先週に引き続き、まもなく全国公開がスタートするドキュメンタリー映画『うみやまあひだ』の宮澤正明監督のインタビューをお届けします。
20年に一度、社殿・お社をすべて作りかえる伊勢神宮の式年遷宮。1300年前から続くこの儀式には、たくさんの「御用材」と呼ばれる木材が必要となります。映画『うみやまあひだ』では、2013年に行われた式年遷宮とその御用材のルーツについても取材。
一昨年の遷宮に使われた木材は、どこからどのようにやってきたものなのか、映像とインタビューで伝えています。


◆御用材のルーツ
元々は宇治山田とか、伊勢神宮の裏にある宮域林、御山(みやま)からとっていました。しかし鎌倉時代あたりにその木がだいぶ少なくなったんで、いま植林して森を育てています。ただ、あと100年後とか、200年後を目指しているので、それはそれですごい話なんですけれども、ですからいまは木曽からほとんど御用材をいただいています。ただ、伊勢神宮も森を育てていますから、そのかいあって今回の式年遷宮では20パーセントくらいは御山からの御用材を使っていると聞きました。ただ、2〜300年、400年の大きい木になると、あと100年、200年後の話ですから、もう少し時間がかかるということで、その間は木曽から木をいただいているということですね。


この番組でも、一昨年、伊勢神宮の鎮守の森「神宮 宮域林」を管理する営林部の倉田克彦さんを取材しましたが、実に年ぶりに、七百数十年ぶりに宮域林で育てた木材が遷宮に使われたんですよね。
ただ、宮澤監督のお話に合ったように宮域林から取った御用材は全体の2割。それ以外は長野県・木曽の山中で育てられた桧です。
式年遷宮の準備が始まるのは、遷宮の八年前。木曽の山中では、どんなことが行われるのでしょうか。

◆木が「鳴く」
御神木を切る御杣始祭(みそまはじめさい)というのが、山口祭のあと平成17年の春にあるんですよ。それは木曽の山中で内宮と外宮の一番太い柱、棟持柱(むなもちばしら)になるところを切って、伊勢の方に運んでいくという行事で、昔ながらの川曳きとお木曳きをします。御神木をみんなで縄を持って曳く行事、それを伊勢の神領民という、伊勢に住んでいる方々が伊勢神宮の神域まで運ぶという行事なんですね。
木曽は木曽で、木を切って木曽の山から運んでくるというお祭があります。そして次の街に行って、またそこでもお祭りがあるという、とにかく御神木が移動する度にお祭りをやって伊勢に行くんです。
三代続いている、木曽の池田木材店の社長である池田さんが言っていますが、やはり御神木ですから、木を倒すとか、切り倒すという言い方はしないんです。木を寝かすという言い方をします。そして、木は倒すときに「鳴く」らしいんですよ。つまり「鳴いて寝る」。何百年も育った木を切り倒して、またそれを使うわけですから、ひとつの死でもあり、また次はぐぐむ生という意味もあります。
切り倒した木のところに、その木の枝を差す行事があるんですよ。切り株の上にまた木が育つという、再生を意味するお祭りなんですけれども、そういうことをふまえると、自然とか木に対する尊敬の念、感謝の念というのは木曽の方でも伊勢の方でも、みなさん持っていると思いますね。


そしてこの映画には、伊勢神宮と 対比する形で、やはり1000年以上の歴史を誇る、日本の歴史的建造物が登場します。
それが奈良の法隆寺です。

◆1300年守り続けてきた法隆寺と、20年に一度建て替える伊勢神宮
『うみやまあひだ』のなかでインタビューしている小川棟梁は、元々は法隆寺の伝説の棟梁、西岡棟梁の愛弟子さんなんです。なぜ伊勢神宮の宮大工ではなく、法隆寺の宮大工の方にインタビューしたかというと、法隆寺というのは1300年改修を続けながらお寺を守ってきたという、建てたときから1300年変わっていないわけです。しかし伊勢神宮は1300年の間、20年に1回新しくつくりかえて変わってきたという、そういうことがありますよね。その差はなんなんだということを聞きたくなったんですね。1300年継続してきた宮大工さんに話を聞いてみようということで、小川棟梁に話を聞いてみたんです。
1300年守っていくのも、20年に1回建て替えるのも、木に対する愛情は一緒でしたね。「木を育てないと人も育たないし、人がいくら育っても木がなければだめだから」というお話しはすごく心に残りました。
言葉で印象的なことは、映画でも言っていましたが、いちばんはじめの一年間、とにかくなにも情報を入れるな、ということ。とにかく自分の道具であるノミをずっと1年間削りなさいというんですね。要は本当に自分が大切にする道具を一年間磨き続けることによって、今度は自分が作るもの、触れていくものを決して粗相にしないということを理解する。まず自分が使っていく道具を自分のものにしていかないとだめだから、一切横を向くなと。余計な情報を入れないというのはすごく勉強になりましたね。


法隆寺の宮大工さんの名前は、小川三夫さん。神社仏閣専門の棟梁で、日本一の宮大工と言われる方です。
小川さんは映画の中で、こんな言葉もおっしゃっています。

「千年の木は、千年もたせろと。それが恩返しでしょうな。」

千年かけて育った木で作られた建物は、丁寧に修復を重ねて、もう千年もたせることが、恩返しなのだ、ということ。
そして、映画「うみやまあひだ」では1000年以上前からの技術を受け継ぐ宮大工さんの言葉だけでなく、現代を代表する建築家の方の言葉も紹介しています。

◆ずっとさきの未来を考えていまを生きる
『うみやまあひだ』には建築家の隈研吾さんにもご出演いただいています。
むかしは身近に森があったのに、いまは都市化によってなくなってしまっているから、森という存在自体を忘れてしまっている。そこへ式年遷宮や東日本大震災のような、千年単位のことでいろいろ気付かされることがあった。やはり、もっと何百年単位、千年単位できちんとものを考えないといけない。伊勢神宮はそういう部分では、100年、200年後の森を育てているわけで、ずっと先の未来のことまで考えていまを生きているということの大切さ、というのを隈研吾さんがおっしゃっていたのがすごく印象深かったなと思いますね。


今日のお話いかがだったでしょうか。
ポッドキャストでも詳しくご紹介していますのでこちらもぜひお聞きください。

映画『うみやまあひだ』は1月31日より、三重県明和109シネマズを皮切りに全国劇場公開がスタートします。
詳しくは『うみやまあひだ』の公式ホームページをご覧ください。

【今週の番組内でのオンエア曲】
・朝日 / ケツメイシ
・やさしさに包まれたなら / 荒井由実
今週は、伊勢神宮とその鎮守の森を中心に森と人間の共存をテーマにしたドキュメンタリー映画「うみやまあひだ」の話題です。

実はこの映画、ビートたけしさん、建築家・隈健吾さんも出演。さらにこの番組でもおなじみの「森の賢人」の方々も 数多く登場していて、それぞれが様々な視点で、森と人間の関係を語っているんです。
この映画の監督は宮澤正明さん。ファッション・広告、女優・ミュージシャンの写真集を中心とした写真家です。2004年からは伊勢神宮の式年遷宮の記録を撮影する、奉納写真家として活動していました。
そんな宮澤さんが、静止画・写真ではなく、映画として発表する作品が「うみやまあひだ」。様々な角度から、日本人と森の関係を探ったドキュメンタリーです。
まず、映画制作のきっかけを伺いました。

◆伊勢神宮の森
伊勢神宮には二千年もの間培ってきた森との共存共栄という文化がありますよね。その後に千三百年続いている、二十年に一回の神様のお引越し、社殿を新しく作り変えるという式年遷宮があります。そのためには木が必要だし、木を植えなきゃいけないですから、森との再生とか、森とのコミュニケーションというのがそこにあったと思うんですよ。そういう部分は都会の生活をしていると忘れがちです。でも本当は日本人のDNAのように、点と点で結ぶものがあるんじゃないかなということから、人間と森との距離感、共存というのをテーマにした映画です。宮大工の方や植林をしている植物学者の方とか、いろんな方にお話しを聞いています。
熊野三山は自然崇拝のような宗教観があったんで、森を歩いていると怖さのようなものを感じますが、伊勢はどちらかというと森と共存するという感じを受けます。式年遷宮という、二十年に一回社殿を建て替えるために森を育成していく必要があって、循環再生型の森と共存していくシステムを伊勢神宮はもっています。ですから、植える木は桧ですが、その周りにも色々な木を植えるわけで、そういう意味ではすごくバランスがとれた森がつくられています。
むかしから日本国中には鎮守の森というものがあります。日本人は生活で木を切ったかわりに必ずその森を再生してきたという歴史がありますよね。そういう部分が伊勢神宮の森に通じるものがあって、すごく面白いなと思いましたね。



奉納写真家として、そして映画監督としてカメラを手に何度も伊勢神宮の神宮宮域林に足を運んだという宮澤監督。
そこで、どんなことを感じたのでしょうか。

◆肌で感じる森
伊勢神宮の森は夜に行っても、暗闇の中は多少怖さは感じますけれども、川の流れにしても木のせせらぎにしてもすごく神秘的というか、汚れない、清められた闇なんじゃないかなと思って、熊野で感じたような怖さはなかったですね。
「うみやまあひだ」にも出演している、脳科学者で作曲家の大橋力先生は伊勢の森で音をよく録られるそうですが、伊勢の森にはハイパーソニックサウンド、人間の耳では聞こえない、肌でしか感じられないサウンドがあるんだといいます。それはすごく心地がいい音で、先生の表現では、森が発する素晴らしいオーケストラがいるというんですね。我々の耳では聞こえないけれども、肌では感じる。それは心地いいということでしか表現できないんですが、アマゾンなんかでしか感じ得ないものであって、普通の森ではなかなかないものだそうです。しかし伊勢の森でそれを測ると、すごくハイパーソニックサウンドが非常に多いということに驚かれて、それを我々にいろいろ教えてくれました。
確かに参道を歩いているとみなさんおわかりになると思うんですが、すごく神々しいという以上にすごく気持ちが良いですよね。すごくホッとするというか、心が和らぐというか。
伊勢神宮を撮ったとき、ある神官の方が「宮澤さん、神様は無条件に空気さえも与えてくれているんだよ」っておっしゃいました。なるほどなと思いました。そういうことを気づかせてくれる森なんだなっていうのが、大橋先生の、ある種肌で感じる森というのにつながるのかなという感じがしますね。



このハイパーソニックサウンドというのは、高い周波数のため人間の耳では聴くことができないけど、でも存在する音のこと。お話に合ったように、耳では聞こえないけど、肌で感じ取り、人間の脳に良い影響を与えている、ということが分かってきているそうなんです。
そんな不思議な力を全身で感じながら、宮澤監督は森の中でゆっくり時間をかけて撮影を続けたと話します。


◆森と一体化する
光というのはすごく大切にしています。森の中は、光が通じなさそうですが、実は結構きれいに光が入ってきています。朝もやとか川の流れによって見え方が違ったりとか、雨が降っているときなんかは潤沢な潤いのなかで森がしっとりしていて、ぼくにとってはすごくいろんな表情をたくさん見せてくれるのが森です。その生きている感じとか、息吹などは、映画ではすごくよく撮れていると思いますね。
森に入って何日もそこで過ごすように歩いて、朝から晩までそこにいないと気づかないものがあります。東京にいて急に森に入ったところで、ああ気持ちいいな、清々しいなとは思うけれども、完全に自分と森とが一体化するには多少時間がかかります。大橋先生もおっしゃっていますが、やっぱり自分が森から感じる音というのはお酒を飲んでアルコールが効いてくるように浸透してくる。だから、森のなかで佇んで森を感じて、じっくり気配や風、木と木のこすれあいとか、小川のせせらぎとか、遠くから聞こえる小動物の声とか、そういういろんなことが感じれるようになってはじめてその森と一体化できる。そうなったときにゆっくりシャッターでも押してみようかなって思いますね。



宮澤正明さんのお話しいかがだったでしょうか。
「うみやまあひだ」は1月31日より、三重県明和109シネマズを皮切りに、全国劇場公開がスタートします。
詳しくは『うみやまあひだ』の公式ホームページをご覧ください。

来週も引き続き宮澤正明さんのお話しをお届けします。
お楽しみに!


【今週の番組でのオンエア曲】
・Jamaica Song / ハナレグミ
・Tokyo Sunrise / Lp
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