叶えた方、今まさに夢に向かって突き進んでいる方をゲストに迎え、その人生のターニングポイントに迫っていきます!
今週お迎えするのは、落語家の春風亭一之輔さんです。2012年入門から11年。21人抜きの大抜擢で真打に昇進されました。
ナオト・インティライミさんのミュージックビデオに出演されたり、ユニクロのコマーシャルに起用されたりと、さまざまな分野から注目を集めています。
●意外性のなかに
川田「意外だったのが、高校でラグビー部を選んだんですか?」
一之輔「中学校までバスケットをやってたんですけど、ゼロから始められる様なスポーツがないかなと思って。「スクールウォーズ」が好きで、県でもベスト8に入るくらい強い学校だったんですよ。
でも、やっぱりラグビーの練習って厳しいんですよね。元日から練習はあるし、当時は熱中症っていう言葉がなかったんですよ。日射病と言ってたんですよね。日射病になると水が飲めるから、日射病になりたくて一生懸命やってた。本当は真似しちゃ駄目ですけどね(笑)」
川田「厳しくて辞めたいと思ったんですか?」
一之輔「30人いた
1年生が8人になって、『よし!辞める!』と。辞めないと、何も拓けないという気がしたので」
川田「辞めるのにも、勇気がいりますよね」
一之輔「最後に残った8人なので、残りの7人が家に来てくれて。おふくろが『友達来てるけど!みんな辞めるなって言ってるよ!』って、外の門から『おい!頑張るって言ったろ!戻ってこいよ!』と、友達が言ってて、おふくろに『いないと言ってくれ』って(笑)」
川田「そこで普通、『もう一回やるぞ!』ってなったのかなと思いました(笑)」
一之輔「ここで、情にほだされたら駄目だと、断つものは断たないといけないと思って。そのまま出て行って、『ごめん、辞めるわ』と言って、辞めたんです」
川田「辞めると、急に時間が出来ちゃいますよね」
一之輔「ずっと部活でしたから、何もやることが無いんですよ。ぼーっと電車に乗って、浅草に行ったんですよ。そこでブラブラしてたら、「浅草演芸ホール」の、のぼりがあって。入場料はそんなに高くないんですよね。聞くと、昼の部から夜まで、ずっといられるというので入って。周りがじじい、ばばあばかりでしたね(笑)」
川田「そんな中、高校生なんていなかったんじゃないですか?」
一之輔「詰襟を着て、学生服でね(笑)」
川田「すごい目立ったんじゃないですか?」
一之輔「ものすごい浮力で浮いてましたね。周りは団体のおじいさん、おばあさんばかりで。お弁当食べたり、おせんべい食ったり、落ち着き無いこと、この上ないですよ(笑)。
最初は、『なんだよ、ちゃんと聴けよ』と思ったんですけど、いろんな人が出てくるんですよね。昼の部だけで、20組くらい芸人さんが出て来て、さっきまで落ち着きの無かったじいさんばあさん達が、だんだん吸い込まれるように前のめりになってくるんですよ」
川田「なるほど」
一之輔「最後に、トリがでてくるんですよ。私が見たのは、春風亭柳昇師匠でした。「カラオケ病院」というナンセンス極まりない新作落語を、滑舌の悪い柳昇師匠がやってると、さっきまで落ち着きの無かったおじいさん、おばあさんが、”わーー!”っと拍手して。
こんなに緩いんだけど、みんなが楽しめる空間は初めてで、これは面白いもの見付けたぞと思いました。それから寄席に通うようになったんですね」
●情熱を燃やす
川田「生の落語に出会って、そこから一之輔さんにはどんな変化が起こるんですか?」
一之輔「学校に部室棟というのがあったんですよ。部室が集まってる、プレハブみたいな所で。そこに一つ空きがあって、先生に『あれなんですか?』と聞くと、「落語研究部」というのが昔あったんだけど、20年くらい誰もいないと言われて、『落語好きになり始めたので、落語研究部やりますよ』と言うと、鍵を貸してくれたんですよ。
そこに、20年前の先輩が置いていった落語の本やテープ、座布団、速記本、着物とか帯が散乱してたんですよ」
川田「それは、宝庫ではあるわけですね」
一之輔「これは良いなと思って。掃除して、一人でやるのが嫌だなと思ったので、隣の席のたかぎ君という友達がいたんですよ。『落研というのをやろうと思うんだけど、どう?』と聞くと、『落語とか興味ないから』と言うんですよ。たかぎ君は生物部の部長だったんですけど、浮いてたんですよ。部長なのに、折り合いが悪かったんですね(笑)。
それで、『いいよ、川上とやるよ』となって、一緒に掃除しましたね。僕は先輩が残していったテープで覚えて、たかぎ君は落語に興味がなかったので、覚えたのを聞かせるっていうね(笑)」
川田「たかぎ君は、それが良いのか悪いのか分からないんですよね?(笑)」
一之輔「分からない(笑)。たかぎ君は漫画を読みながら、ポテトチップスを食いながら聞いてるんですよ。『どうだった?』と聞くと、『よく覚えたね!』と、若干上から目線ですよ(笑)。ブルペンしかない野球部みたいな感じでしたね」
川田「よく、もう一度『落語研究部』を作ろうと思いましたね」
一之輔「何か情熱を傾けるものが欲しかったんでしょうね」
川田「それで、日本大学芸術楽部に進学をされたんですよね」
一之輔「落研があったので、吸い寄せられるように入っちゃいました」
川田「大学の落研と言うと、レベルも高いんじゃないですか?」
一之輔「ま〜、その時の落語人気というのは、底を這う様な、モテない君達がやるジャンルであったみたいですね」
川田「じゃあ、メンバーの中でも、面白い人がいたりしますよね」
一之輔「何故か、坊主頭の女の人がいましたね。『楽だから』と、見た目よりも機能性を重視していました。みんな”落語が大好き”というよりも、社会からあぶれちゃった人が集まっていました」
川田「ちょっと個性的な方が多いんですね。一之輔さん自身は、どんどん落語にハマっていったんですか?」
一之輔「そうですね。寄席に通って、池袋演芸場や新宿末廣亭とか、大学の頃によく行ってましたね」
川田「当時は、どんな噺家さんが好きだったんですか?」
一之輔「まず寄席にハマって、そのあと談志師匠にハマりましたね。お金払って客席座っているのに、ビビりながら聴いてるんですよ(笑)」
川田「怒られてる様な感じがしますからね」
一之輔「変なところで笑ったりすると、『今、面白い話じゃないんだけど』みたいなことを言われて、怖いなと(笑)。そういう個性というのは初めて接しました。やっぱりスターですよね」
川田「噺家さんにも色んなタイプがいらっしゃって。きっとそれぞれの個性、オリジナリティを求めていくんだと思いますけど、趣味である所から、生業にして行こうと変わっていくのは、どういうきっかけだったんですか?」
一之輔「当時は就職氷河期もいいところで、諦めムードが漂っていました。落語が好きだし、他で働くのも向いてない…。気が乗らないから、このまま落語家になろうかなと思いながら卒業だけはして。春になったら落語家になろうと思っていましたね」
>>来週も引き続き、春風亭一之輔さんに第2のターニングポイント、そして、これからの夢についてお話を伺います。