音で学ぶ、音を学ぶ、音に学ぶ
"音学"の授業、サカナLOCKS!

「皆さん本当に、11年半、ありがとうございました。」

(放送後記は、今後も見ることができます。)

『マイノリティ相談室』

SCHOOL OF LOCK!


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今回の講義は、『マイノリティ相談室』
マジョリティ(=多数派)の中で、何かしらの苦労をしているマイノリティ(=社会的少数者)な生徒からの相談に乗ります。周りにはなかなか話せないという声を聞いていきたいと思います。

この後記の放送を聴く

聴取期限 2019年12月6日(金)PM 11:00 まで



僕は今美術の専門学校に通っています。
授業で作品を制作し、みんなの前で発表していくんですが、周りの人は僕の描いた絵を全く理解してくれません。
先生にすら「難しい」と言われてしまう次第です。
今の所、僕の絵をいいと言ってくれる人はいません。
えがっくひらっくひろっく
東京都/20歳/男性


山口「ひろっくさん。これは作品を作る人には必ずぶつかる壁なんじゃないかと思いますけど。電話が繋がっているので、お話ししていきましょう。」

山口「もしもし。」

えがっくひらっくひろっく(以下、ひろっく)「もしもし。」

山口「メッセージありがとう、ひろっく。美術の専門学校に通っているということなんですけど、1年生?」

ひろっく「2年です。」

山口「専門学校って何年なの?」

ひろっく「うちの専門学校は3年制で。」

山口「美術の専門学校なんだ。絵画の他にも、彫刻とかもあって、その中の絵画をやっているってこと?」

ひろっく「そうです。」

山口「絵はいつ頃から書いているの?」

ひろっく「幼稚園のことから絵を描くことが好きでずっと描いているんですけど、中学の時は美術部に入って、高校は美術家のある高校に通って、今専門学校という形ですね。」

山口「今までの作品はなかなか他の人に評価されないんだ?」

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ひろっく「そうですね。あんまりよしとしてくれる人はいない……という感じですね。」

山口「周りに理解されないことでどんなことが不安になる?」

ひろっく「本当にこれをやっていていいのだろうかとか、このまま絵を描いていて大丈夫なのかなっていう孤独感というか、寂しいとか虚しい気持ちになりますね。」

山口「そっか。やっぱり周りに評価されたいんだ?」

ひろっく「そうですかね……そっか……評価されたいんでしょうね……。自分の絵には自信を持っていて、絶対にこれはかっこいい、これは僕の表現だって思って出すんですけど、講評会とかで出しても周りの反応はないし……っていう感じですね。」

山口「なるほどね。実はね、事前に作品が載っているひろっくのインスタアカウントを教えてもらって、見せてもらいましたよ。」





山口「抽象画だね。」

ひろっく「まあ……そうですね。」

山口「好きな画家は?」

ひろっく「好きな画家は、フランシス・ベーコンとか。」

山口「キュビズムな感じ?」

ひろっく「はい。シュールレアリスムも好きです。」

山口「あー。これは、学校の先生とか友達じゃなくて、一般の人だったり、もう少しテーブルを広げた人たちに見てもらう機会はあるの?」

ひろっく「今思うとあまりないですかね……親くらいです。」

山口「個展とかは?」

ひろっく「あ、個展は先日やりました。でも、来てくれるのは学校の人とか身内とかなので……一般の意見というほどのものはもらえませんでした。」

山口「そっか。僕はミュージシャンだから、音楽だったらコンテストに出るとか、CDを送るとか、コンピレーションを出すとか、フェスに出場するために応募するとか……デビューしたり、スターダムにのし上がっていくルートみたいなものは想像できるけど。絵画でのやり方っていうのはちょっとわからないんだけど、そこに行きたいのか、ゴッホのように自分が描きたいって思っているものを描き続けて、いつか誰かに評価してもらうのを待つか。それか、受け入れられるものを研究して描いていくか……。でも、絵画の世界って、人に受け入れられるものをひたすら描いていっても評価されない世界だと思うんだよね。本当に自分が描きたいと思うものを描き続けている人が最終的に評価される世界のような気がする。だから、ものすごく孤独でものすごく勇気がいるし、自信をつける技術も必要だと思うんだよね。」

ひろっく「そうですよね……」

山口「ただ、人に認められたい気持ちがあるのは健全だと思うんだけど、自分の作品を認めてくれない人を見下すのではなくて、迎合するのでもなくて、自分が好きなものを死ぬまで描き続けるのが一番僕はかっこいいと思うし、100人いて……いや、むしろ、10000人いて、9000人に評価されなくていいんですよ。10000人いて、1人に評価してもらえるものを作れればいいと思うよ。」

ひろっく「はい。」

山口「でも、今は多分、ひろっくの周りにいる人たちって多くて1000人とかでしょう?ひろっくの作品を見てくれる人って。でも、世界には何十億人っているわけじゃん。インターネットがあって、Instagramとかもあって。……あと、ギャラリーとかに持ち込むっていうのもありだけどね。見てもらうっていうのも。」

ひろっく「そうですね……。」
山口「絶対に自分の作品はかっこいい、見る人が見ればいいと思うはずって思うんだったら、勇気を出して持ち込むべきだと思うよ。」

ひろっく「はい。」

山口「ぶわーっと話したけど、何か聞きたいことはある?」

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ひろっく「一郎さんの話になっちゃうんですけど、一郎さんはどうやって今の表現というか、スタイルになったんですか?」

山口「僕は……最初は、本当に1人2人のために曲を作っていたのよ。例えばメンバーの1人だったり、好きな子だったり、父親だったり。身近な誰かに向けて。この人はこういう曲がいいって言うだろうなとか、この人のために作りたいとか。すごく少ない人数のために作っていたんだよね。もちろん、それが自分の中で作りたい表現の一部としてだけど。それを繰り返していくうちに、だんだんキャパシティが上がっていくじゃん。例えば、300人のライブハウスでパンパンの人たちにこの曲を聴いてもらったらどう思うかなっていうところから、5000人になったり、10000人になったり、50000人になったりしていったんだよね。そのキャパシティが上がっていくときに、自分が作っている曲がどう響くのかとか、どう届くのかとか……客観的に感じていって、自分が作りたいものと、キャパシティが大きくなっていった人の数に対してどういう風に作風を変化させていくといいのかとか。状況に合わせて作品を作るっていうのが自分の表現になっていったよね。人が求めるものと自分が作りたいものを掛け合わせていくっていうのが自分の表現になっていったのかな。そこに面白さを僕は感じたけどね。」

ひろっく「あー……」

山口「僕は、フォークソングがすごく好きだったのよ。小さい頃から。今もフォークギターしか弾かないし、そのフォークギターで曲を作っていたんだけど。そのうち、歌のない音楽も好きになっていったの。ダンスミュージック……テクノだったり、ハウスだったり、エレクトロニカ。そういうのが好きになって。……すごくざっくり話すとね。そういう、自分が元々好きだったフォークソングとはぜんぜん違うジャンルのものだったのよ。それを混ぜ合わせてみたいなって思ったのね。絶対に混ざらないと思ったけど。でも、どうしたら綺麗に混ざるかな、どうしたら良い違和感を残したまま混ざるのかな……って、どんどん分解して、バラしたりくっつけたりしていくと、自分のオリジナルな作品というか、サカナクションらしさみたいなものを、時間を経て形成できるようになったかな。そうすると、違和感があるものだから、嫌いっていう人もたくさんいるのよ。フォークはフォークで聴きたい、ダンスミュージックはダンスミュージックでいいっていう人もいるわけじゃん。でも、フォークも好きじゃないしダンスミュージックも好きじゃないけど、これなら好きっていう人が現れるわけよ。だから、自分が好きだっていうものを混ぜ合わせることでいい違和感として生み出すっていうことが自分の中のオリジナルになっていった。また、言葉っていうのは別なのよ。歌詞っていうのはね。そこはまた全然違った考え方なんだけどね。僕は、言葉が一番宇宙に近いと思っているから……自分の中では。一番心の中を綺麗に表現できるものは、文学だと思っているんだよね。ビジュアルじゃなく。それも、さらに掛け合わせる感じだね。技術と直感と……かな。」


山口「ひろっくは、画家で生きていきたいの?」

ひろっく「画家になりたいです。」

山口「おー、頑張ってほしいけどね。この間、絵を買ってもらえたの?」

ひろっく「はい。2作品。片方は身内なんですけど、片方は知らない人で。」

山口「どんな気持ちだった?」

ひろっく「新しい感情でしたね(笑)。買ってもらえるんだ……って。今までは自分のものでしかなかったものが、相手に届くってすごく嬉しいですね。」

山口「そうだよね。僕も初めて自分の曲がリリースされて、全然知らない土地にライブをしに行ったときに、自分の音楽を知っている人がいるっていうのを体験して、結構不思議な気持ちになったね。「あれ……ここ……大阪なのに自分の曲をみんなが知ってる……!」って。」

ひろっく「ふふふ(笑)」

山口「本当にそういう感動があったよ。それに近いと思う。」

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山口「諦めずに、自分が納得できるところまでやってみたらいいと思う。いろんな人に見てもらうことが大事かな。あと、孤独を恐れるようじゃクリエイティブの道、表現の道には向かえないんじゃないかなと思う。」

ひろっく「なるほど……」

山口「ゴッホなんて、弟に手紙を書くっていうことしかしていなかったらしいからね。『ゴッホの手紙』っていう本があるはずだから、読んでみるといいよ。結構リアルだよ。お金の工面を兄弟にしてもらったり、自分の状態を文章にして説明したりしてやり取りをしている手紙の本なんだけど。当時……当時だけどね。どんな人生を送っていたのかが見られて参考になるかもしれない。」

ひろっく「はい。」

山口「ちなみに、サカナLOCKS!のサイトにインスタをリンクしてもいいかな?」

ひろっく「大丈夫です。よろしくお願いします。」

山口「せっかくなら、生徒のみんなにも見てもらおうよ。」

ひろっく「はい。」

山口「じゃあ……負けずに頑張りましょう。」

ひろっく「はい、ありがとうございます。」

山口「ありがとね。」

えがっくひらっくひろっく Instagram アカウント → @2shaula

今回の講義も終了の時間になりました。

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山口「僕は絵の世界は分からないが、きっと今の時代、音楽よりも絵画で成功する方が非常に険しいと思う。もちろん、音楽が簡単だって言っているわけじゃなくて。本質的なものを求められるところだと思うからね。あと、いろんなジャンルもあるし。それに、良いものが正当に評価されるか……まあ、どんなものもそうだけど。それがわからない世界でもあるよね。だって、ゴッホだって死んでから受け入れられたりするわけじゃないですか。だからすごく厳しい世界だと思うんですけど、是非ひろっくには頑張ってほしいと思うし、僕もひろっくと話して自分の作る音楽を見つめ直す機会になったと思います。負けたくないしね……自分に負けたくないよね、一番。……孤独を愛せよ!(笑) 孤独を愛するべきだと思うね、表現家は。」

山口「そして、サカナクションからお知らせです。SAKANAQUARIUM 2019 "834.194"のファイナル公演の模様を収録したBlu-ray & DVDが2020年1月15日にリリースされることになりました!こちらは、サカナクションのMVを数多く手がける、おなじみの田中裕介監督が映像監督とアートパッケージを担当しています。サカナLOCKS!に、田中監督にゲストに来てもらうのもありですよね。どういう風に作ってくれたかとか、パッケージの話とかもいろいろ聞きたいと思います。田中監督は映像だけじゃなくて、こういうアートパッケージだったり、今度ライブの演出にも入ってもらうんですよ。映像を使わないのに。すごく多彩な田中監督、今度ゲストに来ていただけたらいいなと思います。そして、LIVE Blu-ray & DVDのリリース直後、1月18日より、全国ツアー SAKANAQUARIUM 2020 がスタートします!アルバム『834.194』リリース後のツアーになるので、アルバムを再解釈したライブになるんじゃないかと。なので、前回アリーナツアーに来てくれた人も、今回はサラウンドではないんですけど、違った形での『834.194』を楽しんでもらえたらいいなと思います。前回暗闇ライブをやった、あの感じを……そこで得たヒントを今回のツアーに持ち込もうと思っているので、是非新感覚のライブを楽しみにしていてください。」

詳しい情報は、サカナクションのオフィシャルサイトをチェックしてください。
サカナクション オフィシャルサイト [→コチラ]


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