「極夜」中村征夫/著 新潮社

前回に引き続き水中写真家・中村征夫さんのインタビュー、続きをお届けします。
およそ40年前、中村さんは北極に近いグリーンランドを訪れ、そこで生活する人々を撮影。その時の写真が時を経て昨年末、「極夜」という写真集として発表されました。
極夜とは白夜の逆。太陽が何カ月も昇らない長い夜のこと。
そんな中で撮影された写真集をめくりながら、中村さんのお話は続きます。

〜表紙に可愛い女の子たちが写っていますね。モノクロなんですけど、ファーが付いていて、今っぽいなみたいな(笑)感じですけれども、
マッタちゃんとトクミンゴちゃん。6歳と4歳の姉妹ですけれども、この衣装は、日本で買ったら数百万円するんですよね。上着がカリブーで、ズボンがシロクマです。靴はアザラシで、なかにキツネの毛も入っています。だからホッカホッカ。そうやって獲物をいただいて、獲ったものはすぐそのばで捌いて生肉を食べるんです。生肉を食べることによってビタミンが補給されるんですね。
僕はとても食べられなかったんですが、アッパリアスという渡り鳥がいて、春先に空を覆うくらいにやってきます。それを長いタモで何百羽も獲るんですが、それを羽がついたままアザラシの内蔵を取り出したお腹の中に詰め込むんです。それを縫って、土の中に寝かせて、犬とかキツネに食べられないように石をのせて、発酵させるんですよ。キビヤというんですが、それがいちばんのごちそうで、お誕生会とか、イベントとか、行事があるときにそれを出して、床に広げて、みんなしゃがんで食べるんです。羽がついたままお尻から内蔵をチュウチュウ吸うんですよ(笑)、これがたまらなく旨いらしくて。植村直己さんも最初はゲッと思ったそうですが、9ヶ月くらい住んでいて何度も食べるうちにこんなに美味しいものはないと思うようになったそうです。僕はみんながそれを食べている様子を写真に撮ろうと思ったら、「撮らないでくれ」と言うんです。「このキビヤを食べたら撮ってもいい」と言われて試されたんですよ(笑)それで、塊を一個もらったので、ポンっと口に入れたら、まだ少し凍っていました。そのまますぐ飲み込めばよかったんだけど、ちょっと味わってみたら、いきなりムワッと。クサヤの100倍くらいに感じましたね(笑)。ヤバいと思ったんですが、みんなこっちを見ているんですね。ぐっと飲み込んだら、いやあ胃袋は正直ですね、ポンっと戻ってきた(笑)。でもこれを吐き出したら写真撮れないと思って、何回も飲み込んだんですが、戻ってくるんですよ。もう胃と格闘ですよ!最後になんとか飲み込んで、そうしたらパチパチって拍手してくれて、「よし、撮ってもいい」と言われて、写真を撮ることができたんです。それがこの写真です。こちらの方はお尻から内蔵をすすってますね。
僕はいろんなケガをしたり、ドジをやっているんですけれども、着いてすぐ、「オーロラが出てるぞ」と言わてて、三脚にカメラを付けて飛び出しました。で、構えたら、一瞬にしてまぶたがカメラから離れなくなっちゃったんです。とても寒いので金属にピタッとくっついていしまった。で、部屋に戻って、温めて、まぶたをやっと剥がしました。
また三日目に「アザラシ猟にいく」と言うから、カメラに防寒の羽毛服かぶせてついていったんですね。冬は海も全部凍ってますので、アザラシは哺乳動物だから呼吸できないんですが、どうするのかと思ったら、3センチくらいの穴が開いているんです。それがアザラシの呼吸口なんです。自分の体がスポットはいるくらい、爪でガリガリ氷を削って、上にいる犬や人間に見つからないように、ちょこんと小さな穴をポンっと空けるんです。そうすると上から空気が来るじゃないですか。そういう穴をいくつも持っているんです。それを犬が探すんです。で、見つけると、穴にめがけてライフルを構えて、1時間くらい待つこともあるそうです。だから、足が痒くてもかけないんですよ(笑)


〜そんなちょっとの動きでも察知されてしまうんですね。
犬の匂いもわかっちゃうんです。それで、猟に来たエスキモーの方が「イヤア!」って言うと、僕をそりに乗せたまま、ダァーっと走っていったんですよ。つまりアザラシに対して「もう行っちゃったよ」っていうことです。ソリの音がゴーッと聞こえますから。僕はそんな段取りを聞いていないので、「あの人置いたまま集落に戻っちゃったよ!」と思ってびっくりしたんです。でも200mくらい走って、ピタッとソリが止まって、コロンと犬たちが寝始めるんですよ。それでいろいろ考えて、ひょっとしたら、ライフルの音が聞こえたら一斉に戻るんじゃないかと、だったらすぐに撮影できるように準備しなきゃと思って、カメラをそっと出しているときに、何の音もしないのに犬が突然起き上がって彼の方に戻ったんですね。で、ソリが180度急反転するわけですから、僕は宙を飛んでしまって、犬ぞりの握り棒に右目からぶつかってしまったんですよ。それで、倒れこんでしまって、右目を触ってみたらべっとりと血が出ていました。右目を失ったと思いましたね。で、僕が倒れているので、彼がやってきて僕を見たら、「うわっ帰ろう」と言うんです。でも僕は失明したと思っているので、もう二度とここには来れないと思ったので、「ちょっと待って下さい、もう一回構えてください」ってお願いして撮った写真がこれです。
結局眼球は大丈夫だったんですが、包帯をぐるぐる巻いたので、ほぼ一ヶ月間左目で撮ることになったんです。


〜じゃあ一ヶ月は本当に苦労しながら撮影されたんですね。いろんなお話お聞きしてきましたが、撮影してから40年経っているわけですよね。でも暮らしはそんなに変わってないんですか。
全く変わってないらしいんです。だから、こんなに自然にやさしく住んでいる方たちもいらっしゃらないんじゃないかなと思うくらいです。天然のものを射止めて、それをおいしくいただいて、毛皮も全部衣類にして、犬とともに生きているということですよね。

中村征夫さんのお話、いかがだったでしょうか。今日のお話の写真集「極夜」の発売を記念して、写真展、トークイベントが開かれます。

中村征夫写真展「極夜」地球最北の村、シオラパルクへ1977
◆日時:2018年2月1日(木)ー6日(火)
11:00-19:00(最終日18:00まで、会期中無休)
◆会場:デュオぎゃらりー
兵庫県神戸市中央区相生町3丁目2-1 JR神戸駅前地下街 DUOKOBE内

写真集「極夜」の発行を記念してトークイベント。
◆日時:2018年2月1日(木)19:00開演(18:30開場)
◆会場:アサコムホール
大阪市北区中之島2−3−18 中之島フェスティバルタワー12階

詳しくは中村征夫さんのサイトをチェックしてみてください!
http://www.squall.co.jp/

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Thunder / Imagine Dragons
・Love Song / Dawn Landes

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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