2017年12月18日

12月18日 福島の放射線教育の今(1)

今週は、福島県で活動する内科医、坪倉正治先生のインタビューをお届けします。

坪倉先生は、震災直後から福島県に通い地域の皆さんの被ばくと向き合ってきました。現在は相馬市相馬中央病院など、県内4つの病院で診療にあたる他、地元の小中学校や高校、そして子育て中の親御さんに向けて放射線教育を行っています。

福島県内の放射線教育の現状。まずは小中学校です。
  
◆放射線教育が人によって三者三様
子どもたちの知識が増えてきたかというと、そこはそれで難しくて、もちろん定期的に授業をする放射線教育が福島県内では義務づけられているわけだが、これぐらいだったら大丈夫だということを知るために、「安全」や「危険」をどう教えるかっていうのが人によって違う。
例えばいまの福島では「内部被ばく」はもうほとんどないし、外部被ばくもむちゃくちゃ下がっているわけだけど、「下がっている」ということを全面に出して教えるべきだ」という先生もいたり、「ここまでやれば危険ということをしっかり伝えることで、安全のラインがわかるようになる」と考える方もいる。物理を専門とする先生からしたら、物理としての放射線の面白さを伝えるということになる。僕ら医者が教えるとなると「健康」というものを教えることになって、本当に三者三様。それなので、教育の先になにを目指すか、放射線について伝えたときに、最終的になにを目指すかということをみんなで共有できないといけないな、と思っています。


一方、高校生に向けた放射線教育の現場では、新たな課題も生まれています。

◆高校生の間で放射線がもう話題にならない
僕自身は放射線教育が目指すところは、子どもたちが将来県外や他の場所で生活する上で、可能性をけずられたり、いじめや差別の可能性がゼロではない中で、ちゃんと言い返したり、説明したり、自分を守るための知識をしっかり持ってほしいと思っている。そういうために放射線教育をしっかりするべきだと考えています。一方で、高校の授業などをずっとやっていると、興味関心が薄れていることも事実。ナンセンスというか、もう話題にならないというのが正直な感覚。子どもたちが放射線について不安だという顔をしていることは、もうほとんどない。でも、例えば、「子どもを産んでも大丈夫か」ということなどを直に迫ったりすると、「うーん」というようなことはある。そこは、彼らにちゃんとした知識があるという自信がない部分があるのかもなと思う。だから結婚や出産などのライフイベントが起こったときに、「どうなんだろうか」と思うような場面がないわけではないと思う。それが差別やいじめにつながる可能性もあるので、そういうものに対してちゃんと言い返したり、違うと考えを持てることが重要だと思います。


就職、結婚、そして出産・・。そういった、人生の節目に、差別を受けても言い返すことができるには「正しい知識」が重要。それを見に付けてほしいというのが坪倉先生の願いです。

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今週は坪倉先生のお話について、あなたからの感想もお待ちしています。
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明日も、坪倉先生のインタビューをお届けします。

パーソナリティ 鈴村健一

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