今週も引き続き、日本の亜熱帯・鹿児島県 奄美大島からのレポートです。
今回の取材で参加したのは、奄美大島 名瀬にある原生林、金作原を散策するツアー。ベテランガイドの西條和久さんにお話しをうかがいます。

奄美大島を代表する原生林 「金作原の原生林」。この森を構成する樹木のほとんどは、イタジイというシイの木です。シイの木ですから、秋になるとシイの実、どんぐりを落とします。そしてこの大きなドングリはきっと鳥たちにとって、食べ応えがあって、とっても美味しいんでしょう。10月に本州から南下しきた鳥たちが、この森をエサ場にするのだそうです。実は、日本列島で確認される野鳥650種類のうち6割が、奄美で確認できるといいます。
ポッドキャストではこのツアーで聞こえてきた鳥たちの声もお届けしています。アカヒゲという赤くてとてもきれいな鳥や、オーストンオオアカゲラが木をつつく音、奄美にしかいないルリカケスという鳥の声などを聞くことができますので、ぜひ聞いてみて下さい。

西條さんはiPadで写真などを見せながら、森を案内してくれました。西條さんが立ち止ると、みんなも立ち止まり、じっと耳を澄ます。すると聞こえてたのが、トトトト・・・というキツツキの音、そして、国の天然記念物にもなっているルリカケスの鳴き声でした。ルリカケスはちょうどいま繁殖期だそうで、家族で木陰を飛び回る姿もみることができました!
そのほかにも、まるで尺八のような、フォーッという鳴き声も聞くことができました。この鳥はズアカアオバトという、くちばしがブルーで黄緑色の鳩です。

こんな風に、森のあちこちから聞こえてくる鳥たちの声に耳を澄ませていると、またも、ちょっと不思議な鳴き声が耳に入ってきました。ここで、冒頭でちょっと触れた、奄美で古くから伝わる妖怪「ケンムン」のお話が出てきます。

◆ケンムンの声
この声はアマミイシカワガエルです。夜行性のカエルなので、夜はっきりと鳴いてくれるんですが、今ちょっと曇ってきたので、奥の方で小さく一声だけ鳴きました。普段は、岩と岩の間の苔むしたところにいて、擬態しているのでよく見ないと見つけられません。
夜の山の中でこの鳴き声を聞くと、闇の中から『オイ』と叫び声のような感に聞こえたりするんです。ですから昔の人はよく『誰かに呼ばれた!』なんて言ってましたけど、実はこいつの鳴き声です。
奄美にはケンムンっていう妖怪がいます。ケンムンの『ケ』とは、奄美の方言で木のことで、『ムン』は者。だから木に住んでる者という意味です。ですから、ガジュマルの木のように巨木になる木は、島の人はむやみやたらに切り倒したりしないんです。



「ケンムン」は沖縄では「キジムナー」と呼ばれていて、妖怪の一種です。本州だと、「カッパ」が、これに近いと言われています。
奄美では古くから、「ケンムンがでるところには近づくな」とか、ケンムンを巡る様々な伝説、言い伝え、そして経験談が残っています。奄美の人々は、「自然」という大きな仕組みの中で生まれた言い伝えや風習、そして「暦」を、いまも大事にしているんです。

◆大潮の日には
この島はほとんどの行事が潮の動き、月の満ち欠けと密接に関わっていますので、絶対に旧暦を外せないんですね。旧暦の3月3日が、今年は4月の21、22日のあたりになるんですけれども、1日に2回満潮と干潮を繰り返します。夏場は昼間の潮の引きが強くて、夜の引きが弱いんですが、そのちょうど境目に来るのが、旧暦の3月3日なんです。これを境にして夏の潮の引きになってくるので、この島では昔から旧暦の3月3日の日は、昼から学校を休んで、仕事も休んで、お弁当を持って海に繰り出す日なんです。いわゆる海開きの日にあたるんです。潮が引くと、潮だまりに貝がいたり、魚が閉じ込められたりするんでそれを獲りにいくんです。これが冬になると今度は夜中に潮が引くので、潮だまりにタコが寝てたりして、夜の月明かりで漁に行くんです。

奄美の生き物は夜行性のものが多く、夏にかけて気温が上がってくると活発になり、昼間とは違った表情を見ることができますので、夜のツアーもあるんですよ。夜の森は本当に真っ暗で、生き物の気配とか鳴き声を感じとったりしながら進んでいきます。ラッキーならクロウサギを見ることができるかもしれません。



今回のお話いかがだったでしょうか。金作原の原生林にはいろいろな植物、動物がいました。森に一歩足を踏み入れると、本当に色んな鳥の声がきこえてきて、ケンムンがいそうな雰囲気のある場所もたくさんありました。
この金作原の探検ツアーについては、観光ネットワーク奄美のサイトFacebookをご覧下さい。

そして次回はいよいよケンムンの謎に迫ります。お楽しみに!


【今週の番組内でのオンエア曲】
・Sun shower / 木村カエラ
・花 / 中孝介

先週に引き続き、日本の亜熱帯、鹿児島県奄美大島の森のレポートです。
奄美大島を代表する原生林、金作原の原生林。森を外側から見ると全体がモコモコとした緑で、まるでブロッコリーのようです。このブロッコリーを構成しているのはイタジイというシイノキです。奄美の森のほとんどはこの木なんです。
しかし、実際に森に入ってみると、私たちの身近な植物はもちろん、亜熱帯の珍しい植物がいっぱいの多様性の森でした。
観光ネットワーク奄美が主催する「金作原探検コース」のガイド西條和久さんにお話しをうかがいました。


◆ヒカゲヘゴ
真上を見てみてください。これがヒカゲヘゴという大型のシダです。これだけ高いと、椰子の木のようにしか見えないですよね。木の高さは10mくらいあります。うろこ状の模様がたくさんついていますが、これは葉が落ちた跡なんです。

上を見ていただくと、ゼンマイが真ん中から出てきます。そして広がって葉になるんですが、外側の葉があのように枯れて垂れ下がって、どんどん新しいゼンマイが出てくるとともに押し出されていくので、これが落ちていきます。すると、このうろこ状の模様が残っていきます。ですから、年輪のようなものですね。おおよそこの高さまでくるには、30〜40年くらいかかってるんじゃないかと思います。

この地域はは年間の降水量が3000mmを超えます。日本の平均的な降水量の約1.5〜2倍です。それだけ雨が多いので、森の保水力は非常に高いです。なので、このような大型のシダがここまで成長できるんです。実は亜熱帯といわれるエリアはほとんどが砂漠地帯です。屋久島、奄美、沖縄にかけてのエリアだけが、黒潮が通って、島自体にも山があるので、そこに雲がぶつかり雨を降らせるんです。


金作原の原生林には関東でも見られる植物がある一方で、まさに亜熱帯、という植物もあります。それがこのヒカゲヘゴという植物です。てっぺんの部分がまるで巨大なゼンマイのような形をしていて、クルクルっと葉が巻いています。

これが大きく育つと高さ10m以上の木になります。はるか頭上に葉を広げている様子は椰子の木を見上げているようで、まるで古代の恐竜の時代を連想させます。


そしてこの探検コース、森のなかの往復2kmほどの平坦な遊歩道を歩くんですが、ちょうど折り返し地点でガイドの西條さんは遊歩道からはずれて、急な谷を降り始めました。



◆オキナワウラジロガシ

オキナワウラジロガシ。樹齢150〜200年くらいの木なんですが、このオキナワウラジロガシは日本でいちばん大きなドングリをつける木です。これくらい、ピンポン球くらいのサイズです。木の高さは22mくらいありますね。これだけの体を支えるため、しっかりと根を広げています。実は奄美の森は腐葉土が余り堆積しません。ですので栄養を含んだ土の層が薄いものですから、木の根があまり深く入らずに、表面上に横へ広がっていきます。ですから、森のなかに入ると、足下には空間が多い。この状態だと周囲を見渡せるので、ハブがいてもすぐにわかります。足下がはっきりしない草薮に足を入れるのは危険なことです。しかし、夜行性のハブで気をつけなければいけないのは、下にいるとは限らなということです。夏の夜になると、鳥を狙って木の上にいます。ですので、鳥も木の先端にとまって寝ています。すると、ハブが近づいてくると重さで揺れますので、それで危険を察知します。


奄美の人々の暮らしには、常にハブという毒蛇が関わっています。この森へ向かう道中にも、ハブと出くわしたときのために棒が道端に用意されていたりします。
西條さんは、森のなかに置かれているプラスチックのパイプを指して、こんなことを教えてくれました。

◆ハブとマングース
じつは山に上がってくる、ところどころに赤いリボンがついていたと思うのですが、実は番号が振ってあります。その下にはマングースの罠があります。

この島に30数年前に、ハブ対策としてマングースが持ち込まれました。当初30匹くらいでしたが、マングースは全くハブを捕まえず、気がつけば1万匹にまで増えていることがわかりました。そしてマングースの胃の内容物を調べてみると、中から出てきたのはアマミノクロウサギ。奄美の固有の生き物たちがマングースの格好のエサとなってしまいました。
そこで、マングース対策がはじまって、いまは島のなかにマングースバスターズという、マングース捕獲のための専門チームが40人くらいます。彼ら罠を仕掛けてマングースを駆除しています。1万匹に達したマングースの数は、去年発表された数でいうと、300くらい。かなり減りました。
マングースにとってみればかわいそうですよね。自分で好き好んで来たわけではなく、人間が持ち込んできたんですからね。昔から奄美と沖縄ではハブとマングースの決闘ショーというのをやっていて、マングースが勝つんですね。ですから、勝手に人間がマングースはハブをやっつける生き物だと思い込んだんです。なぜあのショーでマングースが勝つのかというと、逃げ場のない箱のなかでハブとマングースを入れると、マングースは向かっていかないと自分がやられてしまうわけですから、真ん中にある仕切りが開いた瞬間に、マングースの姿を目で捉えてすぐにハブの頭をめがけていって噛み付きます。一方、ハブは熱でものを捉えるので、多少時間がかかります。ですからマングースが勝つわけです。
ところが自然界の中では敢えてそのような危険なハブに向かっていく必要もなく、周りには美味しそうな野生の生き物たちがたくさんいますので、その結果、アマミノクロウサギの数が少なくなり、そのほかの奄美の固有種も減ってきてしまったので、この事業がスタートしました。マングースの数が少なくなったことによって、森のなかの生き物の声がどんどん聞けるようになってきています。アマミノクロウサギもそうです。徐々に回復している感触はあります。アマミノクロウサギの声は、生息しているエリアまで行かないとなかなか見ることはできないのですが、普通に歩いて見れるようになったら最高ですね。



今回のお話、いかがだったでしょうか。
今回の取材ではアマミノクロウサギに会うことはできなかったのですが、夜のツアーでは、運が良ければ見ることができるそうですよ。観光ネットワーク奄美のサイトではアマミノクロウサギの動画も見ることができます。
観光ネットワーク奄美→http://www.amami.com/

来週も奄美の森についてお届けします。次回はケンムンのお話しです。
どうぞお楽しみに!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・One / Ed Sheeran
・あめふりヒヤデス / UA
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パーソナリティ

高橋万里恵
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