2018年1月15日

1月15日 やさしい日本語(1)

今週は、コミュニケーションによる、「防災・減災」に関する情報です。

例えば、地震や大規模な火災など、大きな災害が発生したとします。あなたは避難所へ行こうと考えました。すると、最近、ご近所でよく見かける外国人の方が、路上でどうしていいかわからず困っていました。国籍は分かりません。さて、あなたは何語で語り掛けますか?

いかがでしょう。
「とにかく手を引っ張って避難所へ連れていく」などの方法もありますが、答えの一つとしていま注目されているのが実は日本語なんです。正しくは「やさしい日本語」と呼ばれているもの。これ、すでに全国的に普及活動が進んでいます。どういうものなのか。「やさしい日本語」の普及に取り組むNPO「多文化共生リソースセンター東海」の土井佳彦(よしひこ)さんに伺いました。



◆阪神淡路大震災を教訓に生まれた「やさしい日本語」
(※聞き手:高橋万里恵)
ーーーやさしい日本語は、災害がきっかけで開発されたものと聞きましたが。

今から22年半前になりますが、阪神淡路大震災が起きたのを覚えていらっしゃると思うんですね。この当時、兵庫県内には10万人ぐらいの外国人の方が住んでらっしゃったんです。100カ国くらいのたくさんの方が住んでいたんですが、この時日本社会には災害が起きたときに外国人の人にいろんな国の言葉で情報提供するというのが考えとしてなかったんです。それで、ボランティアの人たちが中心となって、英語ができる人や中国語ができる人がサポートをしていたんですけど、どうやったって追いつかない。その中で、当時アメリカではプレーンイングリッシュ(平易な英語)を使って、アメリカ国内に大勢いる移民の方や中学生でもわかる簡単な英語でコミュニケーションをとろうという動きが既にあったんです。それを日本の研究者が見つけて、プレーンイングリッシュがあるのならプレーンジャパニーズ、つまりやさしい日本語というもの考えてみようという動きが始まりました。普段もそうなんですが、災害の時は特殊な言葉をよく使ったりしますよね。外国人だけじゃなくて子どもやや高齢者、いろんな人にわかりやすい日本語を使っていこうというのが、阪神淡路大震災をきっかけに生まれたと聞いています。

ーーー実際、阪神淡路大震災や東日本大震災などで外国の方がうまく情報を得ることができなかったケースが多かったんですか。

災害の時に初めて聞く言葉があります。例えば「避難」、「炊き出しをする」。外国人の方は、なんだろう?と思うわけですよね。私が実際に被災した外国人の方から聞いたのは、自分の町が被災してできるだけ遠くに行こうと思って駅に行ったら、ラジオで「電車は“ふつう”です」と言っていた。普通だったら大丈夫だと思って駅に行ったら、電車が動いていない。普通じゃなかったの? と思ったと。彼らにとって「ふつう」というのはノーマル、普通という意味で理解していますが、ここで言う”ふつう“は「不通」、つまり動いていないという意味ですよね。同じ言い方なんだけれども意味が違うということで戸惑ったという話は阪神淡路大震災の時にもあったそうですし、熊本地震の時にも同じことが地元の新聞に掲載されていました。

ーーー例えば「逃げてください」などを伝えたい時に、やさしい日本語は有効?

やさしい日本語のコンセプトとして、やさしさと言うのは相手によって変わるというのがあります。例えば「避難してください」と言って分りましたと逃げる外国人もいます。でも、言ってもわからない場合は、「逃げてください」とか別の言い方をしてみる。そうするとわかるかもしれない、というふうにいろいろ言い方を変えていこうと言う事なんですね。言葉で行ってわからなかったら手を引っ張ってでも逃げるという気持ちを持ってもらったほうが良いかと思います。


例えば「避難」ではなく「あっちに逃げよう」、「炊き出し」ではなく「ごはんがあるよ」。
私たち日本人の多くは英語は「かたこと」しか話せませんが、「やさしい日本語」は上手に話せます。それなら無理に得意でない英語を使うより、やさしい日本語のほうが良い場合が多いということなんですね。ちなみに、日本在住の外国人はおよそ250万人いますが、英語がネイティブの人の割合はどのくらいかというとたった「1%」です。つまり日本在住外国人との共通言語は、英語ではなく「やさしい日本語」の場合が多いことになります。

あしたも「やさしい日本語」についてお伝えします。

★多文化共生リソースセンター東海のサイト

パーソナリティ 鈴村健一

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