2013年9月6日

9月6日海と陸をつなぐ場所、防潮堤を考える(4)


今週のテーマは「防潮堤」。
「防災の日」に東京で行われた、東北の防潮堤計画について考えるシンポジウム。
主催したのは、日本自然保護協会とNPO法人「森は海の恋人」です。
第一部では、気仙沼市の牡蠣漁師で、「森は海の恋人」代表・畠山重篤さんと
広島大学准教授、生物海洋学者の長沼毅さんが対談しました。

二人の話は、「防潮堤」から「海と森のつながり」、さらに「食糧問題」に及びます。

◆畠山重篤×長沼毅、「森と川と海の関係」
(重)いま防潮堤をどうするかという問題があるが、巨大な防潮堤を海辺に張り巡らせてしまうということは、森と海を遮断してしまうことになり、生態系にもかなりの影響がでると思う。
原発のを見ると、地下水ってものすごい量が海に流れでているんですね。
(長)海底湧水といって、海底から真水の地下水がゆる〜く湧いてるんだけれども、その量って見積もるのが難しくて、たぶん川から入るとのと同じくらい海に地下水が入っているんじゃないだろうか。
(重)そういうものを防潮堤がすぱっと断ち切ってしまう可能性もあるね。
(長)防潮堤は砂浜の上にちょこんと乗っけるんじゃなくて、基礎を作るわけだから。そういった地下水が海に湧きだし、魚が水を飲みにくるという場所があるらしい。そういったことがこれから重要になってくるかもしれない。それを遮断しちゃうかもしれない。
(重)もちろん防災が第一だが、海辺で生活しようとするときに、堤防はできましたが人はいなくなりましたじゃ、なんの意味があったか、ということになってしまう。
(長)なにを守りたいか、ということだよね。
(重)いま予算をつけて、早く予算を使ってしまわなければという雰囲気があるが、この自然のメカニズムを勉強してから設計を考えてもらいたい。日本という国は、どこにいってもお魚や貝がとれる。それは塩水だけでとれるわけではなく、その背景が重要だということ。森と川と海の関係さえちゃんとしておけば、魚介類海藻が黙ってたってちゃんととれる。食料問題にもつながってくる。
(長)魚があればわたしも酒が飲めますからね。だいたい、お米の最大の消費者は酒蔵ですからね。
(重)広島なら酒の産地だもんね。だてに酒飲んでるわけじゃないですよね。
(長)そうですよ、国家のためですよ!


「森は海の恋人」という言葉通り、深い森と豊かな海は、切っても切れない関係だと畠山さんは言います。そして、海岸や砂浜は、まさに「森と海をつなぐ場所」。そういう大事な場所に、「巨大防潮堤」が建設されようとしていることを、ちゃんと理解してますか?と畠山さんは訴えていました。

また、会場からは「必要なのは時間」という声も。「千年に一度の津波への備え。予算や行政の都合でなく、じっくり時間をかけて、この問題を考える必要があるのでは?」という意見も出されました。

気仙沼市民による「防潮堤を勉強する会」は、勉強会の様子や、専門家/行政の担当者とのやりとりをHPで公開しています。

2013年9月5日

9月5日 海と陸をつなぐ場所、防潮堤を考える(3)


今週のテーマは「防潮堤」。先日東京で開かれたシンポジウムでは、東北の防潮堤計画の現状について、さまざまな議論が交わされました。この中で二人の専門家が、「防潮堤」を「海の生態系」の視点から語りました。首都大学東京准教授の横山勝英さん、そして京都大学名誉教授、田中克さんです。

◆首都大学東京 横山勝英准教授
震災後に気仙沼で、震災一か月後から水質調査を始めて、毎月船を浮かべて、プランクトンの分布などを調べてきた。その中で海の生産力が強くて、夏場に大発生する赤潮が出なくなって、逆に春に珪藻類が大発生して、それがどうも牡蠣の成長を支えているようだとわかった。
牡蠣が半年から1年くらいで、出荷できるサイズに育ったということだが、それが海の生産性が良好になったということ。つまり、自然は津波でダメージを受けていない。わたしたち人間はすごく弱いので、津波で大変なことになってしまったが、津波の前よりリフレッシュした側面があるとみている。
※生物を保全するということではなく、恵みを得て生きているということなので、海をちゃんと生かすようなことをすることが、わたしたちの暮らしに繋がっているのではと感じた。

◆京都大学 田中克名誉教授
日本鰻がとうとう絶滅危惧の指定を受けたというのは、今年2月のニュース。でもこれは日本鰻だけの話ではない。もっと身近な話としては「あさり」がある。あさりはかつて、日本全体で16万トンくらいとれていたが、いまは3万5千トンほど。日本中かつてどこでもとれていたのが、ほとんどとれなくなった。
日本は近代化の中で海辺を埋め立てて、宅地や農地にした。そこが津波で全部流れた。ところが、生き物たちはもっと逞しくて、そういうもとに戻った海の中で、あさりが増えだしている。その海に、いま「防潮堤」がつくられようとしている。
生き物は、われわれよりはるかに長い歴史を持ち、生きるための賢い知恵を持っている。
これをわたしたちがきちんと考えて、防潮堤をどうするか、考えなければいけない。それは今回の震災の問いかけだったと思う。(巨大防潮堤が)国民的な議論もないままに、東北に出来てしまえば、東南海/南海地震、日本海にも地震は起こるから、日本列島防潮堤鎖国の、世界の笑いものになり、そのつけは次の世代にまわされてしまう。


震災後の調査で、気仙沼市西舞根の湿地帯に、絶滅危惧種の日本鰻や、メダカ、鮎、あさりが戻ってきていることが報告されています。人間社会に大きな被害をもたらした巨大津波ですが、海はその津波でリフレッシュして、生き物が戻りつつあるというのは、なんとも皮肉な話。自然の大きなメカニズムは、わたしたち人間の尺度を大きく超えています。

津波に備えることはもちろん重要。けれども、「巨大防潮堤」が海や生態系にどのような影響を及ぼすのかを検証することも、子供たちの将来を考えたら、同じくらい大切なのではないでしょうか。
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パーソナリティ 鈴村健一

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