2017年6月29日

6月29日 開沼博(4) −ふるさとへの帰還−

今週は福島学のスペシャリスト、立命館大学准教授、開沼博さんのインタビューをお届けしています。

福島県ではこの春、浪江町など4つの町村で帰還困難区域を除き、町民村民への避難指示が解除になりました。今回避難指示解除の対象となったのは、3万2000人。避難区域は、2013年に再編された時の3分の1に縮小しました。

◆多くが日常に戻る中で、孤立化してしまう人がいる現状
福島では徐々に避難指示が解除されていまに至っています。よくニュースで聴くのが、福島で一度人が避難した地域で、「帰ってきていいよということになったんだけど、結局まだ1割も帰ってきていないんです」、という言い方が全国ニュースなどでされるんです。直近で言うと、この春に避難指示解除になった富岡町とか浪江町などですけど、しかし1割も人が帰っていないという言い方がされる一方で、実は最初のころに避難指示が解除されて人が帰るようになった広野町では8割の人が町に戻ってきている。それだけでなく福島第一原発では毎日6000人の人が働いていたり、地域にはいろいろな産業も生まれはじめている。そういうところで働く人が、元居た住民と同じかそれ以上の戻ってきているような自治体もあるんです。なのでそういったところも含めていくと、ジブリのナウシカみたいな一度汚染されたところには人が住めなくて永遠にだめなんだ、という理解の仕方をしようとすれば、わたしたちは単純に楽なのかもしれないけど、現実はもうちょっと複雑。被害がないというつもりはもちろんないが、再生していく方向に向かって行く状況も生まれています。
時間の経過とともに多くの場所は当初非日常だった場所が日常になり、特殊な場所が一般的な普通の他の場所と変わらないよねという場所になっていくんです。重要なのが、その中で孤立してしまう人というのがいて、時間の経過の中で非日常が残るということはそれだけ傷が深かったんだなということだし、むしろ孤立する結果、孤立感にさいなまれてより傷が深くなっていくという部分もあると思う。それは多くの場所が立ち入り出来るようになったんだけど、しかし放射線の量が高い場所が未だに人が入れない状態にされている。そういう場所も全体から見ればごくごく一部であるけれど、だからこそ孤立化、固定化されてしまった被害というのを丁寧に見ていく必要があると思います。


広野町といえば、Jリーガーも通っていたサッカーのナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」のある町。震災後は原発事故の対応の拠点となっていた場所ですがその広野町には今、8割の人が戻ってきているということです。その一方で「まだ1割しか戻ってきていない」町があるのも事実。6年が経ち、細部まで解像度を高めてアップデートされた情報を伝えていく必要があると改めて感じさせられました。

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パーソナリティ 鈴村健一

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