2014年6月3日

6月3日 福島県飯舘村、酒井政秋さん(2)

今週は、渡辺一枝トークの会『福島の声を聞こう!』から、
福島県飯館村、酒井政秋さんの声をお届けしています。

原発事故の影響で、現在は福島県伊達市の仮設住宅に暮らす酒井さん。
震災後、仮設住宅で暮らす村民のための「傾聴ボランティア」を行う一方、
村民同士の対話の場「かすかだりの会」、会長も務めています。

「かすかだりの会」は、2012年7月に活動を開始。
およそ月1回のペースで、村民が本音で話し合える場を設けています。


◆「会話ができない」現実
友達が亡くなったのを目の当たりにして、生かされた命をどうつないでいくかというのを考えるようになったのが、2012年のはじめぐらい。仮設住宅に訪れるようになり、おばあちゃんが陽だまりのベンチに座って「会話ができない」「帰りたいといえば怒られる」「本音が言えない」というのを聴いて、それが傾聴ボランティアのはじまりだった。
仮設住宅はプライバシーもなにもなくて、となりのテレビの音や足音など、ものすごく響く。なにを言っているのかも聞こえる。夫婦喧嘩をしたりすると、隣のひとが住みづらい環境になってしまう。クレームを言うとコミュニティがどんどん悪くなってしまう。
若い人達の間でも葛藤や、本音で話し合えない部分、家族間での話し合いができない、子どもたちのことが心配、などがある。
2014年3月には、飯舘村の村民全員を対象にして、対話の場をイベントとして立ち上げて、集まった。若い人は20代、年配者は70代まで。幅広い世代の人が来てくれて、家族間の対話や、子どもを交えた対話であったり。なかなか本音が言えなかったというのは、お互いがお互いを思いやりすぎて、これを言ったら相手が傷つくんじゃないかという想いから、本音が言えなかったんじゃないかという想いが共有できた。もっとこういう話し合う場を多くもうけていけば、「分断」などがなくなって、村民目線の復興につながるんじゃないか、と感じる。


「かすかだり」とは、飯館村の方言で「生意気なことを言う」という意味。家族にすら言いたいことが言えない状況の中で、「生意気を覚悟で」若い世代がともに交流し、考えていこうと、あえて、この言葉を会の名前にしたといいます。

※今週の土曜日、6月7日にも、福島市内で「かすかだりの会」が行われます。
今回は主に、子どもを持つお母さんに集まってもらって、日頃考えていること、感じていることを語りあう予定です。詳しくは「かすかだりの会」オフィシャルサイトをご覧ください。

2014年6月2日

6月2日 福島県飯舘村、酒井政秋さん(1)

今週は、渡辺一枝トークの会『福島の声を聞こう!』から、
福島県飯舘村、酒井政秋さんの声をお送りすます。

飯館村は福島第一原発の事故の影響で、いまも全村避難が続いています。
酒井さんは1978年生まれ。高校まで飯館村で育ち、その後東京に。
2006年村に戻り、震災当時は、地元の縫製工場に勤めていました。

現在は、仮設住宅をまわって住民の声を聞く「傾聴ボランティア」を行う一方、
村民同士の対話の場「かすかだりの会」を主宰。忙しい日々を送っています。
けれども、震災直後は精神的に追い詰められ、心を閉ざす日々が続いたといいます。


◆心を閉ざす日々
2011年の3月11日から人生が一変した。わたしは地震を会社で体験した。ものすごく大きな地震で、隣のおばちゃんが腰を抜かして、それを背負うようにして外に出た。立っていられないようなすごい地震だった。幼なじみが南相馬の沿岸部に嫁いでいたので、心配になってメールをしたが、その幼なじみは津波でやられて、遺体で発見された。わたし自身も遺体安置所をめぐって、無数の棺桶を開いて友達を探したりした。本当に異様な空間だった。おびただしい棺桶、本当に五体満足なものはあんまりなかった。そういうのを目の当たりにして、精神的にどんどん落ち込んでいった。
飯館村も放射線量が高く、自宅の近くでは90マイクロシーベルトぐらいはあったと思う。わたし自身も原発事故の被災者になった。避難しなくてはならなかったが、幼馴染のこともあり、精神状態がほぼ思考停止の状態になって、仮設住宅ができたのが7/30まで飯館村に残った。生きているのか死んでいるのかわからなくなって、毎晩のように嘔吐を繰り返して、本当に眠れない日々を過ごした。そんな中、周りの人達がとても怖く思えた。そこの仮設住宅は飯館村の村民たちが住んでいるが、外で井戸端会議をしているのが、全部自分の悪口に聞こえてしまう。そんな精神状態に追い詰められた。2011年はほとんど仮設住宅の中で暮らしていました。


飯館村は平成の大合併でも近隣の市町村と一緒になることなく、独自の村づくりを進めてきました。合言葉は「までいな村づくり」。「までい」とは、地域の方言で「真心をこめて丁寧に」という意味。
農業と畜産を中心としたスローライフを目指す飯館村を襲ったのが、福島第一原発の事故でした。

明日も酒井まさあきさんのお話、村民をつなぐ「かすかだりの会」について伺います。
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パーソナリティ 鈴村健一

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