昆虫植物写真家 山口進さんのインタビュー、お届けしてきましたが、今週が最後となります。
あのジャポニカ学習長の表紙の、めずらしい昆虫や植物の写真を40年にわたり撮り続けてきたことでも知られる山口さん。最後は、昆虫と森、そして自然環境について語って頂きます!

〜本当におもしろい昆虫のお話をたくさんうかがいましたが、ほかにもおもしろい昆虫はいますか?
最近ボルネオに通っているのですが、ボルネオに、食虫植物のウツボカズラのなかに住んでるアリがいるんです。ウツボカズラというのは虫を捕まえて、それを栄養にしているんですが、ウツボカズラの壺のなかに消化液が入っています。普通のアリはその中に落ちると死にます。だいたい、大きい3〜4cmの大きいアリでも3〜4秒で沈んでしまいます。ところが、このアリは消化液の中を自由自在に泳ぎ回って、ウツボカズラの底に沈んでいる虫をとってしまうんです。横取りしているように見えるんですが、実はそうではないんです。このアリは「シミッチイ」といういいます。シミッチイは、ウツボカズラのなかにいるボウフラを食べて退治するんです。ボウフラはウツボカズラの中に住むことができるんです。ボウフラはせっかくウツボカズラの消化液の中に溜まっている栄養分を横取りするんです。横取りして食べて、最終的には蚊になって出ていくんです。ですから、ウツボカズラにとっては何の利益もない。でも、このアリはボウフラをバァーっと追っかけていって、噛み付いて、それを引き上げて食べて、そこで糞をするんです。そうするとその糞がウツボカズラの栄養になる。だから、ボウフラはウツボカズラにとってはマイナスしかありませんが、シミッチイはプラスになる。シミッチイはウツボカズラのツルに巣をつくっていて、いっさい地面には下りないんです。ウツボカズラっていっぱい壺がぶら下がっていますけれども、そのなかの半分くらいはシミッチイが住んでいます。ですから、シミッチイの住まないウツボカズラは成長が遅いんです。

〜シミッチイはなぜ溶かされないんですか?
それが疑問なんです。それを本当は調べたかったのですが、いまは標本の持ち出しとかがなかなかできないんです。可能性としては、アリには普通、お腹の横に気門といわれる穴があいていて、そこから呼吸をしていますが、そこに特殊な構造があるとか、体の節の間に、なにか染み込まないような仕組みがあるとかいろいろ考えられますが、これからの課題ですね。

〜この番組は森をテーマにしていろいろお話を伺っていて、世界中のいろんな森を旅してきた山口さんにお聞きしたいのですが、森が豊かだと昆虫もたくさんいると思います。そういう意味で印象的な森っていままでありましたか?
たしかに森が豊かだと当然生き物は多い。いまは開発が進んでいて、少なくなっていますけれども、それをやめようという動きもあります。たとえば、絶対開発しない森ってじつはあるんです。パナマ運河の両脇って森が広がっているんですが、それはなぜかというと、パナマ運河を運行するために森が必要なんです。パナマ運河というのは、ちょっと高いところにガトゥン湖という湖があって、そこにたまった水をパナマ運河に流しながら船をぐぐっと上げるんです。だからいつも水がないといけない。それを保つためにパナマ運河の周辺の森を全部残しているんですね。そういうふうに、人間が利用することによって、森が守られるということはありますよね。開発をひとえにだめとは言えませんが、うまく利用することによって森を残せるんじゃないかというふうに思いますね。


〜やっぱりそういう手付かずの森には生き物、昆虫もたくさんいるんでしょうね。
パナマもの隣のホンジュラスなんかは昼間でもジャガーを見ることができるんです。僕はよくキャンプしている場所があって、昼間にすぐそばの川で行水をしていたら、目の前をクロヒョウが通っていきましたね。そこはやっぱり森がちゃんと残っていて、それで昆虫全般が多くて、鳥も多いですね。そういうふうに食物連鎖がちゃんとなりたっているんですよ。人間もそうですが、生き物は環境の動物ですから、環境がちゃんとしていないと、ちゃんとした生き物が生きられない。だから、人間もちゃんと環境を整えていかないと、生きづらくなるんじゃないかなっていう気がします。
最近よく、ミツバチがいなかったらどうなるかという話がありますね。もう本当に単純な話で、花粉を運んでくれる人がいなくなって実がならなくなる。そうすると、食べるものだけじゃなくて、植物全般がダメになるんですね。植物って我々が生きる基本ですから、それがなくなると大変なことになります。
ただ、それをみんな気づいていて、たとえばボルネオなんかではアブラヤシのプランテーションをやめようとか、そういう動きも出ています。ですから、僕は決して悲観的ではない。昆虫っていうのは、どんな小さくても、自然環境がちょっと残っていれば生き残っているんです。だからもし、環境が良くなって林が元に戻ってくると、どんどん増えてきます。そうすると鳥も来るし、動物も来ます。昆虫や生き物の力は強いんです。だから、ちょっとだけでいいから、自然を残しておいて欲しいと思います。


山口さんのお話、いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!


山口進『珍奇な昆虫』/光文社新書

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Roar / Katy Perry
・The Circle Game / Joni Mitchell

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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