2014年10月9日

10月9日 福島の温故知新を伝える季刊紙『板木』4

福島で、昔から続く年中行事と、人々の営みを伝える小冊子『板木』についてお伝えします。

版木は、年4回発行され、四季それぞれの行事や、福島の風習を伝えていますが、それと合わせて、毎号「人」に焦点を当てたインタビュー企画もあります。編集長・木下真理子(きのした・まりこ)さんは、
「東日本大震災の被災地としての福島を、直接的に取り上げることは、しない」と、おっしゃっているんですが、ただ、最新号・6号のインタビュー記事には、震災後の福島のこれからを考える上で、とても意味のあることが書かれています。

◆過去と今を繋ぐことが、未来へ繋がる
『気になるあの人』という特集が毎回最後のページにあるんですね。これは日本の伝統文化を受け継ぐ職人さんにお話を聞く企画で、6号では和菓子屋さんの女性のお話だったんです。須田輝美すだてるみさんという女性。和菓子1個40円をすごく細かい作業の手作りで作ってらっしゃる方。お父さんがお店をやってらっしゃって、それを継いだ娘さんが職人さんとしてやっているんですけど、話を聞くと、お父さんは元々深川にお住まいだったそうです。でも東京大空襲で焼け野原になってしまったため親戚を頼って東北に移ることにしたんです。当時はまだ16歳くらいだったらしいんですが、和菓子の道を志して福島市にお店を建てることに。この須田さんという女性は、しゃべっているとお父さんの血を受けて、話し方が完全にちゃきちゃきの江戸っ子なんです。全然福島っぽくなくて、てやんでえなの。でもお店にお客さんがいらした瞬間に、べらべらの福島弁に変わるんです。それが私は、まさに今福島で起きていることの象徴なんじゃないかなと思っていて、例えば避難して移られる方がいらっしゃるんですが、ああこういうことなんだとすんなり思えたんですね。それは震災に限らず色んなきっかけの中でそれぞれの人生があって、地域があって、今があるのだと思うので、色んな場面や景色や人の話をあるがままに伝えていって、読む人の何かきっかけになったらいいなと思うんですけども。やってみて思ったのは、過去を知るということは今の自分にすごく大事なんだなと思うようになったんですね。それって言うのは自分たちがどういう経緯でここにいるのかを知ることが、自分が今いる地点が点だとして、それは過去と繋がることで線になる。それは未来にどうつなげていったら良いのかの指針になる。それが過去にあるんじゃないかな。点だけでは未来に向かってどうつなげていったらいいか分かりにくい。特に今この混沌とした、ぐるぐるとみんなが色んなことを迷っている中で先をどういう風に見ようと思った時に、実は過去にそのヒントがあるという風に思えるんですよね。板木を作っていて。

 
『板木』は、福島市の昔の暮らしを体験できる施設『民家園』のイベントとして行われている年中行事を紹介しています。その民家園では、今度の10月18日(土)は、福島の米作り農家の年中行事『収穫祭』が行われると言うことです。参加自由ということなので、興味のある方は情報チェックしてみてください。

★『板木』購入方法について

★福島市 民家園

2014年10月8日

10月8日 福島の温故知新を伝える季刊紙『板木』3

引き続き、福島で、昔から続く年中行事と、人々の営みを伝える小冊子『板木』についてお伝えします。

春・夏・秋・冬、年4回発行される板木。春に発行された4号が「田植え」。初夏に発行された5号は「七夕」の特集でした。そして8月末に発行された最新号がこちら。



実りの秋!という感じの、鮮やかな稲穂の色の表紙です。というわけで最新号は、収穫の季節をめぐる、様々な行事の特集。板木 編集長・木下真理子さんに伺いました。

◆実りの秋に感謝する行事
最新号6号は「いただきます〜収穫祭」の特集。田植えに続く稲作の話なんですけど、収穫に伴ってお米になるまでの祝い事があるのでそれを伝えています。例えば「庭払い」。要するに稲刈りから脱穀までという村の一大行事のあと、村の人たちを集めてお疲れ様会があるんですね。それが庭払い。その中で食べられて来たものが郷土料理に変わって行っているみたい。しんごろうもちという会津の郷土料理で、取れたお米をつぶして「はんごろし」にする。それをちょっと粒が残る状態で棒にさしてお味噌をつけていろりで焼いて食べたり。それが会津だとしんごろうもち、秋田だときりたんぽ、長野だと五平餅・・・という風に郷土料理に変わっていくそうです。




板木によれば、収穫の後の「庭払い」が各家庭で行われた後、9月末から10月にかけて、家庭ではなく集落単位で行われるのが、「秋祭り」なんだそうです。今週末の11日は、福島稲荷神社の例大祭がありますが、これがまさにそれ。今年も福島駅前には、たくさんの山車(だし)や、露店が並ぶということです。

そのほか、板木・最新号について、編集長・木下さんに教えて頂きました。

◆福島の若い女子の目線も
重芳さんという民家園の物知り博士がいるんですが、それと福島の若い女子大生を対談させるという企画があって。年の差が半世紀以上あるんですね。私たちからしても女子大生ってもはや未知の世代になってくるんですけど、彼女たちには彼女たちなりの考え方がある。ちゃんと世の中を冷静に見ていて、自分たちがどういうことをしていきたいのかというのをちゃんと考えている子たちもいるんだなと思わせてくれるページですね。今回は福島大学の女の子に参加してもらったんですけど、この子は服屋さんに勤めていて、民家園は土がいっぱいでのどかな場所だからそれになじむような格好で来てね、と伝えたんですが、私からすると全然なじまない格好で来た(笑)でも彼女としてはだいぶ押さえ気味だと。その浮きっぷりが面白くて。でも実は話を聞くと実家が農家で、昔はおじいちゃんにくっついて畑にいたんだと。鍬を持たせると腰つきがやけに良かったり躊躇無く畑を耕してくれた。(しげよしさんの話を)聞きながらメモを取らないんです。これはヤバいなと思って。原稿も書いてもらう約束なので、ただ写真を撮ってその様子を私たちが原稿にするんじゃなくて彼女が感じたことを原稿にするんですが、原稿が上がって来たらちゃんとしげよしさんの話を捉えていて。むしろ私や市役所の担当の安斎さんはメモをいっぱい取っていたんですが、実はメモを取らずにしげよしさんと向き合ってお話を聞いている彼女の方が、本当は言葉を捉えていたんじゃないかなと原稿を読んで思えたりして。私たちにとっても、次の世代の人たちとの関わりを持つことが大切だと思えるんですね。
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パーソナリティ 鈴村健一

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