PV撮影レポート
「SCHOOL OF LOCK!」、21日 (火) 放送の『B.H.Y』スペシャル!! 皆さんお楽しみ頂けましたか!? こんな豪華な放送が実現したキッカケ、それはもう皆さんもご存知の通り、ロッテのチョコレート「エアーズ」のCMなのです。このCMは「ALWAYS 三丁目の夕日」の監督としてもお馴染みの山崎貴監督がCM初演出を手掛けたもの。出演者も「ALWAYS〜」同様の堀北真希さん。そして、このCMのタイアップ楽曲に、山崎監督のたっての要請があって『涙のふるさと』が大抜擢されたのです。既にプリプロ段階まで出来上がってはいたものの、まだデモ音源だった『涙のふるさと』を聴いて曲の本質を鋭く見抜いて頂いたうえでの、メンバーもとても納得のいくCMタイアップだったのです。

そして、『涙のふるさと』のプロモーション・ビデオの制作に話が及んだ際、我々スタッフからの提案もあって、是非山崎監督にPVを撮影して欲しい!ってことになったのです。『ALWAYS〜』の監督に『涙のふるさと』のPVを・・・。当初は半信半疑・駄目モトでのお願いでしたが、「あ、いいですよ」ってあっさり山崎監督は引き受けてくれたのでした。『涙のふるさと』のPVに関する話し合いの際、山崎監督はストーリーや絵コンテなどの事細かな資料を見せてくれながらいろいろと説明してくれました。その中でこのPVの根幹にかかわる提案が2つありました。

ロッテ「エアーズ」のCMがきっかけだっただけに、そのアフター・ストーリー的な物語り形式のPVにする。よって、主演はCM同様堀北真希さんになる。
BUMP OF CHICKENのメンバーが全員制服を着て演奏する。

これには、特に2番の提案にはさすがに面喰らっていたメンバーでしたが、「自分達が信じてお願いした監督が "制服着ろ" って言うならそれは着るべきでしょ。モジモジ君のレオタード着ろって言われても着ますよ・・・。」てな覚悟でこんなコスプレにもたじろがずに挑んだってわけです。

撮影は、"バンプ" の撮影に丸1日、堀北さんの撮影に丸一日、そして共演の森岡さん、子役やその他の風景撮影に丸一日と、計3日間かけて行われました。そして "バンプ" の撮影当日。天候は上々、バッチリの撮影日和です。つい数年前まで実際に使われていた廃校が今回のPVのロケーション。この撮影に際して、スタイリストさんやヘアメイクさんの多大なる尽力のおかげですっかり実際の高校生さながらに若返った!? 制服姿のメンバー。幼稚園からの幼馴染みではあれど、同じ制服を着て同じ教室で戯れたことはなかったらしく、NINTENDO DSでゲーム対戦したり、携帯の写メールで「高校生の男子仲間が撮りそうなショット」撮影大会を開催したり、「廃校なだけに水道が通っておらず、トイレは目の前の建物のトイレを利用しなくてはならない」っていう不便さを利用した懐かし恒例の "連れション" を決行したり・・・。端から見ていても「ああ、こういう男子高校生いた・・・」っていう、何の違和感もない高校生っぷりを見せてくれていました。
山崎監督曰く、「"バンプ" のメンバーが制服姿になる最大の狙いは、モテる軽音楽部の先輩っていう設定にしたい」って事だそうで、久しぶりの (しかもこんなオシャレなベストにネクタイなんて制服は4人とも着たこともないらしく・・・) 制服姿に当初は違和感をおぼえないでもなかった我々スタッフも、メンバーが楽器を持って演奏し始めると何故か不思議と、教室や廊下などの学校の風景にも溶込み、山崎監督の狙い通りの「モテる軽音楽部の先輩」になったなぁ〜と実感したのでした。

撮影中もその合間の休憩中も、メンバーと山崎監督との間には、"信頼" のコミュニケーションがありました。撮影中は、演奏の仕方、カメラアングルとの兼ね合いなどの演出がメンバーに指示されます。その適確な演出によって導かれるメンバー。山崎監督が求める演奏シーンのコツを徐々に掴んでいきます。休憩中は控え室での談笑です。ゲームや映画のこと、もちろん「ALWAYS〜」の話なんかも織り交ぜながら、でも、その中でも印象的だったのは "食" に関してホントに疎いメンバーへの、山崎監督からの駄目だしでした。「実際はファミレスが一番性に合っている。だって、色んな料理が何だって食える」っていうメンバーの考えに対し、「いやいや、もっと美味いモン食うべきだよ。食は文化だから。美味いモンは食うべきなんだよ!」っていう監督の願い。最終的には「だったらさ、俺が美味いモン食べに連れてくね。そう、美味い寿司食いに行こう。○○○にマジで美味い寿司屋を発見したから。多分雑誌とかにも載ってない超穴場の寿司屋にね」。こうして山崎監督に、絶品の穴場の寿司屋に連れて行ってもらう約束をとりつけたメンバー。完全なる仕事外役得です。

撮影は順調に進みました。廃校を使っての撮影だけに、当然、自然光を使っての撮影になります。夕方になっても天気は陰りを見せることもなく、それどころか美しい茜色に空を染めて撮影を彩ってくれています。撮影の最後のショットは校舎屋上での演奏シーンです。屋上に繋がる階段を上がり、屋上に通じた扉を開いた途端、驚嘆の歓声があがりました。街全体も空も茜色に染めあげる程の見事な夕日が、この日の撮影の最終シーンを演出するスポットライトの如く輝いていたのです。そしてその茜色のスポットライトを浴びながら、その日最後の演奏シーンが撮影されたのです。演奏するメンバーの輪郭からこぼれ落ちてくる光。こぼれ落ちた光ごしに輝きながら活き活きと演奏するメンバー。まさに、夕日とBUMP OF CHICKENとの見事なコラボレーションが実現した瞬間でした。モニターを見つめるスタッフからも「スゲ〜!最高だよこのシーン・・・」「さすが、"三丁目の夕日" の監督。夕日に関しちゃ妥協を知らない!!」なんて言葉が交わされていました。日没まで目いっぱいの時間を使っての屋上撮影も、夕日が沈むのと時を同じくして無事終了!! BUMP OF CHICKENの登場シーンの撮影はこうして無事に、最高のシチュエーションの中終了したのでした。

撮影終了後、1日の労をねぎらいながらまどろむ屋上に、どこからともなくほんのかすかに聴こえるくらいの寂しい音量で「Happy Birthday To You」のメロディーが流れてきます (用意されていたiPodのスピーカーの音量が小さすぎたのです・・・)。そう、今回のPV制作を仕切ってくれた "ビデオプロモーション" さんの粋な計らいで、10月9日にめでたく27歳の誕生日を迎えた "チャマ" へのBirthdayプレゼントが用意されていたのです。サプライズにわくメンバーの前に特大のBirthdayケーキが運び込まれます。「マジ〜!? こんな誕生日プレゼント初めてだよ!!」と大感激の "チャマ"。何も聞かされていなかった他のメンバーもこの粋過ぎる演出にがぜん盛り上がります。そして、"チャマ" と特大Birthdayケーキを囲んでの、この日の撮影に携わってくれたスタッフ全員での「Happy Birthday To You〜♪♪♪」の大合唱です。照れくさそうに微笑む "チャマ"。特大ケーキに立てられたロウソクの灯を一気に吹き消します。「"チャマ" 誕生日おめでとうー!!」「撮影お疲れ様でした!!」。

もう遠くの街に沈んで見えなくなった夕日の残光は、1日の撮影をやりきったメンバー、山崎監督、そしてスタッフの晴々とした笑顔を朧げに照らし出していました。
こんな「奇跡の夕日」にも恵まれながら撮影された今回のPVのメンバー演奏シーン。CMで出会ったクリエーター同士の尊いコラボレーションは、色んな奇跡と必然を孕みながら素晴らしい映像作品を完成させてくれたのです。このPVを見て、あなたなりの解釈で『涙のふるさと』に想いを馳せて頂ければと思います。

Report: 吹野史斉 (TOY'S FACTORY)
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