2017年6月27日

6月27日 開沼博(2) −福島に関する差別・偏見−

今週は福島学のスペシャリスト、立命館大学准教授、開沼博さんのインタビューをお届けしています。

開沼さんは、福島県いわき市出身。2006年から福島第一原発周辺の地域研究を手掛け、震災後は福島の復興の現状を調査、発信を続けています。そんな開沼さんが中心となって呼びかけているのが「福島関連デマを撲滅する!」というプロジェクト。福島に関する差別や偏見をなくすことがその目的です。

◆ネガティブな部分だけを切り取って「かわいそうがる」
差別というと非常に問題が重くなってしまうが、わたしたちはそろそろこの問題についても扱っていくべきじゃないかと思う。なにが問題なのかというと、これは「足を踏まれた側しか痛みがわからない」ということ。足を踏んでいる側は、平然と普通に悪気なくやっていたりするのかもしれない。例えば福島の浜通りで幼稚園をやっている園長先生が、すごく嫌だったこととして教えてくれたのが、毎年西日本の幼稚園から子どもたちがどんぐりを送ってきたり、積み木を送ってきたり、野菜を送ってきたりしようとすると。福島の地元としてはいろんな努力をして、外で遊んでいるし、野菜も食べるようになってきているし、砂場の砂を全部入れ替えたりと細かい配慮をして自分たち自身で安全を確保して、これは安心できると確信をもってやってきた。もちろん原発事故があった場所であることは確かですが、そこのネガティブな側面だけを切り取られて、そして勝手に憐憫の情を向けらえるというのは腹立たしく、かといって相手が悪気なくやっていることだからなにも言えないという、何重にもねじれたつらい思いをされている。それは福島のひとつの「障害」といってもいいのかもしれない。「障害」の部分だけをクローズアップするということは、それを眼差す側としてはわかりやすいのかもしれないが、「障害」の部分をケアするのは大切なことだが「障害」の部分だけがその人ではない。その人は障害を抱えている部分もあるし、それを克服してきた部分もあるかもしれない。そういう物語とは全く別に、人生の物語を編んでいるわけで、そういう全体像をみながら全体像を見ていかないと、差別の問題は解決しないのかもしれない。具体的にどうふうにやるかというと、事実を正確に把握していくこと。思い込みで「かわいそうだな」とか「こうに違いない」と決めつけないで、最新の状況がどうなっているのか、相手はなにを求めているのかを把握していくことが重要だなと思います。


福島の方々に対する「差別」や「偏見」は6年経った今も、“気づかずにやっているケースがある”ということ。ネガティブな部分だけを見て「かわいそう」と決めつけない。障害を克服できた部分をきちんとみることが大事ではないでしょうか。

今週の『LOVE&HOPE』は開沼博さんのインタビューをお届けしていますが、あなたからの「インタビューの感想、ご意見、メッセージ」も募集しています。福島に関する、差別や偏見について、ご意見お聞かせください。メッセージをいただいた方の中から抽選で5名様に、3000円分の図書カードをお送りします。メッセージフォームからお待ちしています。(当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます。)

パーソナリティ 鈴村健一

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