今週は東北・宮城県沿岸部にある人口6800人ほどの小さな町、女川町で始まった、地元の木材を使ったギターづくりのお話です。
東日本大震災からまる5年が経過しようとする中、女川町では、地元の若い世代が中心となった街作りが進んでいます。去年の年末には、女川駅前から海へと延びるプロムナード、それを囲むように大きなショッピング施設、シーパルピア女川も完成。そんなシーパルピア女川の一角に製造販売を行うギター工房「GLIDE」があります。この工房を構えた梶谷陽介さんにお話をうかがいました。

 ここがギターの生産を行うGLIDEガレージという建物です。本当に素敵な建物ですね。ここが女川の文化を発信していく場所になるっていうのはやっぱり強く感じましたね。ですので、ここで音楽文化を発信していきたいし、町外県外から訪れる人を惹きつけられるような場所にしていきたいなというのは改めて感じましたね。
 震災が起こったとき、私は東京の大手楽器小売店で販売を担当していたのですが、楽器店としてできることはないかなというのを考え、現地に行って回ってる中で、中高生バンドとかダンスに頑張ってる中高生があんまり一流の場で自分が演奏したりとか、もしかすると一流のものに触れるっていう機会が非常に少ないなと思いました。そして、東京の大会に彼らが出れる仕組みを作ることができたんですけど、でもあの彼らがそこで大きくなってもどうせ都会に行ってしまうんだな、と思ったときに、やっぱり彼らが残れる産業が地元にないといけないんだなというのを感じました。それで産業を作って、なおかつ音楽やダンスの文化的な面でも地域の発展に貢献できる事業は何があるんだろうなっていうのを考えまして、それでギターの製造販売をやることにしました。じゃあ実際どこでやれるかなっていうことで場所を探し初めまして、そこで紹介されて来たのが初めてですね女川は。
 この女川得意の官民連携の仕組みが色んな事業がどんどんスピーディーに行われているっていうのは聞いてまして、全く新しい事業だったので受け入れてもらえるか非常に最初心配もあったんですけど、町長が「是非やろう。」と言ってくださっいました。
 女川は人口が今7千人くらいなんですけど、人口に対して音楽に対する熱量がすごい高いなと思いましたね。やっぱり音楽に関心が高い人が多いところの方がギターを作るうえで盛り上げていけるんじゃないかなっていうのを感じましたね。
 町長はメタラーですね。大のメタル好きで、ギターナイトっていう飲み会をたまに開かせてもらって、そこに町長も毎回来てくれて、ギターを弾きまくるっていう。すごい速弾きとか、非常に楽しい会を開いてました。


ということで、2014年3月に女川を訪れた梶谷さん、若い町長の即断即決で、すぐに活動を始めます。
 当時の女川はかさ上げ工事などもあったため、まず、東北・仙台に「国産エレキショップ・グライド」をオープン。女川でギターを作り、仙台で販売できる環境を作りました。実は仙台って、ギターキッズがたくさんいるのだそうです。
 そして今月12日。女川のギター工房では、「女川ギター」の第一弾モデルの発表会も行われ、いよいよ、本格的な生産がスタートすることになります。

 斬新かつ、クオリティが高いギターという、このふたつをしっかり押さえた良いギターを作りたいなと思ってますね。クオリティということには、素材の良さと木工技術の高さっていうそのふたつをギターに入れ込みたいと思いました。材料に関してはできるだけ近場の木を使いたいと考えていまして、東北の木を使っていくんです。元々日本で作るギターの大半は輸入材なんですが、大量に輸入した中から選定するというのではなく、伐採の段階から選定してクオリティ管理された木材を使うっていう発想なんです。それは木を伐採から乾燥、加工までの段階でできるだけコントロールされた材を使いたいというのがありまして、例えば生えてる場所、木をカットする段階でどの部分に使うっていうのを想定したうえで、どういう年輪の入ってる場所を使うとかですね、木の表裏をどう使うとかっていうところを、カットの段階から想定しながら使っていけるので、その場所に適した木材っていうのをギターに使っていけますね。結果それがクオリティを上げると考えています。
 南三陸は杉が有名ですので、ボディトップの装飾などにその杉を使えないかなというのを考えてます。杉は柔らかいので全部丸々には使えませんが、その柔らかさを質感っていうところで部分的に活かせるんじゃないかって考えてまして、例えばボディの表面に杉を薄く貼って木目を活かすとか、そういう部分部分に使っていきたいなと考えていますね。
 あとは今メインで試作をしているのがヒノキ、あとはホウノキ、ハンノキやカエデですね。ミズナラという木が女川に生えていると聞きまして、それが使えるなら使いたいなと思ってますね。ミズナラの木は非常に硬く、万能な木と言われてまして、高級な家具やウイスキー、ワインの樽などに使われるのがミズナラです。
 日本のミズナラは明治時代にはほとんど伐採され尽くしてまして、東北にももうほとんど残ってないんです。明治以前は大量に日本にも生えていた品種なんですけど、ほとんどが家具や樽用として伐採されて今ほとんどない。それがもし使えるなら是非使ってみたいなと思ってますね。
 やっぱりギターは木が本当に重要なので、木のことをしっかり知らないと良いギターは作れないですね。ギターは製造工程のほとんどが木工なんです。木を扱う仕事ですね、ギターを作るっていうのは。
 この事業を始めるにあたって、いろんな国内の有名なクラフトマンに話を聞きに行ったり、木材業者さんにも話を聞きに行ったり、とにかくいろんな人に話を聞いて自分なりに知識を深めていきました。


ご実家が農家で、周りに山がいっぱいある環境に育った梶谷さんは、日本のスギ材が安いことを、ずっと問題だと思っていて、スギにもっと価値をつけられれば、と思っていたそうです。
そして、ギターづくりで試行錯誤を続ける中、国産材でもしっかり良い音と強い強度を持つギターが作れることを確信したと言います。

 ギターに使う木材は、寒くて成長が遅い地域のものが良いとされてまして、アラスカやカナダの木はすごい良いとされていますね。あと南米の木材もギターには良いとされていまして、今まで日本の木がいいっていう話はありませんでした。そんななかで良さをしっかり伝えていくっていうのはなかなかチャレンジなことだと思うんですけど、でも絶対良さはあると思いますね。やっぱり東北、日本の北の部分っていうのは寒くて成長が遅い分だけ密度も濃くなるというメリットはありますね。

今回のお話いかがだったでしょうか。梶谷さんのお話はポッドキャストでも詳しくご紹介しています。こちらもぜひお聞きください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・恋のかけら / 奥田民生
・Thinking Out Loud / Ed Sheeran

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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