2016年12月1日

12月1日 群馬大学・片田敏孝教授(2)


今日は、防災のスペシャリスト、群馬大学大学院教授で広域首都圏防災研究センター長、片田敏孝さんのインタビューです。岩手県釜石市で長年防災教育に携わり、現在は全国各地で防災の取り組みを指導。「命を守る」「人が死なない防災」を旗印に活動を続けています。

先週火曜日の「福島県沖を震源とする地震」で、宮城県仙台港周辺地域には「津波1メートル以下」を示す「津波注意報」が出されました。けれども、実際仙台港に押し寄せた津波は、最大1.4メートル。気象庁は、津波の襲来後に、この地域への「津波注意報」を、よりレベルの高い「津波警報」に切り替える事態となりました。

「津波1メートル以下」を示す「津波注意報」に対して、わたしたちはどのような避難行動とるべきなんでしょうか?片田さんに伺いました。

◆「津波の精度は倍・半分」
津波というのは、潮位変化20センチ以上を「津波」と定義する。20センチ以上1メートル未満のときに「津波注意報」が、1メートルを超えて3メートルぐらいまでのときに「津波警報」が出る。ただ、今回気象台は1メートル以下だろうと予想し、宮城県は津波注意報が出たが、実際1,4メートルの津波が来たということで、慌てて津波警報に切り替えたということもあった。津波というのは非常に不確定な現象でちょっとした海底地形や海岸線の地形で津波の影響は変わる。そして局所的にはものすごく大きくなることも知られている。イメージしていただくとわかると思うが、池の中に石を2つ投げ入れると波紋ができる。2つの波紋は何事もないようにすれ違っていくが、例えば右から5メートル、左から5メートルの津波が来て、出会ったところは「足し算」になる。そこはピンポイントで「10メートル」になる。そして何事もなかったように、また5メートル、5メートルですれ違っていく。そうすると、海岸線の地形が複雑な場合、あちらこちらに跳ね返ったりして、たまたまそのポイントで二つの波が合わさったりすることがあって、そういうところではピンポイントで10メートルなんてこともあり得る。
例えば岩手県の沿岸を思い起こしてほしい。北の端から南の端までリアス式海岸で、奥まったところでは津波が大きくなったり、岬の突端では津波が大きくなりやすい傾向があったり、地形要件によって、すごく変わる。例えば北海道南西沖地震という奥尻島がやられた津波があった。青苗地区はおおむね5メートルくらいの津波だったが、重内というところでは23メートルを超える津波を観測した。ピンポイントでそういう数字が出てくる。
だから注意報の場合も、計算値としては1メートル未満というふうに出たのかもしれないが、その最大値をとっても「注意報」だったのかもしれないが、でも予測が必ずしも全部当てきれるわけでもないし、それほどの解像度があるわけでもない。場所によってはものすごく大きいものがでる可能性があるとういことを考えると、実は津波注意報でも沿岸部の方々は十分に注意して対応する必要があるとわたしは考えている。
「津波の精度は倍・半分」という言葉があって、津波は予測された数値の倍であっても正しいし半分であっても正しい、その程度の精度なんだということを心得て、1メートル以下だから大丈夫と思わずに、やはり大きな地震があって海が荒れるわけだから、やはり万が一を考えて逃げること。本当に来なかったらよかったね、といえば済むこと。そう言える自分であるか。やはり避難の問題は人間側の問題だなと考えて、その日その時の行動を考えてほしい。それが次の世代に、東日本大震災の教訓を引き継いでいくことだと思う。


「津波の精度は倍・半分」と心得よ。予測された津波の高さは倍かもしれないし、半分かもしれない。そのくらいの幅をもって、避難行動をすることが「命を守る」ことにつながる。いざという時のために忘れないでおきたい言葉です。

★関東にお住いの方は放送から1週間、「ラジコ」の「タイムフリー」で放送が聞き返せます。こちらからどうぞ!

パーソナリティ 鈴村健一

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