今週も先週に引き続き、水中写真家・中村征夫さんのインタビュー、お届けします。
先週は、ロシアと中国の国境付近を流れるアムール川が、森の栄養をたっぷりオホーツク海にそそぐことで、知床の流氷は植物性プランクトンを育て、美しい緑色になっているというお話でした。
ちなみに、この森の養分をたっぷり含んだアムール川の流れは、日本の三陸沿岸流れ広がり、世界三大漁場と呼ばれる豊富な漁場を作っています。そしてこの、自然のメカニズム、日本では宮城県気仙沼の牡蠣漁師さんが長年続ける、「森は海の恋人」という森作り運動を通じて、よく知られています。
中村さんはやはり、その牡蠣漁師・畠山しげあつさんにも会っているんです。

〜森と川と海の繋がりというと、この番組でも気仙沼の漁師の森は海の恋人の畠山重篤さんにお話伺ってるんですが、中村さんもお会いになったんですね
色々お話して楽しかったですね。牡蠣棚の下にも潜らせてもらいました。意外と急峻な海なんですよ。森があって、森からすぐ海が急傾斜して深くなっているんです。囲まれた湾の中なんで、あんまり嵐が来ても大きな波を受けるようなこともあんまりないと思うんですけども、穏やかな湾なんですよ。そこに森の栄養がたくさん流れ込んでいるんじゃないかと思いますね。黄緑色の海なんですけども、これはまさに森の栄養が満ちてるんじゃないかなと思います。「水が清いと魚棲まず」ってよく言われるんだけども、きれいすぎると栄養が乏しいんですよ。だから生き物があんまり育たないと言われてます。だから適度に森からの栄養がコンスタントに流れてくることがベストなんですね。その為には森を整理しなくちゃいけないということだと思うんですね。

〜豊かな海ってちょっと黄緑色なんですね。
そうです。だからアイスアルジーも黄緑色でしょ?知床の海も全体に黄緑色ですよ。僕はかつて20年程前に奥尻島に行ったときには岩が丸裸でした。ウニが点々とあって、海藻がほとんど生えてない状況だったんです。漁師の方が言ってましたけども、子供の頃、あまりにも寒くて、お父ちゃんやおじいちゃんが森の木をみんな切って燃やして暖を取ったっていうんですね。そしたら、海から海藻が消えたって言うの。そうすると、海藻が消えるってことはウニも取れなくなった。アワビも取れなくなった。これはひょっとしたら森の木を切ったからじゃないかってことで、漁師たちがみんな何十年もかけて森に木を植えるようになりました。それで同じ場所に潜ったら数十年後には向こうが見えないくらい昆布が繁茂してました。
人間は豊かさを求めて自然界をだいぶめちゃくちゃにしてしまったけども、直すのもやっぱり人間の力かなというような気がしましたね。反省の念に立って振り返ってみるってことが如何に大事なことなのかなと思ったんです。


〜その他生き物はどうでしたか?
アイナメがちょうど産卵シーズンで、婚姻色といってオスは卵を守るときは黄色くなるんですが、その黄色いアイナメがいっぱいいましたね。それでふっとウニがあるなと思って、寄っていったらいきなり産卵が始まって、振り返ったら今度はヒトデが産卵してました。それで斜め前を見たらアワビが産卵しててビックリ仰天!アワビって殻に穴がいっぱいあいてるじゃないですか。あの殻何のために、酸素取り入れるためかな?とか色々思ったんだけどもあの穴から放精するんですね。

〜重篤さんのパワーすごいですね」
そうですね。だから大災害を受けた海だったんだけど、その後きっちりといろんな命が宿ってる。それを目の当たりに見せてもらったということですね。

〜海の中の森といえば、沖縄の西表島のマングローブの森もあります。マングローブの森も郁夫さんは水中から写真を撮っていらっしゃいますが、マングローブの森っていうのはどんな生き物がいるんですか?
マングローブというのは大事な空間なんですよね。汽水域。海水が混じり合うと真水が混じり合うところが広大に広がっていますね。マングローブというのは気根が網の目のように張り巡らされてるんだけれども、それが小動物の隠れ家になるわけです。身を守る場所なんですよ。
満潮になると海水が中流近くまで上ってきます。サメなんかも入ってきますし、川の生物、海の生き物が混ざり合ってる場所で、小魚を求めていろんな魚が食料を求めてやって来る。だからマングローブがあることによって小さな生き物たちが隠れる場所であるってことだから、ゆりかごの場所だという風にも言われてるんですね。


〜マングローブは命のゆりかごなんですね。まさに今みたいな小魚の隠れ場所だったとか、海が命の始まりだったなって感じるシーンとかってありましたか?
広い海の中なんだけども、死んでる魚っていうのはあまり見たことがないんです。何故かっていうと、恋をし、交尾したり交接したりして、卵を産んで家族を養い、そしてその場で死んでいく。死んでも他の魚にすぐに食べられたりして。だから死ぬ前から食べられていく世界なんですよね。
そういうのを見ると、僕らが住んでいるこの同じ地球なんだけども、全く別の世界という感じがしますね。あんなに魚がいるのに死んでる魚がいない。見ることがない。もう本当にちょっと油断しただけであっという間に食われてしまう世界。だから僕なんか海の中では恐ろしくて全く住むことができない。確かに命は海から生まれてるんだけれども、しかしそこは非常に危険なところでもあるということをつくづく感じますねいつも。


今回のお話いかがだったでしょうか。来週も引き続き中村征夫さんのお話をお届けします。

中村征夫さんのサイト→http://www.squall.co.jp/
「遙かなるグルクン 」中村 征夫


【今週の番組内でのオンエア曲】
・夢で逢えたら / 大瀧詠一
・Helpless / K.D. Lang
今週は、私たちの周りの森と、大きな循環の中で繋がる存在「海」を舞台に、長年写真を撮り続ける水中写真家・中村征夫さんにお話を伺います。
中村さんは半世紀・50年以上にわたり、世界の海に潜り、海の生き物たち、そして海とともに生きる人々の姿を、写真に収め続けています。まだヘドロだらけだったころから、東京湾の写真も撮り続け、誰も知らなかった東京湾の真実を伝えた方としても知られています。


〜中村さんは一年のうちどのくらい水中潜っていらっしゃるんですか?
半分くらいでしょうか。鼓膜が今も耳鳴りをしてるんですけども、あまり潜るので水圧から体が守ろうとしてるんじゃないかと思うんですよ。それで恐らく耳の軟骨が発達して水圧を防ごうとしてるんじゃないかと思うんです。それでど耳鳴りしてるんじゃないかと思うんですよね。さらに耳の中から毛が出てきました。これも鼻毛と同じように余分なものを防ごうとしてるんじゃないかなと思うんですね。だから徐々に徐々に半魚人に近づいてるんじゃないかと思うんです。

〜どのくらい深さまで潜るんですか?」
いざってときは70mくらいまで行ったことありますけども、深いと魚も少ないし暗いし、それよりは一番生き物が豊富な太陽の燦々と降り注ぐ10mそこそこ。それより浅いところですね。深いところにずっと長いこといるとあんまり体に良くない。体内に窒素がたまってしまう。ボンベの空気の窒素が体内に溶け込んでしまうんです。
海は人間の住める世界じゃないので、いつも慎重に潜っています。自分の今までの長年の経験なんていうのも海の生き物からみればそんなもんかって言われちゃうくらい下手くそだと思うので、海は別世界だからそこで事故を起こさないように無謀なことは一切しないで、だから一度も今まで潜水事故はないです。


〜中村郁夫さんのカメラマンとしての最初の水中での一枚ってどういうものだったんですか?
神奈川県の真鶴岬っていうのがありますけども、19歳のときにそこがバスから見て目の前に海が広がってるっていうことで、琴ヶ浜っていうところでバス停で降りて、そこで海水浴をしてたんです。そこで写真を撮ってるダイバーに出会って、ものすごく体が震えるくらい感動した。それで写真をやってみようと思ってすぐ翌日には水中カメラと、小さなカメラですけど、ダイビングウィットスーツとか全部揃えて真鶴に通い始めました。
我流だったので、シャッタースピードとか露出とか全くわからなくて。なにしろ写真に興味がなかったから。撮っても撮っても何も写ってなくて、2年以上は写ってなかったかもしれません。写真屋さんにいつも笑われてました。「今回もだめですね」って。光が足りないよって言われても、光が足りないって意味がよく分からないわけですよ。それである時今日は思いっきり潜ろうと思って2mか3mまで潜って岩にしがみついたんですね。黙ってると体がフッて浮いてきちゃうもんで。
しがみついて何となく水面を見上げたら一匹のフグがひゅーっと泳いでいったんで、「あ、フグだ」と思ってパチッと撮ったんですよ、上の方を向けて。それだけが写ってたんです。ということは僕は泳ぎも潜りもできないから、ほとんど水面から暗い岩を上からパチパチ撮ってたけども水面は明るいので逆光でシルエットでフグが写ったんです。光が足りないってことはこういうことかって思って納得して、徐々に徐々に色んな本を読んでわかってきたんですけどね。よくやめなかったなっておもいます。


〜この番組は森をテーマにした番組なので、水中から見た緑のある風景について色々お伺いしたいなと思うんですが、北海道の知床に漂着する流氷。あの流氷を水中から見ると、白じゃないんですか?
海中から見るとグリーンです。あのグリーンが実は知床の海を支えている植物プランクトンの塊なんですよ。そもそも流氷っていうのは、シベリアを流れるアムル川が冬には凍って、それが風で流されて、海の周りも流氷で満ちて行くんですよね。それが今度は海流で流されて押しやられて知床半島まで流れてくるんですけども、アムル川はツンドラを流れる川なので、植物プランクトンとかびっちり詰まってるんですよ。凝縮されてる、そういう栄養満点の氷なんですよね。その緑色に見えるのが植物プランクトンの色。アイスアルジーと呼ばれる植物プランクトンなんですよね。それが岸とか沿岸に流れ着くことによって、沿岸にいるエビ、カニなどの動物性プランクトンがアイスアルジーの中に突っ込んでいくわけですよ。
で、ばくばく食べてるわけ。そのえびやカニを狙って今度は小魚がやってくる。それを狙って一回り大きな魚がやってくる。スケソウとか、ニシンとかやってくる。それを狙ってトド、アザラシがやってくる。それを狙ってシャチまでやってくる。そういうアイスアルジーっていう植物プランクトンが連鎖を編み出している。だから流氷が来ない年は海が非常に栄養が乏しくて漁獲がガクンと落ちるとよく言われています。
海の食物連鎖を支えているのはほとんど沿岸だと僕は思ってます。岸に流れ着く栄養が原点で、これらを動物性プランクトンが食べにくる。要は全部岸から始まっていくと思っています。


〜私たちは流氷の色は白だと思っていますが、でもそれを下から見たらアイスアルジーのグリーンを見ることができるんですね。
できます。ものすごくきれいなグリーンの色ですよ。氷の切れ目から太陽の光芒がさーっと差し込んでいて、本当息を呑むような美しさです。

中村さんのお話いかがだったでしょうか。来週も引き続き中村征夫さんのお話をおとどけします。

中村征夫さんのサイト→http://www.squall.co.jp/
中村征夫さんの本→http://squall.shop-pro.jp/?mode=srh&cid=&keyword=


【今週の番組内でのオンエア曲】
・Skinny Genes / Eliza Doolittle
・Tenerife Sea / Ed Sheeran
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