2018年5月25日

5月25日 方言消滅の危機(7)

今週は、消滅の危機にあるという日本各地の『方言』 の問題、お伝えしています。

東日本大震災の影響で、岩手、三陸、福島の方言が消滅の危機にあるということをお伝えしてきていますが、こうした状況を受けて東北では、大学研究者による方言の調査研究、そして方言教育の支援が行われています。

お話伺ったのは、震災が方言におよぼした影響を調査している岩手大学の大野眞男教授。いま、東北・岩手県はじめ各地で方言の魅力を再確認する取り組みが盛んになっているといいます。

◆「やってやっぺし!」
地域の方言を自分の言葉としてしゃべってみる模擬体験も大事。一番良いのは演劇。従来演劇は観客誰でも分かるように共通語でするのが常識でしたが、地域では、地域で通じる言葉であれば別の効果がある。
田老第一中学校ではそういう試みをやっていて、田老地区の言葉で、昭和の津波のあとに、「こんなことではいけない、しっかりした防潮堤を作ることで悲劇がないようにしよう」という、昭和はじめの防潮堤作りに取り組んだ初代村長の「関口松太郎物語」という演劇をやっている。地域の素材なので共通語でなく田老の言葉でやろうと中学校の先生方がやっている。しかし先生はものすごく忙しいです。だいたいその土地の生まれでない方が担当するので、方言のシナリオ作りが難しい。そこに私ども研究者が入っていって、方言を翻訳する手伝いをしたり、地元の人に、方言訳の正しさのチェックをしてもらって、その結果出来上がった方言台本を子どもたちに演じてもらうということを2年続けてやってきました。今年も3年目で続きをやることになるわけです。

そんな地域の言葉で防潮堤を作る作らないの議論を方言でやるんですが、最後のシーンは共通語なら「やろうぜ」となりますが、地元の言葉で「やってやっぺし!」で決めるんです。そのセリフ「やってやっぺし」に、地元中学生も地元の人達も心が一つに向き合っていく。そういう地域の気持ちが同じ方向にピタッとまとまっていく瞬間が、去年も今年も劇の中でみることが出来ました。子どもたちが方言で演じるだけでなく、観ている聴衆も心がっぴったり寄り添う。これは共通語のシナリオでは考えられない。方言でやっていただいてよかった、私達も支援をして本当に良かったと思う瞬間です。


岩手県田老地区のほか、同じ岩手県釜石市は、いくつかの小学校で方言の授業、方言の昔話の語り聞かせも行われています。また、地方にはその土地の方言話者が、地元の民話を語るイベントがあり、その「語り部」が活動していることも少なくないということで、そうした活動と連携した取り組みも進んでいるということです。

パーソナリティ 鈴村健一

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