2012年6月6日

6月6日「集会所に壁画と塔を作る意味」

東北大学大学院工学科教授・五十嵐太郎さんは昨年、南相馬市の鹿島地区に建設する仮設住宅の集会所の基本設計に携わりました。
五十嵐さんが提案したのは、集会所に「壁画」と「高い塔」を建設すること。
実用性には乏しい「壁画と塔」を作ることにどんな意味があったのか、伺いました。

◆塔のある町
 福島県内の設計事務所から、南相馬市の仮設住宅地の集会所について打診を受け、「記憶に残る」ということをテーマに掲げた。
 提案したのは集会所に10m四方の大きな壁画を描くこと。もう一つは「塔」。シンボルのようなもので実用性は全くない。
 農家が点々としているようなエリアに500棟くらい仮設住宅が立つが、仮設住宅は基本的に1階建てなので、同じタイプの仮設住宅が並ぶ均一な風景になる。例え仮設住宅で2、3年暮らして別の場所で生活を始めても、「塔のある町に暮らしていた」という記憶が残るんじゃないかと思い、提案した。住処が奪われて、その後2〜3年が単に通過点でなく、そこにも何か特徴のある、記憶に残るような風景になる。
 塔は8mくらいで、周りに何にも無いので十分目立つ。だいたい仮設住宅は50戸くらいで一つのブロックができていて、全部で10個ぐらいのブロックがある。同じものが反復して並んでいるのに対して、1個塔が立つと、塔とそれぞれの建物の方角や距離が違うので見え方が違う。そうすると塔との関係が全部違うものになるので、場所の意味が変わってくる。場所に固有性が生まれる。


◆着想のヒント
 もともとの発想の源は、大阪万博の時に「太陽の塔」が作られて、同時期に千里ニュータウンができた。以前千里を取材した時に、千里から「太陽の塔」が見えるのが心のよりどころになった、というのを聞いた。そこから着想した。
 今回(東日本大震災によって)5万戸くらい仮設住宅ができている。後からアートが入ったところはあるかもしれないが、最初から壁画と塔があるのはここだけだと思う。

2012年6月5日

6月5日「震災の記憶を呼び起こす建造物『震災遺構』(2)」

震災で倒壊した建造物や、陸上に乗り上げた船など、震災の記憶を留める建造物のことを「震災遺構」といいます。
その「震災遺構」を撤去するべきか、それとも保存するべきなのでしょうか。

建築と社会の関連性を研究している東北大学大学院工学科・五十嵐太郎教授は、宮城県女川地区の倒壊した建物を保存するプロジェクトを立ち上げました。
女川の「震災遺構」の現状を、五十嵐さんに伺いました。

◆保存するべきだと感じた
 女川は昨年4月1日に初めて訪れた。一般的に木造の家屋が津波で流れるというのは映像にもさんざん映って共有していると思うが、女川では鉄骨や鉄筋の建物ですら基礎ごと引っこ抜かれ、20m近い津波が来たので、別のところに流れて横倒しになるという、ちょっと想像できない壊れ方をしていた。
 「ここまでひどい建物の壊れ方をするのか」と驚き、「これは遺すべきだ」と思った。津波専門の学者が、世界的にもほとんど例がないと言っていたが、そういう意味でも、これは女川という小さな町だけのものではなく、世界史的な事件に接続してしまった、と感じたから。
 これは木の瓦礫ではないので、残る可能性がある。近代以前は遺したくても、木のものは焼けたり腐ったりしてしまったが、近代以降はコンクリートや鉄の塊。誰かに頼まれたわけでなく、自主的に残すためのプロジェクトを研究室で立ち上げた。


◆壊れた建造物を遺す理由
 女川の復興関係の委員会でも(壊れた建造物を)遺したほうがいいという意見があり、4つは保存することになった。特に女川の場合、「倒壊したコンクリートや鉄骨の建物があるエリアは市街地として復活しない」ということを早いうちに決定した。ある種メモリアル公園にするとしたので遺しやすかったということが一つと、片付けないという選択をしたというのが実情。
 町としてはどう残すかということより、「復興」や「仮設」のことが先にあって、片付けないという選択をしたということだと思う。




五十嵐さんの著書「被災地を歩きながら考えたこと」にも、さまざまな「震災遺構」の写真が掲載されています。
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