「ゾーン30」という交通安全の施策を知っていますか。
警察庁が 平成23年、今から5年前に全国の警察に導入を通達しました。
ただ、残念ながら、まだ認知度はそれほどではありません。

「ゾーン30」は欧米で普及する交通事故対策を日本に導入したもの。
交通事故対策は道路(線)や交差点(点)にポイントを置いて、
問題解消を図るのが一般的ですが「ゾーン30」は区域でそれを目指します。

「ゾーン30」として整備される区域は
幹線道路や河川に囲まれた住宅街や商店街など。
歩行者の通行を最優先に考えるべき地域です。
生活道路における歩行者や自転車に乗る人の安全確保を目的として
車両の走行は最高時速30kmに制限されます。
また、速度オーバーや抜け道として通行することを抑制するため
他の施策と組み合わせることもあります。

生活道路とは幅5.5m未満の地域住民の日常生活に利用される道路。
なぜ「ゾーン30」の対象になるかというと
狭い道路は歩行者と自転車に乗る人が死傷する交通事故が増えるから。

警察庁のあるデータでは、
交通事故死傷者の構成率は幅5.5m以上道路だと・・・

自転車12.5% + 歩行者6.9% = 19.4%

ところが幅5.5m未満の道路だと・・・

自転車25.3% + 歩行者9.6% = 34.9%

15.5%増加します。

そして、なぜ車両は「時速30キロ制限」なのか?
それは歩行者と車両の交通事故では
車の時速が30キロを超えると致死率が上がるから。

これも警察庁のデータによると・・・

時速25キロ - 歩行者の致死率0.9%

それが・・・

時速35キロ - 2.7%
時速45キロ - 7.8%
時速55キロ - 17.4%


と上昇します。

「ゾーン30」の導入は交通量や交通事故の発生状況などをもとに主に警察主導で決まります。
警察で条件を満たす生活道路を選定して町会や自治会に打診して
了承を得て、整備を進めていくという流れ。
地域住民の要望が高い地域を優先的に整備するケースが多いそうです。

「ゾーン30」はドライバーに周知させる必要があるので
どんな表示、標識で、そのことをわかりやすく伝えるかが重要。
今回お話を伺った日本大学 理工学部 交通システム工学科 助教
稲垣具志さんによると、稲垣さんが「ゾーン30」導入に関わる
東京 世田谷区 二子玉川の例は住民からの発意で導入された珍しいケース。

例えば商店街の沿道に立つフラッグが地域の小学生が描いた「ゾーン30」の絵だったり、
地域のマスコットキャラクターが「ゾーン30」の標識の下に描かれていたり、
街の組織がそれらを決めて実現しているそう。

ただ「ゾーン30」を認識させる方法について
東京都内を管轄する警視庁の交通部 交通規制課 管理官
西村博之さんによると警視庁は違う立場をとっているようです。

場所によって異なるデザインが、あまり認知度が上がらない1つの要因。
警視庁で統一的な看板を設置することにしているとのこと。

東京だけではなく都道府県警察・住民・ドライバー・研究者、
全体の共通理解のため、今後のすり合わせが必要なのかもしれません。
もっと「ゾーン30」の告知活動も。

警察庁が目標としているのは平成28年度で全国3,000箇所に導入すること。
2014年3月時点で1,827です。

今日、番組を聴いた皆さんは、
交通安全のため「ゾーン30」を忘れないようにして下さい。


今朝、追跡したのは最近たびたびニュースになる大事故に繋がりかねない「高速道路での逆走」。
「逆走」が、どのくらい起きているか?
全国の高速道路管理会社によると「クルマの確保」と「事故」を含む【逆走事案】は毎年200件前後。
注目すべきは、逆走事故による致死率の高さです。

⚫ 全交通事故における死亡事故 →  2.0%

⚫ 逆走事故における死亡事故  → 11.8%

逆走=高齢者というイメージがあります。
しかし、平成23年〜26年に起こった【逆走事案】の年齢構成は
65才以上が69%と割合は高いものの30才〜65才未満で24%、30才未満も7%います。
さらに《運転手の状態》は「認知症の疑い」「精神障害」「飲酒」「調査不能」、
これらを合計しても13%。「その他」が83%。
つまり、高速道路では逆走車に注意すべきなのはもちろん、
自分も逆走しないように気をつけなければいけません。

逆走の開始地点として多い順は

? インターチェンジ、ジャンクション
? 本線
? サービスエリア、パーキングエリア

そして、逆走が起こる行動の要因としては
1つに行き先の間違いに気付き、高速道路の本線上やランプで方向転換すること。
料金所から本線に入るまでを流入ランプと呼びますが、
そこでUターンをしてしまう、本線に入る加速車線上で間違いに気付き本線を逆走する。
2つめとしては間違って出口のランプ側に入ってしまうといった誤進入。
3つめとしては出たい料金所の出口ランプを行き過ぎてしまい、
本線上をさらに進んだところで出たかったランプの入り口があってUターンで入ってしまう。
といったことが主なものです。

心理的な要因から「逆走」を見ると、
「痴呆など、なんらかの疾患」を除いて多いものは

? うっかり、ぼんやり、考えごとのため
? 案内標識を不確認のため
? 高速道路の利用方法がわからなかったため
? 居眠り・寝ぼけのため

→ 悩み事があったり、寝不足の時は運転しない
→ ドライブ中、話に夢中になりすぎない
→ 高速道路に不慣れであれば事前に勉強する

という心がけも必要です。
今回、お話を伺ったNEXCO東日本 関東支社 交通管理課 
大高昭久さんによると、逆走しない為には、まずは案内標識。
しっかりと確認すること。路面表示などで進行方向を充分に確認して走行すること。
行き先を間違えたり、行き過ぎても、
次のインターチェンジで降りて、高速道路を乗り直すこと。
本線上や料金所付近では、絶対にUターンやバックはしないこと。

うっかり自分が本線を逆走していることに気づいたら、
路肩などの安全な場所に停止して非常電話や道路緊急ダイヤルから通報すること。
ランプの入口で逆走に気づいた場合は、
そのまま進んでしまわず、その場に停車出来るのであれば停車する。
ガードレールの外などの安全な場所に避難して通報すること。
慌ててUターンやバックをしないよう気をつけてください。
高速道路はランプ上でも速度が出ているので、
速度を上げて入って来た車とぶつかる可能性があります。

そして、万が一、遭遇するかもしれない「逆走車」に気をつける意識を持ちましょう。
NEXCO東日本の大高さんによると、逆走車が現れるイメージは、
一般の道路、中央線があって行き違っている感覚だといいます。
高速道路で2車線、3車線で走っている巡行の車の列の向こう側から、
反対方向に走ってので、一瞬、目を疑う。
自分が反対に走っている?と思う可能性もあります。

逆走車が走ってくる傾向が多いのがいちばん右側の車線。
逆走車のドライバーは左側の車線を走っているつもりだから。
こちら側から見ると追い越し車線を反対方向に走ってくることになります。

ですから、追い越し車線はあくまで追い越しをするための車線ですから、
追い越しが完了したら、左側の車線に寄っているのが、逆走車予防策の1つ。
逆走車に遭遇した場合は、まずは速度を落として左側の車線に寄って下さい。
もしくは、路肩に停車して頂いて、通り過ぎるのを待つ。
さらに逆走車を見かけたという情報を通報しましょう。

「逆走」の事故に巻き込まれないよう、
そして、自分で「逆走」の事故を起こさないよう、十分、気をつけましょう。


クルマを運転している方は気づいているでしょう。

『死角の危険』

運転席からは、どうしても見えない範囲が、存在します。
前にも横にも後ろにも車の周り中に死角があるのです。
そのことを認識して安全運転につとめましょう。
今回は「クルマの死角」を追跡しました。
コメントは自動車評論家 松下宏さんでした。

クルマには死角をなくすためにミラーがついています。
前の席の両側ドアについていて横後方を確認する「ドアミラー」。
室内にあって後方を確認する「ルームミラー」。

さらに、 最近ではクルマの後部にカメラがついている車種や、
助手席側のミラー下にカメラがついている車種があります。
それでも死角が完全になくなることはありません。

死角の原因は大きく2つあります。
1つはクルマのボディとルーフを繋いでいる‘柱’という意味の「ピラー」。
「ピラー」は目視する視界を遮って左右の前方、左右の後方に死角をつくります。

また、さらにドアミラー、バックミラーを使っても、
どうしても避けられない死角があります。
これは左右の斜め後方のある範囲。

これらの死角はさまざまな危険を引き起こします。

例えば、高速道路を走っていて追い越し車線に出ようとする時、
斜め右側の追い越し車線を走っている車がミラーに映らない。
気付かずに追い越し車線に移ってしまうと
追い越し車線の車のほうが速度が高いのでぶつかってしまう。

例えば、左側の斜め後ろ、バイクや自転車などが走っている時、
死角で気づかずに交差点を左折しようすると側面にぶつかってします。

例えば、前方のボンネットフードの先端が見えていたとしても、
その先にいる小さな子供が車の運転席から見えないことがあります。
同様に後方にもルームミラーを使っても見えない部分があります。
自動車メーカーが車から一定の距離を離れたところにいる
1mの子供は見えるというような車作りをしていても、
背の高い車ほど見えない死角の部分は多くなるのです。

以上のような状況にヒヤリとしてことがある人は多いでしょう。
特に車高による死角では、お父さんや、お母さんが帰ってきたことに喜んで、
小さな子供がクルマに近づいていることに気がつかない・・・
というケースもあるといいます。充分に気をつけてください!

♠ 出発前にはクルマの周りを確認!

♠ 前方の死角を少なくするためには運転席で頭を少し動かす!

♠ 後方の死角を少なくするためには目視とミラーで再確認!

♠ それでも目に映ることがクルマを取り巻く全てはないと認識する!

♠ つまり運転には余裕をもって「もしも」に備える! 

といったことを心がけるようにしましょう。
最新の話題としては、車の標準化をしているジュネーブ条約で
斜め後方の視界はドアミラーをカメラで代替えしても良いとなりました。
そのためこれからカメラで置き換えた「ミラーレス車」も登場します。
特に夜の暗い時には目視よりカメラの方が鮮明に見えるところがメリット。

クルマに搭載される技術は、日々向上しています。
しかし、それでも運転席には「死角」はつきもの。
そのことを忘れずに安全運転につとめましょう。


去年暮れに「2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤー」が発表されました。
選考委員60名の投票によって決まる自動車業界の祭典。
今週は選ばれたクルマとその安全性について追跡しました。
お話をお聞きしたのは選考委員の1人で自動車評論家の菰田潔さん。

今回の受賞はMazda ロードスター。
その名の通り、2シーター、オープンスポーツカーのロードスターはいま4代目。
性能は上がり車も大きくなりました。
しかし、菰田さんによると4代目になってMazdaは考え方を一新したそうです。

本当に車の性能を出すためにはどうしたらいいのか?
走りを楽しくする為にはどうしたらいいのか?
Mazdaのスカイアクティブの考え方に基づいて作ったところ、
車両重量が約1000kg、前の車に比べれば数百キロ軽くなりました。
また、エンジンもこれまでの2ℓが1.5ℓになとなりましたが、
車が軽いために以前よりも良く走る車を完成させたのです。
めちゃくちゃ速い訳ではないけれど気持ち良く走る、
非常に「良い走り」を楽しめる車になったそうです。

『スカイアクティブ・テクノロジー』とは、
Mazdaが開発・製造する自動車技術の総称。
Mazdaはエンジン、ミッション、ボディなど
クルマ造りの技術を従来のレベルからブレイクスルーさせて、
より高い環境性能や走行性能を実現させようとしてきました。
     
その成果と言えるでしょう。
日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞車は、ここ4年のうち3年がマツダの製品。
受賞しなかった2012年も席を譲ったのはフォルクスワーゲンの「ゴルフ」。
国産車ではありませんでした。

Mazda ロードスターの安全性を菰田さんに伺ったところ、
法律で決められた装備はもちろん全部あるけれど、
ぶつからない様に運転しやすくなっている点が1番の安全装備だろうとのこと。
ぶつかってからの「ボディの衝撃吸収」、
タイヤが横滑りした時に立ち直る「横滑り防止装置」、
急ブレーキを踏んだ時の「APS」を取り入れていたとしても、
確かに、そもそも衝突事故を避けられれば、それが一番。
ハンドルを切ったら意志通りに曲がる、思い通りに停まる、
加速する、ドライバーが操りやすいことが大切。
それは楽しい走りにも繋がるはずです。

そして「2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤー」スマートモビリティ部門、
受賞車はSUZUKI「アルト/アルトターボRS/アルトラパン」でした。
菰田さんによるとSUZUKIアルトは、軽自動車で価格が安く、
機能的に乗れることに加えて驚くほど燃費が良いクルマ。
37km/1ℓをガソリンエンジンで実現しましたが、
軽自動車でも達成は難しかっただろうとのこと。
SUZUKIは35年ほど前、アルトを47万円で発売。
リーズナブルで一般の人が買いやすい車を提示しました。
今でもその考えを守り、良い車づくりに取り組んでいるのです。

「2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤー」1位はマツダ ロードスター。
2位はホンダ S660(エスろくろくまる)とやはりスポーツカー。
このところスポーツカーが高い評価を受けています。

菰田さんによると、このところ安全性がずいぶん上がってきた。
すると次に求められるのは走りの楽しさ。
環境問題がクローズアップされれば課題は環境になり、
交通事故が問題になれば課題は安全性になる。
その部分がある程度解決されると「走る楽しさ」が求められるのではないかと。
それが日本カー・オブ・ザ・イヤ―に表れているのではないかとのことでした。

日進月歩で進化するクルマ
これからも安全運転で「走る」楽しみを味わいたいものです。
今年の暮れには、どんなクルマが日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するのでしょうか。