プロジェクト概要

太古の昔より、森は動物や植物などたくさんの命を育み、田畑や海、川にたくさんのミネラルをもたらし、地域と暮らしを守ってきました。 東日本震災では津波でコンクリート堤防や松林がことごとく破壊される中、その森や、昔からその地方に根差す、深く地面深くに根を張った潜在自然植生の木々たちは、津波の勢いを和らげました。 関東大震災や阪神大震災では、大火により建物が燃える被害を食い止め、防災林として大きな役割を果たしました。 この「鎮守の森」をモデルとした森をできるだけ多くつくることは、災害の多いこの国に生きていく私たちが、後世に伝え残さなくてはならない貴重な知恵であり、自然と共生していく教訓でもあります。 番組「いのちの森〜voice of forest~」では、「鎮守の森のプロジェクト」が行う活動をはじめ、日本のみならず世界各地の森を守る活動を行う人や団体にスポットをあて、森の大切さについて考えていきます。


先週に引き続き静岡県・浜松市天竜区、天竜川の流域にある森林で行われた伐採体験ツアー『与作ツアー』の模様をお届けします。
このツアーは天竜川流域の林業家や材木店の方の案内で行われるもので、日本の人工林の中でもっとも美しい杉林のひとつといわれる「天竜の杉林」に触れながら、その杉が材木として生まれ変わる過程を見ることができるイベントです。

先週は樹齢70年という大きな杉の木が切り倒される様子、そして切り倒された木を、そのまま山の上で放置して木の含水率を下げる『葉枯らし乾燥』のお話をお届けしました。
自然に逆らわず、自然の営みに任せる。この考えは、ほかの様々な場面にも生かされています。それは木を伐採する季節にも「旬」があるようです。

天竜で林業を営む、榊原商店・榊原正三さんのお話しです。
◆伐採の時期
伐採の時期は8月以降、9月から3月に切るとよいと昔から言われている。8月以降は木の成長がとまる。その時期に切ると虫もカビもつきにくい。春から夏はダメ。木の中に養分がいっぱいあるからカビて虫がついてしまう。


さらに榊原商店では、伐採の時期についてもう1つ、自然が刻むリズムに合わせたこだわりがあります。それは月の満ち欠け。「新月」に合わせて木を切る『新月伐採』です。

◆『新月伐採』
新月伐採に巡り会えたのは2003年6月5日。オーストリアの営林に携わるエルビン・トーマスさんが来日。月が欠けていく時に木を切ると虫がつきにくく長持ちすると言われた。その講演を聴き、私の考えとぴったりあったので驚いた。経験則からいうと「おかしい」というのは分かっていた。伐採した木の半分がシロアリで穴が開く木が多かった。同じような管理をしても全体の半分がそうなるのでおかしい?と思っていた。そこでトーマスの月が欠けた時に木を切るという教えをやってみたら、新月の前はカビない。満月だとカビる。満月の前はシロアリに食われるが、新月の前は食われない。月の半分で全然違う結果になった。1本で二股の木でも試したが、片方は新月前、片方は満月前に切ると、結果はやはり同じだった。京都大学の先生に養分を調べて貰ったら、満月前と新月前では新月前は乾燥後に養分がなくなっていった。満月前は養分が残っている。これが虫やカビの原因だと発表。実験の結果が出ているということ。


林業歴43年の榊原さんが新月伐採に出会ったのはたった10年前。つい最近のこと。でも、この新月伐採という手法は、実は、はるか昔から存在したといいます。

◆500年前の古文書
この手法は、当たり前だったのがいつしか忘れられてしまったのだろう。裏付けの根拠がある。500年前の建築業界最古の本「愚子見記」を調べたところ、「竹は八月の闇に切ると良い」と書かれていた。つまり「闇」とは新月のこと。新月に切れと500年前の本でも表している。

◆法隆寺の宮大工も・・・
日本の木造住宅最古のもの、奈良の法隆寺の宮大工、西岡 常一(寺院建築の技術を後世に伝えるなど「最後の宮大工」と称された)さんが、設計事務所と対談した時に、木は8月の闇に切れと伝えている。そういう言い伝えがあったが、それがいつしか忘れられた。科学的根拠のない頃から、木を扱う人たちが経験則でそれにたどり着いたことに本当に頭が下がります。

◆木のトレーサビリティ(履歴証明)
こういった話はロマンがあるので「うちはやっている」というところがいっぱいある。でも、第三者がみて間違いなく月が欠けていく時に切っているかどうかは定かではない。トレーサビリティがしっかりしていて初めて第三者に信頼される。だから私達は伐採した瞬間からバーコード管理をして、ユーザーが追跡調査できるよう、木のトレーサビリティを2003年からやっている。また、実際に山に入ってもらい、一緒に伐採を体験してもらうことで木に対する理解を深め、付加価値をつけて買ってもらうことで、また山にお金を戻せる。私たちの材料を使ってくれた人が喜び、家が建ったときにお礼を言ってくれる人がたくさんいる。この仕事をやっていて、エンドユーザーの信頼を得られたことは嬉しい。だから山で、私のやっていることをどんどん観て欲しい。


浜松市「天竜の杉林」の伐採体験イベント「与作ツアー」は、また9月から始まります。
興味のある方は、こちらにお問い合わせください。
榊原商店のホームページ
天竜 T.Sドライシステム共同組合

今週は、静岡県・浜松市天竜区、天竜川の流域にある森林で行われた伐採体験ツアー『与作ツアー』の模様をお届けします。
このツアーは天竜川流域の林業家や材木店の方の案内で行われるもので、日本の人工林の中でもっとも美しい杉林のひとつといわれる「天竜の杉林」に触れながら、その杉が材木として生まれ変わる過程を見ることができるというイベントです。

番組ではこちらで林業を営む榊原商店の代表・榊原正三さんにご案内頂きながら、実際に木を切り倒す現場を取材して来ました。杉林が植林され、成長し、そして材木へと変わる過程や木の不思議な力についてご紹介します。

◆1本ごとに、履歴証明ができるバーコードで管理
一人一人の人間に特徴があるように、1本1本の杉にも特徴があります。背の高さ、胴回り、肌の色つや、健康状態など、それらを伐採する直前にデータ入力されたバーコードが、伐採時に付けられ、木材になるまでずっと管理されていきます。
ということで、この日切られた杉は、推定70年以上、高さ30m、胴回り222cm、状態Aランクの杉が伐採されました。


◆伐採の瞬間は、『第二の人生へ、旅立ちのとき』
伐採の瞬間、大きな音と共に山に70年間立ち続けた杉が倒れ、振動が響き渡りました。その瞬間をどんな気持ちで毎回迎えているのか榊原さんに尋ねたところ、『木にとっては、第二の人生へと旅立つとき。植林した木がどんどん大きくなり、樹齢70年に育ち誰かに使われるために旅立つ日。女性は子どもを産む陣痛を想い出し涙が出るという。』

伐採されたばかりの木の断面からは、杉のいい香りが広がっています。手のひらで触ってみると、水をたっぷり含んでいるのがよくわかります。早速「含水率」を計ってみると・・・

◆自然乾燥の『葉枯らし乾燥』にこだわる
伐採された木の断面は、含水率113%と表示されました。ざっくり、木と同じ質量の水が入っていることになります。木材として使うためには、この含水率を25%くらいまで乾燥させる必要があるのですが、この下げ方がポイント。榊原商店では昔ながらの『葉枯らし乾燥』という手法で、手間暇かけて乾燥させています。

「葉枯らし乾燥とは、木を切って、葉を付けたまま3か月以上山に放置すること。すると枝葉が子孫を残すため、(幹から)水分を吸い上げ、中の水分が抜けていくため、重量が半分くらいになります。この葉枯らし乾燥は、住宅には最高の方法でした。
でも昔からやっていたがいつしかやらなくなってしまった。理由は経済優先となり、山で寝かすよりも早く切って山から出してしまってお金を回収しようという動きになったからです。そのため、機械乾燥が主流になりました。80度〜100度の窯で乾燥させると1週間で水分は抜けますが、中の養分も抜けて、木が木ではなくなってしまうのです。環境を悪くして、木を工業化させてしまいました。それが木にとっては可哀そう。100度の窯に入れられるなんてたまらない。
木を見れば一目瞭然、匂いも全く違う。葉枯らしをやって43年だが、葉枯らしの木は香りがしっかり残る。人工乾燥かけると内部割れが起こる。
木の強度が落ちることが実験でも分かっている。それがなかなか一般の方に分かってもらえない。木が割れるのは「悪い」とクレームを言われるため、人工乾燥で外側を割れないようにしてしまう。でも中は割れている。見てくれが悪くても木の強度を考えてほしい。我々は天然乾燥で住宅をやっていて、それは300年以上持っている。」

植林した木を大事に育てるように、伐採してからも手間暇をかけ愛情をもって木材にしていく。日本の林業が衰退していくと言われる昨今、こうしてこだわりをもって林業に取り組む榊原さんのところでは、20歳〜70歳の職人さんが、元気よく働いています!私達もせっかく木材を使うなら、長く使える木を選びたいですよね。

この榊原商店の「与作ツアー」、まだまだこだわりの手法があるようです。この続きは来週お伝えします!


榊原商店のホームページ
天竜 T.Sドライシステム共同組合
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高橋万里恵
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