フランスのパリでは交通安全促進と騒音現象のため
もうすぐ、ほぼ全域で車の走行は時速30キロ以下に規制されます。

日本では2011年、生活道路での歩行者・自転車の安全な通行のために
区域を定めて車の走行時速を30キロに制限する「ゾーン30」がスタート。    
10年が経ちました。

今回の「なるほど! 交通安全」は「ゾーン30のこれから」。
国際モータージャーナリストの清水和夫さんにお話を伺いました。





「ゾーン30」は歩行者、自転車の重傷死亡事故が多い生活道路での
自動車の走行速度を最大30km/hに規制するルール。
令和2年度末現在で全国に4,031あります。

警察庁は2016年末の段階でゾーン30」の691ヶ所を調査しています。
それによると、人身事故件数は3割減少。
事故抑止に効果があることが検証されました。

今年4月には韓国でも都市部の住宅街など、
生活道路での速度制限を時速30キロに施策を始めました。
世界的に「時速30キロ」となってきたことには意味があります。

交通事故の重傷死亡と衝突速度の関係を見ると
時速30kh/hを超えると重傷率が上がることがデータから見てとれるのです。
自動車は速度の自乗に比例して運動エネルギーは大きくなり
時速30km/hから33km/hへと10%上げただけでエネルギーは約20%上昇します。
実際の交通事故のデータと照らし合わせ、衝突しても被害を最小限に抑えられるということで
時速30キロという数字が出されているのです。

警察庁によると、道路で車と衝突した際の歩行者の致死率は時速50キロ台だと16.6%。
30キロ未満だと0.9%まで減少するのでゾーン30の普及には意味があります。





一方で、今回お話をお聞きした清水和夫さんは、
警視庁・国土交通省などの政策アドバイザーでもある方。
一方で自動車自体の性能でもスピードを制限するべきだというご意見です。

また、日本では高スピードで走るところで取り締まりをする比重が高いですが
歩行者、自転車の重傷死亡事故が多い生活道路で
車の速度の厳格化が必要だともおっしゃっていました。

まず、ドライバーは、
ゾーン30では、時速30キロを守りましょう。



全国各地で大雨が起こる昨今、
報道の中で「アンダーパス」という言葉を見聞きする機会が増えました。
クルマに乗っていて大雨や豪雨になった時には、
この「アンダーパス」に注意する必要があります。
今週はJAF 東京支部 事業課 交通環境係 栗原悠羽さんに話を伺い
「アンダーパスの危険性」についてお送りしました。





アンダーパスは立体交差で掘り下げ式になっている下の道路のこと。
くぐり抜け式通路とも呼ばれ、上は鉄道や別の道路が通っています。
国土交通省によると、いまその数は全国におよそ3600。

アンダーパスは周囲の道路より低くなっているために水が流れ込みやすく
台風やゲリラ豪雨の時には設置されている排水ポンプの能力を超えることもあり
すり鉢状の部分に水が溜まって冠水する危険性があります。

冠水した場所を自動車で通行すると
空気の取入れ口からエンジンルームに水が入る込むことがあります。
すると、電気系統に不具合が生じたり、エンジンが動かなくなることが考えられます。

また、車が水没してしまうと、外からの水圧でドアが開かなくなります。
そうなると水が流れ込むことも考えられるので事前に脱出を図らなければいけません。

実際に冠水したアンダーパスに車が水没してしまい
運転手が亡くなるという事故も起きています。





身近なエリアでは、どこに冠水の危険性があるのか? 
まずは把握しておきたいところです。
その上で大雨の中を運転する時は交通情報に注意しましょう。

国土交通省では道路に関するハザードマップを公開しています。
これは道路の中で冠水しやすい場所が示されているので
そういった場所を避けて走行することが重要。

また、アンダーパスが一定の雨量に達した場合には
通行止めなどの措置がとられることがあります。
電光掲示板等で「この先冠水注意」等の注意喚起が行われていないか
また路面のペイントで冠水情報を知らせていることもあるので
そういった情報に注意を払って下さい。





注意して運転していたけれど、
気がつくと目の前のアンダーパスが冠水していた
あるいは周囲の水かさが増えて冠水してしまうということもあり得ます。
そんな時の対処法を栗原さんにお聞きしました。

水の深さは見た目では分かりません。
まずは周囲の安全を確認して、引き返せるようであれば引き返します。

その上で何らかの理由で冠水したアンダーパスに車がはまってしまった場合、
水圧でドアが開かなくなる可能性があります。
車が動かなくなったら車内からの脱出することを考えましょう。

まずはドアが開くかどうかえを確かめる。
ドアが開けられる水位であればシートベルトを外して脱出します。

水圧でドアが開かなければ、窓を開けて脱出することになりますが
JAFの実験では、窓ガラスは素手・車の鍵・傘などで割ることが出来なかったそう。
水没してしまった車両の中でガラスを割るためには専用の脱出用のハンマーが必要です。

備え付けのハンマーがない時は、
焦らずに車の中に水が溜まるのを待ちます。
車の外の水位と中の水位に差があるとドアは開きませんが
水が溜まって車内と車外の水位の差がなくなると水圧が低くなりドアが開きやすくなります。
怖いとは思いますが、肩や首まで水が浸かり、外との水差がなくなったところで、
一気に力を入れてドアを開けて脱出をして下さいということでした。

もしもの時のためにクルマには脱出用ハンマーを装備しておきましょう。
その上で、大雨の時や大雨が降った後、
クルマでアンダーパスを通る時には気をつけて下さい。

今週のテーマは「運転はネガティブな感情に影響される」。
コメントは広島大学大学院 人間社会科学研究科 経済学プログラム
教授 角谷快彦さんでした。





クルマを運転する方は、イライラや怒りといった感情が
安全運転を阻害すると感覚と経験から思っているのではないでしょうか。
しかし、これまで科学的にそのことは証明されていませんでした。
最近になって角谷教授の調査・研究で証明されたのです。

研究チームは、つばめ交通株式会社、
TDK株式会社、NECなどの協力を得て調査を実施しました。

つばめ交通のドライバーから無作為で15名を抽出し、
TDK開発の生体センサーを装着してもらって心拍の揺らぎを計測。
その心拍の揺らぎにNEC開発の特殊なアルゴリズムを当てて、
感情・怒り・悲しみ・リラックス・幸福といった感情を読みとります。
そして、15日間にわたってその感情と勤務中の運転記録とを擦り合わせて分析。
その際、年齢・学歴・年収・婚姻状況など社会経済変数をコントロールしました。





その結果、明らかになったのが5つのこと。

<1> 
怒りと悲しみの感情はスピード超過のリスクを上げる

 
<2>
ニュートラルな感情はスピード抑制に寄与する


<3>
幸福感やリラックスなどの感情はスピードに影響しない


<4>
乗客を乗せて走る時間の長さや売り上げの大きさは走行スピードが増す要因になる


→ この点については、売り上げが大きい、つまり乗客を乗せて走る時間が長いほど
  乗客を目的地まで早く送りたいという気持ちから
走行スピードが増す時間が多くなる可能性がありそうです

<5>
個人収入、世帯資産の大きさ、勤務時間の長さはスピード減の要因になる。


→ この点については、経済的に余裕があると気持ち的にも余裕が生まれる
  ということが考えられるかと思います。
  そして、勤務時間が長いとゆとりを持って運転しようとする意識が強く働くのかもしれません。
  反対に短時間で稼ごうと思えば緊張が高まりイライラしやすくなるかもしれません。





角谷教授からのアドバイスは、運転してる最中に急に悲しみの感情が湧いてきたり
イライラの感情が湧いてきた場合は、可能であれば車を路肩に止めて深呼吸すること。
また同乗者が深呼吸しよう、リラックスしようと声をかける。
それだけで、かなり速度超過のリスクを減らすことができるし、
安全運転につながる可能性が高いと考えているそうです。

調査対象がタクシー運転手の方たちなので、
勤務時間の長短や売り上げなど、プロに関する部分もありましたが、
一般のドライバーは、ネガティブな感情の部分、
怒り、イライラ、悲しみ、悩み、考え事がある時は、
運転、気をつけてください。




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