今日は、日本の森と生態系に関するちょっと変わった活動をご紹介します。スタジオにお招きするのは、「オオカミと森の研究所」という団体の朝倉裕さん。この団体は、オオカミを日本に復活させよう!と訴えている団体なんです。朝倉さんにその活動内容や、オオカミと森の関係についてお話を伺いました!


〜朝倉さんが活動する「オオカミと森の研究所」はどういった活動をされているんですか?
以前は日本オオカミ協会というところで、日本の自然にオオカミを復活させようという運動をしていました。いまはちょっとそこから離れて、一人で活動を始めたんですけれども、オオカミの再導入のためには、いろんな人の理解を得たいということで、いろんな活動をしています。

〜日本のオオカミは絶滅してしまったということは知っているんですが、そのオオカミを森に戻すということですか?
はい。絶滅というのも、日本列島からいなくなったということで、大陸にはまだたくさん残っているわけですね。だから、生息地が縮小したと考えれば、人間が手を貸して戻してあげようということですね。

〜オオカミを日本の森に戻すと、どういったいいことがあるんですか?
各地で鹿とかイノシシが増えて、いろんな被害が出ているんですけれども、元々森のなかの生き物にはそれぞれ役割があって、鹿はおそらく植物の多様性に関わりがあるんですね。いろんなものを食べて、ひとつの植物だけが増えるのを抑えて、いろんな生き物が生きられるようにしていると思うんですん。ただし、それは生息密度が適当であればなんですね。その鹿の生息密度を適当なところにおさえ、コントロールする役割はオオカミだったんです。日本の場合、捕食者のオオカミがいなくなって以降、人間が狩猟によって抑えていた部分が大きいんですが、鹿を狩猟で獲る目的としては毛皮として使う目的が大きかったんではないかと思うんですね。そうすると、その部分が高度成長期にフェイクファーに置き換わったりといったことで、鹿を獲る動機がなくなってしまったんです。それ以降、鹿が増え始めました。

〜そこにオオカミを戻すことができたら、どういうったことが起きるんですか?
アメリカで「緑の世界仮説」というものが発表されたのが1960年なんです。要約すると、世界が緑で覆われているのは、捕食者がいてくれるからだと、仮説として掲出されて、それをいまアメリカでは実験が進行中という段階なんですね。実際にオオカミがいなくなると、鹿が増え始めて、植物が無くなる減少が起きるんですね。これは世界のどこでも起きていることで、いま現に日本で起きていることです。そこにオオカミが戻ると、その逆の減少が起きるんです。鹿が減って、植物が増えて、ほかの動物たちが増えていく。

〜オオカミが鹿を捕食することで減るんですか?
食べることでも減ります。オオカミが戻ると鹿そのものも群れとして健康になると言われているんです。オオカミが捕食するときには、立派な角を持った体の大きな個体を狙うと自分も危険なので、弱い個体から捕り始めるんですね。病気であったり、ケガをしていたり、あるいは子どもだったり、歳をとっていたりていう個体にに狙いをつける。そうすると、鹿の群れそのものも健全な個体が残っていくんですね。また、オオカミは捕食するためにまず、追いかけるんですよ。オオカミは走る動物ともいわれていまして、ネコ科のトラとかヒョウとかと違って、待ち伏せをあまりしないんです。まず姿を見せて走らせるんですね。追いかけていくんですよ。そうすると、鹿は安心して一ヶ所で食べ続けられないので、それまで鹿に食べられていた植生がちょっとずつ回復します。すぐにその減少は始まる。つまり鹿が減る前に植物が回復するんですね。

〜オオカミには天敵はいないんですか?例えばクマはどうですか?
オオカミに天敵はいません。クマとオオカミの関係は面白くて、アメリカの例ですけど、オオカミは主に鹿とかバイソンを獲って食べるんです。そこに後からクマが現れて、オオカミが倒したものを横取りして行くんです。クマそのものはほぼ植物食なんです。肉食獣のくせに木の根や小動物を食べているんですけれども、オオカミがいると、一部肉食が復活するんですよね。

〜そこでオオカミとクマがぶつかることは無いんですね。
クマが勝ちます。オオカミはクマが自分の獲物を食べ始めると、周りで見ていることしかできません。それはアメリカのグリズリー、あるいはクロクマの例なんですけどね。日本でツキノワグマがどういう関係になるかはちょっとわかりませんけどね。

朝倉さんのお話、いかがだったでしょうか。来週もインタビューの続きをお届けします!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Memories / MAN WITH A MISSION
・Passage / 山崎まさよし
昆虫植物写真家 山口進さんのインタビュー、お届けしてきましたが、今週が最後となります。
あのジャポニカ学習長の表紙の、めずらしい昆虫や植物の写真を40年にわたり撮り続けてきたことでも知られる山口さん。最後は、昆虫と森、そして自然環境について語って頂きます!

〜本当におもしろい昆虫のお話をたくさんうかがいましたが、ほかにもおもしろい昆虫はいますか?
最近ボルネオに通っているのですが、ボルネオに、食虫植物のウツボカズラのなかに住んでるアリがいるんです。ウツボカズラというのは虫を捕まえて、それを栄養にしているんですが、ウツボカズラの壺のなかに消化液が入っています。普通のアリはその中に落ちると死にます。だいたい、大きい3〜4cmの大きいアリでも3〜4秒で沈んでしまいます。ところが、このアリは消化液の中を自由自在に泳ぎ回って、ウツボカズラの底に沈んでいる虫をとってしまうんです。横取りしているように見えるんですが、実はそうではないんです。このアリは「シミッチイ」といういいます。シミッチイは、ウツボカズラのなかにいるボウフラを食べて退治するんです。ボウフラはウツボカズラの中に住むことができるんです。ボウフラはせっかくウツボカズラの消化液の中に溜まっている栄養分を横取りするんです。横取りして食べて、最終的には蚊になって出ていくんです。ですから、ウツボカズラにとっては何の利益もない。でも、このアリはボウフラをバァーっと追っかけていって、噛み付いて、それを引き上げて食べて、そこで糞をするんです。そうするとその糞がウツボカズラの栄養になる。だから、ボウフラはウツボカズラにとってはマイナスしかありませんが、シミッチイはプラスになる。シミッチイはウツボカズラのツルに巣をつくっていて、いっさい地面には下りないんです。ウツボカズラっていっぱい壺がぶら下がっていますけれども、そのなかの半分くらいはシミッチイが住んでいます。ですから、シミッチイの住まないウツボカズラは成長が遅いんです。

〜シミッチイはなぜ溶かされないんですか?
それが疑問なんです。それを本当は調べたかったのですが、いまは標本の持ち出しとかがなかなかできないんです。可能性としては、アリには普通、お腹の横に気門といわれる穴があいていて、そこから呼吸をしていますが、そこに特殊な構造があるとか、体の節の間に、なにか染み込まないような仕組みがあるとかいろいろ考えられますが、これからの課題ですね。

〜この番組は森をテーマにしていろいろお話を伺っていて、世界中のいろんな森を旅してきた山口さんにお聞きしたいのですが、森が豊かだと昆虫もたくさんいると思います。そういう意味で印象的な森っていままでありましたか?
たしかに森が豊かだと当然生き物は多い。いまは開発が進んでいて、少なくなっていますけれども、それをやめようという動きもあります。たとえば、絶対開発しない森ってじつはあるんです。パナマ運河の両脇って森が広がっているんですが、それはなぜかというと、パナマ運河を運行するために森が必要なんです。パナマ運河というのは、ちょっと高いところにガトゥン湖という湖があって、そこにたまった水をパナマ運河に流しながら船をぐぐっと上げるんです。だからいつも水がないといけない。それを保つためにパナマ運河の周辺の森を全部残しているんですね。そういうふうに、人間が利用することによって、森が守られるということはありますよね。開発をひとえにだめとは言えませんが、うまく利用することによって森を残せるんじゃないかというふうに思いますね。


〜やっぱりそういう手付かずの森には生き物、昆虫もたくさんいるんでしょうね。
パナマもの隣のホンジュラスなんかは昼間でもジャガーを見ることができるんです。僕はよくキャンプしている場所があって、昼間にすぐそばの川で行水をしていたら、目の前をクロヒョウが通っていきましたね。そこはやっぱり森がちゃんと残っていて、それで昆虫全般が多くて、鳥も多いですね。そういうふうに食物連鎖がちゃんとなりたっているんですよ。人間もそうですが、生き物は環境の動物ですから、環境がちゃんとしていないと、ちゃんとした生き物が生きられない。だから、人間もちゃんと環境を整えていかないと、生きづらくなるんじゃないかなっていう気がします。
最近よく、ミツバチがいなかったらどうなるかという話がありますね。もう本当に単純な話で、花粉を運んでくれる人がいなくなって実がならなくなる。そうすると、食べるものだけじゃなくて、植物全般がダメになるんですね。植物って我々が生きる基本ですから、それがなくなると大変なことになります。
ただ、それをみんな気づいていて、たとえばボルネオなんかではアブラヤシのプランテーションをやめようとか、そういう動きも出ています。ですから、僕は決して悲観的ではない。昆虫っていうのは、どんな小さくても、自然環境がちょっと残っていれば生き残っているんです。だからもし、環境が良くなって林が元に戻ってくると、どんどん増えてきます。そうすると鳥も来るし、動物も来ます。昆虫や生き物の力は強いんです。だから、ちょっとだけでいいから、自然を残しておいて欲しいと思います。


山口さんのお話、いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!


山口進『珍奇な昆虫』/光文社新書

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Roar / Katy Perry
・The Circle Game / Joni Mitchell
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パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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