2014年4月3日

4月3日 東北食べる通信2月号 東松島の海苔漁師4

引き続き「東北食べる通信」2月号で紹介された、海苔漁師・相澤太さんのインタビューです。

津波で、海苔作りの施設をすべて失った相澤さんですが、震災から丸3年を経て、ようやく海苔作りを再開。食べる人に、本当に美味しい海苔を届けるため、試行錯誤の日々を送っています。

◆海苔のことを考えると眠れない!
海苔には育苗という行程がある。人で言えば赤ちゃん。赤ちゃんの育て方で将来が全部変わる、それが海苔。まずどういう海苔を作りたいかで、種付け自体も工夫が必要。顕微鏡を使って種付けをする世界。100倍、200倍の視野で見て、何個胞子を付けるかという。種の厚さには幅があって、50個つける人もいれば100つける人もいる。俺は薄い(種を付ける数が少ない)。
昔は竹を立てて網を固定して、潮の干満の差を利用して水に浸かったり出たりさせていた。唯一海上で海苔だけが乾燥に耐えられる仕組みを持っている。それが浸透圧調整。細胞の中に水を出し入れを自由にできる。空気中に浮かべば海水中の雑菌が死ぬが海苔だけが助かる。その仕組みを使って雑菌を駆除しながら海苔を育てることを繰り返すと、浸透圧機能を強化され、色んな環境に耐えられるようになる。例えば大雨が降っても耐えられる。
ただ、それを赤ちゃんの時にやりすぎたらだめになるし、美味しい海苔にするためにはある程度厳しめに育てる必要がある。だからその時期は寝れないんです。育苗…海苔の赤ちゃんの時期は20日間くらいしかなく、いかにその二十日間で自分が育ってもらいたい種にするか、そう思うと寝れない。家に居ても眠れないので行くんです、アホなんで(笑) 行って船で寝ていたり、何もできないけど船の上で寝ているんです。


海苔の生育が気になって、船の上でそのまま寝てしまうこともあるという…。
相澤さんを「海苔の顔が見える職人漁師」と紹介しましたが、こうして四六時中、海苔のことを考えているうちに、顕微鏡でのぞいた、海苔の赤ちゃんの「顔が見える」ようになった、と相澤さんは語っています。

明日も、東北食べる通信2月号から、海苔漁師・相澤太さんのお話、お届けします。



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2014年4月2日

4月2日 東北食べる通信2月号 東松島の海苔漁師3

引き続き「東北食べる通信」2月号で紹介された、海苔漁師・相澤太さんのインタビューです。

本当に美味しい海苔を食べてほしい、という想いから、ゼロから企画書を書き、スーツを着て、営業に回り、イオンなど大手量販店の販路を開拓した相澤さん。

ようやく、努力が実を結び始めた矢先、地元、宮城県東松島市・大曲浜も、3年前のあの津波に襲われました。

◆やりかけたものは、やる。
家族は全員無事で、その頃はそれだけで幸せだった。大曲浜には150世帯・1500人が住んでいたが、5人に1人が亡くなった。当時は家族が助かっただけで恵まれていたと思ったけど、でも5日くらいしたら、やっぱり俺は他で仕事できないなと思った。とにかく海で仕事しようと決めたが、海苔は経費が掛かっていた。祖父の代からちょっとずつ設備投資して、やっと工場を立て、三代に渡ってやってきたものが一瞬でなくなった。土地も家も無くなり、とうてい借金して海苔漁を再開するのは無理だと思った。1週間くらいで仙台に電気が戻ったので、すぐに仙台のネットカフェに行きワカメ養殖を勉強して、ワカメに必要な道具や漁具を勉強して戻って来た。後輩には、「俺らが一番最初に復活する。ワカメだったらたぶんできるぞ」と言った。そして5月に、ワカメ養殖に手を上げた全員で道具を作り、その年の11月からワカメ養殖をみんなで始めた。ただ、あの時は福島がどうなるかが分からず、俺は子どもに安心して食べさせられるものしか作らないと考えていたので、「これは賭けです、もしも放射能が出たら全部捨てるつもりでやりましょう、そうじゃなきゃやらないでください」と言った。検査の結果、放射線は出なかった。大成功。すごい水揚げがあった。陸に上がらなくて済んだ。うちの浜では亡くなられた人、後継者のいない人は別だが、ずっと海で収入を得ていた。でも、海苔の市場を変えてもっと美味しいものを作るという目標はやりかけだった。震災があろうがなにしようが、やりかけたものはやる。決めていた。ワカメで資金をためて海苔を復活させようとやりだした。


震災前 19人いた東松島・大曲浜の漁師は、震災で9人に減少。現在、相澤さんをはじめとした海苔漁師は、国の補助事業を受け、海苔作りを続けています。ただ、この事業は3年と言う期限つきで、補助を受けられるのは、あと1年です。



明日も、東北食べる通信2月号から、海苔漁師・相澤太さんのお話、お届けします。

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パーソナリティ 鈴村健一

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