• 2014.11.30

森林セラピー3

さて、先々週からお届けしてきた『森林セラピー』のお話。今回で最後となります。
森には、目で見る効果、匂いの効果、触って感じる効果、それぞれにリラックス効果があるんですね。実験では、観葉植物の鉢植えを3つほど置いただけでも、副交感神経が活発になってリラックスできることが分かっているそうです。。
とはいえ、森の効果は人それぞれ個人差があって、自分の体質・好みに合う「マイフェイバリット森」を探すのが、森林セラピーを上手に取り入れるコツ。先週はそんなお話でした。
そしてこうした森の効果を、森林セラピーという形で活用することが、日本の抱える大きな問題の解決にもつながる、かも知れないんです。
千葉大学の「環境健康フィールド科学センター」副センター長で、医学博士でもある宮崎良文さんのお話です。


◆森林浴は未病の人に効果が
例えば森に来てる人が病気になりにくいというようなことがわかってくると、医療費削減というような具体的な提言ができるんじゃないかと考えています。
効果という観点でいうと、病気予備軍の”未病”状態の人に一番効果があるんです。そういう人たちは、森に入ると大きくリラックスするということがわかった。もちろん極端なことをいうと、癌になってしまった人が森に行って治るってことはないですよ。病気は病気で治さなきゃいけない。だけれども、例えば免疫機能が下がってきて、癌になりやすくなっている状態の人たち、そういう可逆性がまだある人たちや、世の中今ストレス状態の人たち、そういう人たちにすごく大きな効果があるということは、我々、研究家はわかってるんですよ。



つまり、免疫力が下がっている人が森にいくと良い効果があるんですね。
そして、いまも森の効果を研究し続けている宮崎さんに最新の研究についても教えていただきました。


◆森には血圧を正常にする効果も!
最近の我々の研究の中で、ポイントになる研究成果が出てきました。それは血圧です。森と都市を比べて、15分間歩いた後に、歩く前と歩いた後の比較をしたんです。森のなかを歩くとリラックスするわけですから、血圧は下がると思いますよね。だけど調べてみると、下がる人もいれば上がる人もいてね、もうバラバラなんですよ。そこで、詳細に分析していくと、血圧が元々高い人もいれば、元々低い人もいるっていうことがわかりまして、横軸に高い人低い人って順番に並べたんですよ。そうすると、元々血圧が高い人は下がって、低い人は上がるってことがわかったんです。
要するに、単に高血圧の薬のように血圧を下げるだけの効果じゃなくて、高い人は下がるんだけれども、低い人は上がって、調整効果があるってことがわかりました。それがここ1年の我々の最も大きな発見なんですよ。これは僕もびっくりしました。
要するにもっと言うと、ストレス状態の人に効果があるっていうことなんだけども、血圧一般的にいって、我ストレス状態の人っていうのは血圧が高いっていうイメージです。だけど実際は、低すぎる人もストレス状態なんです。だからストレス状態を改善して、調整してるっていうことが森の効果なんです。同じ人たちに実は都市も歩くっていう比較実験もやってるんですが、都市を歩いた後は全く効果がない。同じ人が歩いてですよ。だからこれは森が持ってる効果ですよ。



これは最新の研究で分かったことなんだそうです。しかもこれは宮崎さんをはじめとした、日本独自の研究成果としてわかったこと。いま宮崎さんは、こうした研究成果を世界へ発信していきたいと話しています。
そして実はすでに、森林セラピーを実際に体験できる「森」が、国内にいくつもあるんです。それが「森林セラピー基地」です。


◆森林セラピー基地
森林セラピー基地は約60カ所認定されています。NPO法人森林セラピーソサエティというところが認定をしているんです。自律神経活動とかストレスホルモンなんかを計って、実際に効果があるとわかったら、それを中心に、それぞれの森が持っている歴史とか文化とかおいしい食べ物だとか温泉だとか色んなものを上手く作ったストーリー、メニュー作りをしてもらうんです。あとは病院があるとか、宿泊施設があるとか、そういうハード面もやってもらって、そういうものをデータと、ソフト面、ハード面の3つで認定するんですね。
例えば長野の赤沢自然休養林。あそこは「森林浴発祥の地」と、1982年に森林浴って言葉ができたときに自分で宣言して、訪れる人は最初8万人くらいでした。その後、鉄道が整備されて12、3万人になって、森林セラピーに認定されて15、6万人まで人が来るようになって、非常にうまくいっています。森自体が非常によく整備されて、手入れも行き届いているんです。あそこには木曽病院という病院がありまして、これは長野の県立で一番大きい病院ですが、そこにはすごく熱心に森林セラピーをやっておられる先生がいて、病院ともリンクしてやっているという、そういう特色も出してるんですね。



千葉大学「環境健康フィールド科学センター」副センター長で、医学博士でもある宮崎良文さんのお話し、3回に渡ってお届けしましたがいかがでしょうか。
ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!


【今週の番組内でのオンエア曲】
・蓮の花 / サカナクション
・Barbara Allen / Billie Joe + Norah
今週も引き続き、私たちが森の中で不思議と癒される効果を、医学的に研究して、私たちの生活に生かそうする試み、『森林セラピー』のお話です。
すでに、かなりの部分で、医学的に裏付けが取れていることが先週のお話で分かりましたが、きょうはより具体的な「森の効果」に迫ります。
千葉大学の「環境健康フィールド科学センター」副センター長で、医学博士でもある宮崎良文さんにお話しをうかがいました。


◆森林浴の効果
実験結果の解釈としては生理的にリラックスしているということがわかりました。脳の活動においては前頭前野という部分を計っています。おでこのところですね。この前頭前野というのは非常に高度な価値判断をするところなんですけれども、例えば暗算なんかをすると活動が増えます。人がリラックスするとその活動が沈静化するということなんですが、森にいたときと都市にいたときを比べると、森にいたときの方が都市にいたときよりも脳が沈静化してるということがわかりました。要するに脳もリラックスしているということですね。
それと同時に心拍の揺らぎを計測すると、リラックス状態で高まる副交感神経活動が都市に比べて2倍程度まで高まるということがわかりました。逆にストレス状態で高まる交感神経活動は下がるということもわかったんですね。さらにストレスホルモンの濃度が12%程度下がるんです。
また、NK細胞活性というものを計測しました。NK細胞とはナチュラルキラー細胞といいまして、これが下がってくると癌になる確率が高い、あるいはインフルエンザになる確率が高くなります。これが2泊3日の森林浴、森林セラピーで改善するってこともわかったんですね。
こういう科学的データというのは2種類の取り方がありまして、ひとつはフィールド実験といって実際に森に行って計測する。森に行くと色んな刺激を受けるわけですよね。においもあれば見た目の美しさもあれば、音もあるし、五感を介して影響がある。
もうひとつは室内実験と言いまして、人工気候室と呼ばれる場所で、刺激を変えてやるっていう実験です。部屋の中で森の風景を見るとか、都市の風景を見る。それからフィトンチットとよばれているものを実際に嗅いでみるっていう実験もすることができる。あとは小川のせせらぎ音のようなものを使って音の刺激、聴覚刺激だけを受けるってこともできるんですね。
そういう実験をやってみるとですね、各刺激、ひとつひとつの刺激全て効果がありますし、トータルでのフィールド実験でも効果があるっていうのが、まず大きな結論です。



つまり、森を構成する「要素」それぞれにも、効果があるということなんですね。例えば宮崎さんは、森の中を流れる小川のせせらぎのCDを聴かせる実験もしているのですが、やはりこれも脳をリラックスさせる効果があったそうです。つまり「森の音」を聴くことも、意味があるんです。
そしてさらに!森の木に触ったり、木登りをしたり、もっと言えば、お家の家具や柱の木材に触れることでも、同じ効果があることが分かっているんです。


◆木の触感にも効果がある
木材を触るっていう実験をやりました。人工物のツルツルしたもの、金属、まったく塗装していない無垢の木材、それからあと、ポリウレタン塗装といって、見た目は木材だけどツルツルなもの。そういうもので実験をしました。
そうするとですね、デコボコ感というか木目が残ったものを触ると、人っていうのはリラックスするんですよ。しかし木材でもポリウレタン塗装でツルツルにしてしまうと、金属と変わらない結果になります。これはね、せっかくの木の良さを塗装することによって消しちゃってるんですよね。



目で見る効果、匂いの効果、触って感じる効果。それぞれ、意味があるというお話でしたが、では、どれがいちばん癒しの力を持っているのか。これも聞いてみました。


◆森林浴の効果がいちばん高いのは?
よく質問されることとしては、どの刺激が一番効果があるのかということがあります。匂いなのか、見た目なのかね。そういう質問を受けるんですけれども、これの答えとしては、実際に被験者として測定された人が何に興味があるかとか、何が好きかとか、自分にとって一番気持ちいいものは何かということで変わります。例えば匂いに興味がある人もいれば、音に興味がある人もいるんですね。そういう自分の価値観に応じて変わってきます。ものすごく大きな個人差がありますね。
これからやらなきゃいけない快適性研究っていうのは、個人の好みに応じてどういう効果があるかってことなんですね。森林浴といっても、森林が嫌いな人もいます。スギ花粉症なんで、もうイメージとして森を見るのも嫌だっていう人もいます。あるいは森はどこに行っても気持ちがいいっていう人もいるんですね。もっというと、広葉樹の紅葉が好きな人もいれば、ヒノキとがスギの森がいいっていう人もいます。それから公園のような小さな自然、木のテーブルだとかそういうことを含めた小さな自然までので、色々な好みがあるんですね。
実際に森に行くときには、自分の好きな森がどういう森なのか自分で探すっていうのがいちばん効果的な森林セラピー法なんですね。my favorite 森 だったり、my favorite 公園 だったり、my favorite 家庭菜園だったりね。自分の好きな自然を自分で見つける。それがまず第一ですね。



今週のお話しいかがだったでしょうか。この模様はポッドキャストでも詳しくご紹介しています。こちらもぜひお聞きください!


【今週の番組内でのオンエア曲】
・Everyday Is A Winding Road / Sheryl Crow
・楓 / スピッツ
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